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なぜ増える?アルファベット社名

なぜ増える?アルファベット社名

 アルファベット社名の日本企業が増えている。老舗がM&A(合併・買収)後も英語で旧社名を残したり、海外展開をにらみローマ字表記にしてみたりと狙いは様々だ。6月30日に新規株式公開(IPO)の3社のうち2社はアルファベット社名で、今後も増加傾向は続きそうだ。一方、アルファベット社名が増え「パスワードみたいで難解だ」との戸惑いも漏れる。

「新規上場組+業界再編」が普及後押し

 2017年上半期(1~6月)のIPOは、30日のシステム開発のSYSホールディングス(HD)、ゲーム情報サイト運営のGameWithなどを含め39社。このうち漢字が含まれるのは旅工房やほぼ日など6社のみだ。スシローホールディングスなどカタカナ社名が大半を占め、ネット広告のFringe81、事務機器販売のNo.1などアルファベットや数字だけの企業もある。

JXTGホールディングスの中期経営計画を発表をする内田幸雄社長(5月、東京・千代田)

 7月以降のIPOでも佐川急便を傘下に収めるSGホールディングス(HD)などアルファベット社名が多くを占める。記事では「SGHD」といったアルファベット見出しが増えることになる。

 社名にアルファベットを使えるようになったのは02年。法務省が商業登記規則を改正したのがきっかけだ。目立つのが「アルファベット+ホールディングス」というパターンで、足元でこうした上場企業は40社を超える。

 このパターンは業界再編には便利だ。4月に誕生した石油元売りのJXTGホールディングスはJXHDと東燃ゼネラル石油が統合し、後者はTGという名前で残した。「社名は長くなったが、3カ月で定着してきた」とJXTGHDの男性社員は語る。

 旧JXは日本石油と日本鉱業という2つの名門が結びつき、互いの社名を消す決断をした。ちなみにもう一方の名門・東燃は東亜燃料の略称で「東芝」のように浸透した漢字略称の好例だ。だが、ここまで伝統的な企業が何社も統合すると、日本語だけで新社名を作るのは困難。アルファベット社名に行き着く背景にもなっているようだ。

海外展開に向けブランド認知度を向上

 同じく再編の波にもまれた金融では、「三井住友」「明治安田」など合併前の社名を残すことが多く、社名が長くなりがち。顔の立て合う業界の"慣例"と決別したのは損害保険のSOMPOホールディングスだ。海外でのブランド認知度を高めるため、16年10月に損保ジャパン日本興亜ホールディングスから社名を変えた。

 動機が似た例では、全日本空輸の略称を冠したANAホールディングス、同和鉱業が源流のDOWAホールディングスもある。

 富士重工業は今年4月、SUBARUに社名変更した。1917年に創設された飛行機研究所が源流で、今年は創業100年にあたる。自動運転など新技術の登場で競争環境が目まぐるしく変わるなか「さらにブランド力を高める」(吉永泰之社長)狙いだ。

 上場企業をみるとJXTG以外にもJBCC、ICDA、OSJBなどアルファベットが4文字並ぶ社名は意外と多い。社外からは「パスワードのようだ」という声もあがる。業種がわかりくいという指摘もある。

 だが、すでにアルファベットが定着した例もある。日本鋼管と川崎製鉄が経営統合して誕生したJFEホールディングスは日本と鉄の元素記号、エンジニアリングの頭文字が組み合わされた。KDDIは国際電信電話(KDD)と第二電電(DDI)、日本移動通信(IDO)の3社が00年10月に合併して発足した。合併当初はディーディーアイ(DDI)が正式社名でKDDIは通称だったが、後に社名もKDDIに変えた。

「漢字社名」より高い株価パフォーマンス

 「社名に漢字が入っていない企業に投資した方がパフォーマンスが良い」。こう指摘するのは運用会社のレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長だ。

 社名に漢字が使われている銘柄群とそうでない銘柄群(カナと英語での表記)を対象に、今年3月末までの過去3年間の株価パフォーマンスを調べたところ、漢字なしの銘柄群が1割強上回ったという。漢字が使われている企業は日本を代表する伝統的な企業が多く、カタカナなどの社名の企業に対して革新性や成長性で見劣りしていることが背景にあるとみられる。

 ちなみに30日に上場したSYSHDの初値は公開価格の2.2倍、GameWithは2.3倍だった。伝統企業の再編が続き、新興企業のIPOも勢いも衰えそうにない。アルファベット社名はさらに普及しそうだ。
(池田将、栗原健太、加藤貴行)[日経電子版2017年6月30日付]

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