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六大学野球、学生がPR
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六大学野球、学生がPRスポーツビジネス学ぶ

 1925年から日本の野球界をけん引してきた東京六大学野球。立大の長嶋茂雄選手や法大の江川卓選手など明治神宮野球場を舞台にスター選手を輩出してきた。しかし、近年は学生の大学野球への関心が下がっている。危機感を持つ一般財団法人東京六大学野球連盟は、学生が主体となって六大学野球の活性化策を企画・実践する試みに乗り出した。

 「ぜひ、これを着て応援してくださーい!」。5月14日に行われた六大学野球春季リーグ戦。「早大×立大」と「慶大×明大」の2試合が行われた神宮球場で「TOKYO BIG6 1925」とプリントされたTシャツを片手に、学生を呼び込む一団があった。

オリジナルTシャツを無料配布した

 彼らは「東京六大学野球ゼミナール」に所属する学生たちだ。このゼミは六大学野球の活性化策の企画・実践を主な目的に2016年春に1期生12人で結成された。今春には聴講生を含む9人が2期生として加わった。全員が六大学の学生だ。

 配っていたのはミズノの協力を得て、ゼミ生がデザインしたオリジナルのTシャツ。早大・立大・明大のチームカラーのTシャツをそれぞれ100枚限定で学生に無料配布した。

「お楽しみ」も用意

 このTシャツを着た人には「お楽しみ」も用意した。普段は入ることのできない試合後の神宮球場のグラウンドに寝そべったり、ベンチに座ったりできるようにした。その様子をツイッターなどの交流サイト(SNS)で拡散してもらい、ほかの学生も球場に呼び込もうという作戦だ。

 この日の試合後には45人がグラウンドに降り立ち、ポーズを取りながらスマートフォン(スマホ)で友人らと思い思いに記念写真を撮っていた。早大1年の男子学生は「この企画の存在は球場に来て初めて知った。次の早慶戦も見に来る」と満足げだ。

試合後に球場のグラウンドで記念撮影した

 企画を提案したのが法大4年の妻木彩奈さん。「大学生といえばおそろいの服を着てイベントやフェスなどに行く特徴があるので、それを参考にした」と話す。妻木さんはゼミの1期生だ。もともと野球に関心があり、ゼミの募集をみてすぐに参加を決めたという。

 16年春からゼミに参加している1期生は、六大学野球のリーグ戦の運営を体験しながら、スポーツビジネスの専門家のOBから、試合の放映権やプロ野球選手のセカンドキャリアといった幅広いテーマの講義を受けてきた。そのうえで六大学野球を活性化するための施策をゼミ生が調査・検討し、連盟の許可を得た企画がこの春季リーグから始まった。

 このTシャツ配布とグラウンド開放は春季リーグで2回実施した。さらに現役の選手の等身大パネルと一緒に、貸し出したユニホームを着て写真が撮れる「フォトブース」や、六大学の公式ツイッターで試合速報や選手の情報を配信する取り組みなどはシーズンを通して行っている。

選手の等身大パネルと写真が撮れるフォトブースを用意した

 「八回裏終了 早大ランナーを出すも無得点です 立大0―早大1」。14日に公式ツイッターでこんな配信をしていたのが1期生で慶大4年の松岡彰人さん。現在、就職活動中でスポーツ関連やマスコミなどに関心があるという。「まったく新しい活動を実践していけるのはすごくいい経験になっている」と話す。このゼミ活動が面接で自己PRする際の「ネタ」にもなっているそうだ。

フォロワー数は3500人突破

 六大学野球は大正時代から戦後にかけて学生スポーツの枠を超えて絶大な人気を博していた。元プロ野球選手(法大OB)の稲葉篤紀さんも「六大学のOBは多く、そのブランドはすごい」と話す。ただ、人気でみると昭和40年代以降は下落傾向にあり、新聞の運動面などでの扱いも小さくなっている。

 最近では甲子園球場を「ハンカチ王子」フィーバーで沸かせた斎藤佑樹選手(現北海道日本ハムファイターズ)が早大で活躍したときはぐっと観客数が伸びた。だが、斎藤選手が卒業した後は観客の足が再び遠のく。リーグ戦の1試合平均観客数は1万人を下回る。特に伝統の早慶戦以外の試合での観客数が少ない。

 連盟もてこ入れ策を実施してきているが、何より学生自身の六大学野球への関心が下がっているようだ。14日の試合でも学生応援席には学生風の若者が多かったが、それ以外の内野席や外野席はOBとおぼしき中高年の男性の姿が目立った。そこで現役学生の視点での活性化を目指すためゼミを立ち上げたのだ。

 企画はまだ始まったばかりで集客効果は未知数だが、公式ツイッターのフォロワー数は3500人を突破した。法大の妻木さんは「企画の認知度をどうやって上げていくかがこれからの課題」と気を引き締める。

 ゼミを担当する浅井玲子・法大兼任講師は「六大学野球が学生の学びの場として生かされることで学生野球のモデルにしたい」と期待する。大学野球を盛り上げつつ、将来の日本のスポーツビジネスを担うような人材を育てる――。一挙両得を狙うこのゼミの取り組みは六大学の新たな伝統となるかもしれない。
(井上孝之)[日経産業新聞2017年5月24日付、日経電子版から転載]

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