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チェック!今週の日経(21)有機ELパネルで中韓勢が大型投資
日の丸ディスプレーの行方は?

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック!今週の日経(21) 有機ELパネルで中韓勢が大型投資日の丸ディスプレーの行方は?

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回はスマホやテレビなどの次世代ディスプレーの本命といわれる有機ELパネルの生産・開発をめぐるニュースを見てみましょう。

韓国LGが中国で大規模投資

紙面

 26日の朝刊1面トップに次のようなニュースが掲載されました。

LG、有機EL中国生産 中韓で1兆円投資 外資が先端拠点、相次ぐ(7月26日)

 韓国の大手電機メーカー、LGディスプレーが中国で1800億円を投資して、次世代ディスプレーの有機ELパネルの増産に乗り出すことを報じた記事です。記事は外資が最先端製品の工場を中国に建設する動きが広がっていることに着目しています。同じ韓国のサムスン電子によるフラッシュメモリー工場への投資やトヨタ自動車が検討を始めた電気自動車(EV)の中国生産の動きなどに触れながら、企業にとっての中国生産の意味が変わってきていることを指摘しています。賃金が上昇し、国内市場の購買力も上がってきた中国は、かつての日本のように先端製品の生産拠点として見直されてきているわけです。

 この記事でもうひとつ忘れてはならないのは、次世代ディスプレーという大きな需要が期待される先端部品で、どこが覇権を握るのかという視点です。この点については、13ページに掲載した次の関連記事で解説しています。

有機EL 今年6割拡大 LG巨額投資 日本勢、存在感薄く(7月26日)

ソニーはLGディスプレーからパネル供給を受けて有機ELテレビに再参入した

 今回LGが発表したのは中国での生産投資だけではありません。韓国でも大型の増産投資に踏み切り、中国の分と合わせて9600億円という超大型の投資になります。そのうちの約半分を投資するのが、スマートフォン向けの中小型パネルの生産棟なのです。テレビ向けなどの大型パネルはもともとLGが強く、ソニーなど日本のテレビメーカー向けにもパネルを供給しています。ですが、中小型パネルとなると、同じ韓国のサムスン電子が強い市場です。そこに大型投資で対抗していこうというのがLGの大きな狙いです。

 その背景には、スマホの巨人、アップルが次世代iPhoneのディスプレーに有機ELパネルを採用するという方針を打ち出したことがあります。今年中に発売される新モデルでは、米アップルがサムスンから供給を受ける形で一部モデルに有機ELを採用する見通しになっています。これまでの液晶パネルから有機ELパネルへ――そこに向けて有機ELパネルの生産競争が始まったわけです。

 一方、日本のディスプレーメーカーはどうでしょう。記事では「ジャパンディスプレイ(JDI)は数千億円規模の投資が必要な有機ELのパネル工場を自前で建設する資金力がない。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のシャープも技術の遅れを挽回するため研究開発を続けている」と指摘しています。韓国勢のみならず政府の資金援助を受ける京東方科技集団(BOE)など後発の中国勢も相次ぎ投資計画を表明することにも触れており、市場が大きく拡大するこの時期に、日本勢が後手に回っている状況を伝えています。

日の丸再編も機能せず

JDI
ジャパンディスプレイが試作した曲面パネル。同社は新規の大型投資に踏み切る余力がない

 日本の有力なディスプレーメーカーはJDIとシャープの2社です。JDIは日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶事業を統合して2012年4月に発足した会社です。政府系ファンドの産業革新機構が2000億円を投じ、韓国勢などに押され気味の電機市場で優位を取り戻す「日の丸再編」のモデルにしようと設立されました。スマホなど向けの中小型液晶パネルでは現在も世界シェアはトップです。しかし、3期連続で純損失を計上するなど、経営がうまくいっていません。そこに液晶から有機ELへの主役交代が重なってきます。

 LGディスプレーが大型投資が1面トップを飾った次の日の1面には、JDIのこんなニュースが掲載されました。

Jディスプレイ、銀行に1000億円支援要請(7月27日)

 石川県や中国の工場で実施する人員削減に伴う構造改革費用や運転資金を借り入れなければならないほど、業績が悪化しています。これに先立つ6月には、有機ELパネルの開発会社、JOLEDの子会社化を延期することも発表しました。足元の構造改革が急務で、次世代に向けた事業展開に手がつけられない状況にあるのです。

 日本の電機産業はテレビなどの最終製品の国際競争力が弱体化したあとも、部品や部材、素材の供給で強みを発揮していました。ディスプレーについても液晶の時代までは大きな世界シェアを持っていました。その液晶が汎用品化し、低価格化する中で、次に打って出ることができず、大型投資を大胆に進める韓国、中国勢に置いていかれるという事態が進行しています。反転攻勢の可能性はあるのでしょうか。日本の技術を守れといった内向きの対応だけでは、動きの早い技術マーケットで勝ち抜くのは難しくなっているのかもしれません。

(企画委員 水柿武志)

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