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「端末を強制終了」
残業防止システムで働き方改革特需

「端末を強制終了」残業防止システムで働き方改革特需

 長時間労働の防止やテレワークの導入といった働き方改革を支えるIT(情報技術)サービス・機器が相次いで登場している。富士通の子会社が開発したシステムは、残業申請をしていない社員のパソコンを強制終了させる。中小企業への販売を始め、富士通は4月から自社にも導入した。パソコンメーカーも持ち運びやすい端末の開発に注力している。

パソコン画面に警告を表示し退出促す

勤務予定時間を過ぎるとパソコン画面に警告文が出る(富士通エフサスのシステム)

 残業していると、パソコン画面いっぱいに警告文が出る。「勤務予定時間を過ぎていますので、すみやかに業務を終了し退出してください」。残業時間帯の利用を申請していない社員の端末にもれなく表示される。

 警告文を出したのは富士通エフサス(川崎市)が開発した「IDリンク・マネージャー」というシステム。残業申請システムと連携する。あらかじめ設定した勤務時間を過ぎると、上司に簡単な理由と残業時間を送信するよう促す。警告文を無視して仕事を続けている場合、端末を強制終了させる設定もできる。

 部下がなぜ残業しているかを把握できるほか、サービス残業の発生防止や残業手当の抑制などの効果が期待できる。富士通は4月から順次、自社の3万5000人を対象に導入している。富士通エフサスは建設・不動産業を中心とする大手企業のシステムを構築してきたが、5月からはクラウド版も提供する。

 クラウド版は導入にかかる時間を大幅に短縮できるうえ、1人あたり980円で利用できる。富士通エフサスの桶谷良介トータルソリューション企画部長は「長時間労働を是正するようにという労働基準監督署の行政指導に対し、素早い対策を取りたいと考える企業が多い」と明かす。働き方改革を推進しようとの機運は、勤怠管理システムなどを販売する企業の追い風となっている。

 パソコンメーカーも熱い視線を注ぐ。パソコンはスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)に代替されると見られていたが、薄型軽量のノートパソコンの需要が高まっている。通勤・移動時間の短縮などを目的にテレワークやサテライトオフィスを導入する企業が増えるにつれ、持ち出しやすい端末が求められるからだ。

日本HPのノートパソコンは外出先での盗み見を防ぐ

 2017年春商戦では富士通とレノボ傘下のNECパーソナルコンピュータが、13.3型のノートパソコンで数グラム差の世界最軽量を争った。日本マイクロソフトは通信会社を自由に選べる「SIMフリー」に対応した、キーボードから画面を外してタブレットとしても使える「2イン1」の新モデルを今秋にも発売する。移動の多いビジネスパーソンの要望に応え、無線LANにつながなくてもネットに接続できる。

 日本HPの法人向けノートパソコン「HP エリートブックx360」はのぞき見を防ぐ。「電車や喫茶店での盗み見の成功率は90%」(日本HPの九嶋俊一執行役員)といい、情報漏洩のリスクがある。x360は画面にあらかじめフィルターを組み込み、設定すれば斜めや横からは白濁して見えるようにした。正面から見た画面はのぞき見防止シートを貼ったときよりも明るく、操作しやすい。

 MM総研(東京・港)によると、日本の17年度のパソコン市場は1057万台と16年度比4.5%増える見込み。けん引役は法人需要で、働き方改革が本格的に進めば、市場を押し上げて予測値を上回る可能性もあると指摘している。長時間労働の防止や多様な働き方の導入は、多くの日本企業にとって最重要課題の1つ。ITサービス・機器の「働き方改革特需」はしばらく続きそうだ。
(企業報道部 薬文江)[日経産業新聞2017年6月8日付、日経電子版から転載]

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