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career-働き方

地方の豪族企業(8)レオン自動機(宇都宮市)
――顧客包め、うまい提案、
包あん機シェア9割

地方の豪族企業(8) レオン自動機(宇都宮市)――顧客包め、うまい提案、包あん機シェア9割

650種がオーダーメード

 大福餅、中華まん、真ん中にチーズの入ったハンバーグ――。世の中には「包む」食品があまたある。そのための包あん機を生産しているのがレオン自動機だ。国内シェアは9割にのぼり、ピロシキなど海外の食品にも手を広げている。繊細な和菓子で鍛えた技術を武器に、食品メーカーに味や食感の提案もする。

 唯一の製造拠点・上河内工場(宇都宮市)には、組み立て中の機械がポツリ、ポツリと並ぶ。その付近では従業員が設計図を見ながら、部品を取り付けている。

月に1回提案会

 ベルトコンベヤーを流れる製品に従業員が部品を取り付けるような流れ作業とは、ずいぶん趣が異なる。生産を機械化できないのは、顧客の食品メーカーごとに仕様が異なるためだ。

 「なかのあんが透けて見えるくらい、饅頭(まんじゅう)の皮を薄くしてほしい」

 「あんの量を1グラムだけ減らしてほしい」

 「あんの中に液体を包めないか」

 食品メーカーの要求は多岐にわたる。注文を受けてから納品するまで1~2カ月ほど。設計図を作るだけで2カ月かかる場合もある。5年に1回しか注文がない製品も含めて、現在手掛けている約900種類のうち約650種類が、顧客の要望に合わせたオーダーメード品だ。

 創業は1963年。和菓子の職人だった名誉会長の林虎彦氏が、手間ひまのかかる仕事を機械化できないかと考えたのがきっかけだ。プラスチック、土壌など様々な物質の粘性や弾性を分析する「レオロジー(流動学)」を学んで、機械化に挑んだ。社名のレオンはここからきている。

 柔らかい具を粘り気のある生地で包み傷めずに成形するのは人の手でも難しい。レオンは円盤を使うことで難事業を成功させた。まんじゅうの場合、真ん中にあん、外周に円筒状の生地を作る。この円筒を高速回転する円盤の間に通すと、円盤が円筒を一個ずつ引きちぎりながら、丸めていく。生地に圧力を加えて押し出すのとは異なり、ふわりとした食感を実現できる。

 それから半世紀以上、食材に合わせた創意工夫を積み重ね、包むことにかけてはどこにも負けない技術を身につけた。もう1つの強みは、包む技術をもとに食品メーカーに提案する力だ。

 本社と国内の全7営業所では月に1回ほど、顧客向けにメニューの提案会を開く。和菓子、洋菓子、パン、調理など分野ごとに分かれており、多い時には1つの分野で70~80人が参加する。そこから多くのヒット商品が生まれてきた。

 たとえばファミリーレストランの人気料理、チーズ入りハンバーグ。ナイフを入れると、中からとろりとしたチーズがあふれ出す。ほかにも「口溶けのいいものが売れているので、饅頭にバターを使って洋風にしたらどうか」といった提案もする。

 新メニューの開発担当者は約50~60人。同社の全社員の1割弱を占めるほどの力の入れようだ。田代康憲社長は「技術とアイデアの組み合わせで、お客さんの支持を勝ち得てきた」と話す。こうした提案はすぐに注文に結びつくわけではないが、顧客企業の売り上げが伸びて機械の稼働率が上がれば、新たな設備投資につながるという。

パンで海外攻勢

 海外展開にも積極的だ。1963年の創立から5年後には早くも輸出に乗り出した。創業当初から、企業理念には「マーケットは全世界であること」と掲げている。

 背景には、戦後の食糧難を経験した創業者、林虎彦氏の思いがある。世界の食文化を向上させるには、作る作業をできるだけ機械化し、レシピなど創造的な仕事に時間を割けるようにすべきだと考えたという。

 現在は米国、ドイツ、台湾に販売会社を持ち、約120カ国に輸出の実績がある。2017年3月期の売上高は254億円の見通しで、海外の売上高は約6割を占める。

 海外展開のエンジンとなっているのがパンの製造機械だ。包あん機と同様にレオロジーを生かし、パン生地をかたまりからではなく、シートから開発することに成功した。1台の機械から、世界中のあらゆるパンを製造できるという。

 米国にはパンそのものを生産・販売する子会社「オレンジベーカリー」も持つ。もともと機械を顧客に見せるために始めた会社だが、好評で2年前からはパンを増産している。

 もちろん海外では国・地域によって嗜好がまったく異なる。例えば中東ではパサパサした食感のクッキーや甘いチョコレートの人気が高い。こうしたニーズを把握するため、レオン自動機はまず海外の展示会に出展する。そこで現地の食品メーカーと接点を持ち、どうすれば再現できるかの研究に共同で取り組む。

 海外の展示会に出展すると、競合の機械メーカーがレオンの製品を分解してまねることもある。だが田代社長は「レオンなら、アフターフォローとかソフトとかの面で、ずっと面倒をみてもらえる、ということで、商品を買ってもらえる」と自信を見せる。

 今後力を入れるのがアジアだ。食文化の成熟にともない、よりおいしいものに対するニーズが増えている。中華まんなど日本と共通するメニューも多く、これまで培ってきた技術を生かせるとみている。ただ今のところ、海外生産の考えはない。宇都宮市に生産拠点を集中させ、強みに磨きをかける。
(宇都宮支局 スタッブシンシア由美子)

饅頭・ハンバーグ1台で、レオン自動機「提案型で挑む」、社長に聞く

 レオン自動機は包あん機で、国内シェア9割を持つ。海外売上高も6割に達している。田代康憲社長に、今後の展望などを聞いた。

 ――包あん機・製パン機ともに、国内外で売り上げを伸ばしています。

田代康憲社長

 「機械を使って(新商品の)研究をしたり、いろんなところを歩いて流行を調べたりしている。もちもち感、ふわっと感など、いろんな材料を使ってどうなるかを紹介している。月に1回はお客さんを呼んでセミナーを開いて、新しい商品を紹介している」

 「お客さんの作りたいものを作るだけのご用聞きはご法度だ。創業者から提案型で挑む、ということでやってきている」

 ――特に海外で、安い商品と競合しませんか。

 「同じ機械で饅頭(まんじゅう)もハンバーグも作れるように汎用性を広げてきた。例えば(海外品は)月餅なら月餅の1品しかできない。食文化が発展すると、今まで月餅だけ作っていても、他のものも作りたいとニーズが生まれる」

 「レオンの機械を使えば、メンテナンス、アフターフォローや、(提案など)ソフト面も、面倒をみてもらえることが、受注につながっている」

 ――工場では全て手作業です。自動化や、海外での生産についてどうお考えですか。

 「(主力の)包あん機『火星人』でも組み立てるのは1日3台ほどで、車などのようにどんどん組むものではない。(顧客のところに)一回入ると十数年は使い、長いと20年使ってくれることも。そんなに壊れるものでもない。海外で生産するにはもう少し市場を固めなければならない。だから、いかに生産性を高めるかは重要なテーマだ」
(聞き手は宇都宮支局 スタッブシンシア由美子)[日経産業新聞2017年3月22日付]

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