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ドラッグ店 次の一手は?
接客に力、安売りから脱皮

ドラッグ店 次の一手は?接客に力、安売りから脱皮

 ドラッグストアの売上高が百貨店を追い抜いたというニュースが出ていたわ。中国人観光客の「爆買い」が理由の一つらしいけど、今後もこの勢いは続くのかな。

 ドラッグストアの動向について、石鍋仁美編集委員に話を聞いた。

――近所でドラッグストアが増えている気がします

 「業界団体の日本チェーンドラッグストア協会によると、2016年度の全国の店舗数は15年度に比べ、2%増の1万8874店と、調査を開始した00年度から一貫して増えています。日本にドラッグストアという業態が登場したのは1970年代ですが、バブル崩壊後の90年代、消費者の低価格志向の波にのり、一気に普及しました」

――医薬品以外の品ぞろえが多いのはなぜですか

 「食品や日用品などの安売りで、主に女性の来店を増やし、ついでに医薬品も買ってもらう狙いからです。医薬品の利益率は高いので、食品などを安売りしてもトータルとしては利益を確保できるというわけです」

 「総務省の日本標準産業分類にドラッグストアが初めて登場したのは07年です。それによると、薬や化粧品など健康と美容に関する商品を中心に、家庭用品や加工食品を主にセルフ形式で販売する店となっています。また、医薬品と化粧品が売上高の3割以上を占め、かつ扱っている分野が5つ以上にまたがっていることが必要となります。消費者のニーズに合わせて品ぞろえを拡大した現状を追認したような定義といえます」

――売り上げが好調と聞きました

 「日本チェーンドラッグストア協会の調べでは、16年度の売上高は15年度比5.9%増の6兆4000億円と00年度以降、16年連続で増加し、百貨店業界の売上高(5兆9000億円)を追い抜きました。近年は伸び率が鈍化していましたが、16年度は中国人観光客による化粧品などの『爆買い』のおかげで盛り返しました」

 「復活したもう一つの理由が調剤事業です。病院などが出す処方箋をもとに医療用の薬を処方する窓口を併設する店が増えています。マツモトキヨシホールディングス(HD)は昨年度、約20年続いた売上高首位の座をウエルシアHDに明け渡しました。けん引役となったのが調剤事業です。約1500店舗のうち1000店舗で処方箋窓口を併設し、調剤部門の売上高は970億円とマツモトキヨシHDの2倍超です」

――「爆買い」一服後も好調さは続きそうですか

 「17年度も爆買いの勢いが続くとは想像しにくいです。対策として大手チェーンはウエルシアのように調剤事業に力を入れています。政府が医療費抑制のため、顧客一人ひとりの薬の使用状況を管理・指導し、気軽に健康相談もできる『かかりつけ薬局・薬剤師』の普及を進めていることが背景にあります」

 「しかも調剤薬局は安売り合戦とは無縁の世界です。厚生労働省によれば処方箋1枚あたりの収入は15年度、平均9000円を突破しました。企業によっては粗利益率も3割を超え、処方箋の取り扱いが増えるほど利益も大きくなります。職場や自宅近くの店に処方箋を持ってきてもらうことで、薬を受け取るまでの待ち時間に食品や化粧品のついで買いも期待できます」

 「ある経営者は、今後のドラッグストアは大きく3つに分かれるとみています。第1は調剤事業を強化し、病院の一角のようなイメージを目指す医療型です。清潔感や安心感を打ち出し、訪問介護の業務なども取り入れていくことになるでしょう。第2は大衆薬や化粧品、美容雑貨を丁寧に説明しながら販売していくカウンセリング型。百貨店のようなおしゃれ感が漂う店づくりを狙います。第3は今までのように安売りを基本とするディスカウント型です」

 「業界の勢いが続くかどうかは医療型やカウンセリング型が伸びるかどうかにかかっているでしょう。そのためには、これまでの安売り店のイメージを払拭する店づくりやブランド戦略が不可欠です」

■ちょっとウンチク
規制緩和が追い風に
 現在、調剤薬局の市場規模は約7兆円台とされる。上位は専業チェーンが占め、大手ドラッグストアもこの分野だけを取り出して比べれば顔を見せていない。また、全国の薬局の数は5万軒を超えコンビニエンスストアに匹敵する。家族経営の店や病院近くの「門前薬局」など小規模な店が多かったが、合併や再編が進みつつある。
 高齢者の増加と在宅医療・介護の広がりで薬局への社会的な期待は高まる。ドラッグストア、街の薬局、コンビニエンスストアなどが入り乱れ、良いサービスの提供で支持を競いあう動きはますます活発になりそうだ。今は薬剤師の不足が壁だが、今後は各種規制の緩和が市場活性化の追い風になるのではないか。
(編集委員 石鍋仁美)

[日本経済新聞夕刊2017年6月19日付、日経電子版から転載]

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