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密室の恐怖が増幅
VRお化け屋敷を体験

密室の恐怖が増幅VRお化け屋敷を体験

 最高気温が30度以上の真夏日が多くなってきた。記者が夏バテ気味になっていると、「『VRお化け屋敷』の体験会がある」との情報を聞いた。ホラー映画は好きではないが、ちょっとでも涼しくなりたいと思い、怖い物見たさで体験してみた。

暗闇の山小屋「訪問」、飛び出る無数の手

呪いのVRではリアルの冷蔵庫やゴミ袋などを自分で開けられる

 7月上旬の午後、うだるような暑さのなか体験会の会場であるパソコン販売店「ドスパラ秋葉原本店」(東京・千代田)を訪ねた。パーテーションで区切られたVR(仮想現実)ゲームの体験スペースからは時折「うおーっ!」という男性の叫び声が聞こえる。そんなに怖いのだろうか。やっぱり引き返そうかとちょっと弱気になってきた。

 4平方メートルほどのスペースに案内されると、ゴーグル型のVR専用端末とコントローラーが用意されていた。約2キログラムのゴーグルを装着してみると、想像していたより重い。両手にそれぞれコントローラーを持ち、ボタンを押せばVR上で物をつかめる。

 実は記者はこの日がVR初体験。「ちゃんと操作できるか不安なんですけど......」と聞くと、ゲームを開発したASATEC(愛知県豊田市)代表の朝日恵太さんは「初心者向けに作っているのでそこまで怖くないし簡単ですよ」とにこやかに話す。その言葉を信じたい。

 今回体験するVRゲームはその名も「呪いのVR」。今から50年前の7月、8歳の娘の誕生日を祝うために、ある3人家族が山奥の別荘に出かけた。その夜、両親はプレゼントを車に取りに行った隙に娘は姿を消してしまう。少女が行方不明となった別荘にVR体験者が訪れるというストーリーだ。

 「それではVR体験をスタートします」と案内役の女性が話すと、ゴーグル内の画面に暗い山小屋の中の映像が現れた。人の姿は見当たらない。目線を下に動かすと、自分の足元付近にテーブルを発見。その上にビデオデッキを搭載した「テレビデオ」と1本のビデオテープが置いてある。

 「まずは物をつかむ練習です。ビデオテープをテレビに入れてみましょう」。VR上には手のイラストが表示され、コントローラーを動かすと自分の本物の手と同じように動く。ビデオテープの上にある矢印のマークをコントローラーでつかむと、テープを持つことができる仕組みだ。

 簡単そうでこれがなかなか難しい。記者が苦労していると「足元の物を実際に拾うように腰をかがめてつかむとうまくいきますよ」とのアドバイス。言われた通りにやってみると今度は成功した。目の前に広がるのは仮想空間だが、実際の動作がそのまま反映される不思議な感覚だ。

 ビデオテープを入れると、いよいよ本編のスタート。山小屋の中には古ぼけた冷蔵庫やゴミ袋の山などがある。冷蔵庫の扉をあけてみるとウジ虫がこびりついた食器が入っていた。「なんだ虫か」と安堵したのもつかの間、他の場所から肘から切り落とされた無数の手がゴロゴロと転がってきた。どこから何が出てくるかわからない恐怖でいっぱいだ。

前から後ろから迫り来る恐怖

VRお化け屋敷を歩き回る記者(7月9日、東京・秋葉原)

 VRの特徴の一つは自分の周囲の様子を360度見渡せること。これまで目の前ばかりを見ていたが、不意に自分の背後が気になった。振り返ってみると壁に1枚の絵が掛けてあったが、ここにも怖い仕掛けが隠されていた。種明かしになるので詳しくは言えないが、気付いた瞬間に思わず「ギャッ」と声が出てしまった。

 「もう怖いから色々開けたくないな」と思っていると、前方のドアから誰かが入ってくる。人の影をしているが暗いので顔が見えない。どんどん距離を縮めてくるので逃げようとすると、いきなり緑色の格子状の壁が出てきた。「それは本当の壁があるサインなので危ないですよ」と言われ、もはや逃げ場がない。もう現実の世界に戻りたい。

 謎の物体との距離が1メートルくらいに感じたところで、いきなりふっと消えた。と思ったら、自分の頭の上にいた!その距離感は数センチメートルほどで、あまりの怖さに「うわーっ」と叫び声を上げてしまった。するとここで「はい、お疲れさまでした」との声かけが。朝日さんに「4分間どうでしたか?」と聞かれて驚いた。私の中では10分くらいの感覚だった。暗闇から何が出てくるかわからない密室の恐怖を嫌というほど味わった4分間だった。

 これまでホラー体験を売り物にしたVRゲームはいくつか登場しているが、映像を見るだけのものがほとんどだった。呪いのVRは「仮想空間のなかで自由に歩き回り、物をつかむことができる点が特徴」(朝日さん)という。ASATECはこれまでハウステンボス(長崎県佐世保市)などのテーマパークにVRゲームを納入してきた。呪いのVRは7月15日からレジャー施設などへの導入を始めた。

 呪いのVRは風が吹いてきたり、振動を感じたりする仕掛けはない。それでも予想以上に怖かった。朝日さんは「今度はVRの中で体験者同士が手をつなげるようにして、複数で楽しめるゲームにしたい」と意気込む。VR上に仲間がいれば心強いかも。今年の夏はひと味違ったお化け屋敷で暑さを吹き飛ばしてみるのはどうだろうか。
(潟山美穂)[日経電子版2017年7月13日付]

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