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チェック! 今週の日経(20)地銀の統合になぜ「待った」?
生き残り策か、競争阻害か

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック! 今週の日経(20) 地銀の統合になぜ「待った」?生き残り策か、競争阻害か

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は地方にお住まいの方ならとても身近な「地銀」についてのニュースです。

宙に浮いたふくおかFGと十八銀行の"縁談"

 7月21日付の日経新聞の1面トップは、九州の大手地銀、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と、長崎県のトップ地銀の十八銀行の経営統合話が、「無期延期」になってしまった、という特ダネでした。

「地銀統合、無期延期に ふくおかFGと十八銀、公取委と溝」

 この両金融機関が経営統合で合意したのは昨年2月のこと。しかし、ふくおかFG傘下に長崎県の親和銀行があるため、統合されると同県内でのシェアが高くなり過ぎるとして、公正取引委員会が待ったをかけました。その後、統合時期を当初予定の今年4月から10月に延期するという発表がありましたが、今度は「無期延期」とは。なぜこの両社の縁談は宙に浮いてしまったのでしょうか。

 種明かしをする前に、いまの地銀業界の現状をみてみましょう。かつての都市銀行は2000年代初めの金融再編の嵐を経て、いまの3メガバンク体制に落ち着きましたが、地域経済に根付いた地方銀行(地銀)の再編は遅れました。再編が本格化したのは2014年。横浜銀行と東日本銀行(東京都)、肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行がそれぞれ経営統合に向けた交渉を開始し、16年にコンコルディアFG、15年に九州FGが誕生しました。

 それ以外でも図のように比較的隣接した地域での地銀の再編が相次いでいます。実はふくおかFGはこうした動きに先駆けて、07年に福岡銀行、熊本ファミリー銀行、親和銀行が経営統合して誕生した先輩格なのです。

銀行側と公取委との主張に大きな隔たり

 こうした地銀の再編が相次ぐ背景には、地方で加速する人口減少への懸念があります。預金が伸びず、融資先である企業も減ってしまえば地銀の経営は遠からず行き詰ってしまいます。そこで再編をテコに経営を効率化し、経営体質の強化に乗り出そうとしたのです。

 一方で、業界再編のお目付け役である公取委は、「経営統合で地域で圧倒的な力をもつ銀行ができれば、競争が阻害され、選択肢を失った利用者の負担が増すことになる」と警鐘を鳴らします。実際、長崎県首位の十八銀行と2位の親和銀行が合併すれば、県内の融資シェアが7割に上るとされています。

 利用者への配慮と言う点では、金融庁も今年3月に地銀の再編に関する指針を公表しました。

「地銀再編『顧客視点』を 金融庁が異例の指針」

十八銀行本店

親和銀行本店

 金融庁の指針は今回のふくおかFGと十八銀行の経営統合を念頭に置いたものといっていいでしょう。この中で、「地域の顧客の利便性」「課題を抱える中小企業への継続的な支援」などを再編を進める上でのポイントとしています。銀行の都合だけでなく、顧客のことも十分考えなさい、というわけですね。

 いずれにせよ、こうした監督官庁の動きによってふくおかFGと十八銀行の統合はなかなか進まず、結局今回の「無期延期」という事態を招いてしまいました。今後は、公取委が認めるような競争が阻害されない形の新しい案を出すか、統合を白紙撤回するか、公取委を敵に回してでも強行突破するか、判断を迫られることになります。こうした事態は、今後経営統合を検討する他の地銀にも起こりうることです。地銀を就職先に考えている方は、今後の推移に注目しましょう。
(研修・解説委員 若林宏)

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