日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

NECの小型ロボ、
「使い道は利用者任せ」で勝負

NECの小型ロボ、「使い道は利用者任せ」で勝負

 日常生活やビジネスでロボットに触れる機会が増えてきた。ソフトバンクロボティクスの「ペッパー」は語学堪能で多彩な能力を持つため、多くの企業が採用している。一方、NEC傘下のNECプラットフォームズはそんな人気者と一線を画し、あえて機能を絞ったロボットで勝負を挑む。利用企業が改良・改造できるようにして、幅広い場面での活躍を狙う。

レンタル料は月額1万円程度から

「パペロアイ」は卓上に置ける大きさで、座布団にルーターを内蔵している

 「きょうは元気そうですね」。座布団に座った高さ30センチメートル程度のロボットが話しかけてきた。丸い頭に丸い目を持つ愛嬌(あいきょう)のある表情でくるくると首をかしげる。NECプラットのコミュニケーションロボット「パペロアイ」だ。販売はしておらず、企業や教育機関などに貸し出している。

 パペロアイは座布団に座ったままで動かない。ペッパーのように身ぶり手ぶりもしないし、タッチパネルを持たずにアプリも搭載していない。あるのは通信用のルーターやマイク、スピーカー、温湿度計、加速度センサー、日英中3カ国語の読みあげ機能といったくらいだ。

 渡辺裕之執行役員常務は「機能を極力限定することで用途を増やせる」と狙いを説明する。タッチパネルがあれば人間とコミュニケーションをとりやすくなるが、すべての企業が求めているわけではない。必要なら外付けできる。レンタル料はソフトウエア料金を含めて「ペッパーの10分の1のイメージ」(同社)といい、月額1万円程度からとみられる。機能を絞り込んだからこそ実現した水準だ。

 パペロアイは親会社のNECが2001年に開発した「パペロ」の後継機。パペロはバッテリーを内蔵し、車輪で移動できた。人間の顔を認識すると話しかけ、600語以上を聞き分けて3000語を話す。NECは介護分野などでの利用を期待したが、苦戦して表舞台から姿を消した。

 パペロが活躍できなかった理由を、渡辺氏は「大企業のNECはメーカー視点でソフトウエアまでつくりこむ。利用する中堅中小企業がプログラムに手を加えにくかったのでは」と分析する。ロボット開発を引き継いだNECプラットは、再出発にあたって利用企業のアイデアを生かすことに腐心した。

NECが2001年当時に開発したパーソナルロボット「パペロ」

 例えば、ボディーに穴を開けたり、内部に機器を追加したり、色を塗ったりしても構わない。ロボットに限らずレンタル用品は、貸し出したときの状態で回収するのが一般的だろう。タブーともいえる行為を認めることが自由な発想を生み、目的に応じた使い方を可能にする。

 5月31日、東京都千代田区の本社ショールームにいくつものパペロアイが集まった。利用企業が活用方法やアイデアを披露する「パートナー交流会」だ。訪日外国人向けソリューション、画像分析を使った健康診断などのブースが並び、参加者が情報交換をしている。渡辺氏は「パートナー企業の『気づき』を生む場になっている」と語る。

 使い道は多様だ。スーパーの総菜売り場で揚げ物に使う油の説明やキャンプ場の受け付け、介護施設での高齢者の見守りなど。日本だけでなく、オーストラリアでは障害者教育に十数台が使われている。16年に貸し出しを始めてから契約は増え続けており、6月時点で中堅中小企業を中心とする136社で200台が働いている。

 ファンも育ってきた。「パペロアイ デベロッパー フォーラム」という非公式サイトも開設され、企業のエンジニアが交流する。ボディーの開け方や裏技を説明したり、プログラムが動くかどうかウェブ上で確かめられるシミュレーターを公開したりしている。

 調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)は20年度のコミュニケーションロボット市場が87億円と、15年度の3倍近く成長すると予測する。しかし、小型コミュニケーションロボットの競争環境は激しい。シャープの「ロボホン」のように小さくても賢く、動くロボットが続々と登場している。パペロアイがどこまで存在感を示せるか。NECプラット以上に利用企業のアイデアがカギを握っている。
(企業報道部 宮住達朗)[日経産業新聞2017年6月29日付、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>