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ジュリアード@NYからの手紙(8)お金さえあれば実現できるのに
~クラウドファンディングの使い方

廣津留すみれ authored by 廣津留すみれ米ジュリアード音楽院2年生
ジュリアード@NYからの手紙(8) お金さえあれば実現できるのに~クラウドファンディングの使い方

 「資金さえあればこんなに素晴らしい商品開発ができるのに......」と、困ったことはありませんか? 学生や新社会人の皆さんでも、1からプロジェクトを始めてどこまでできるか、自分の力を試してみたいと思う方は多いのではないでしょうか。

 あきらめるのは、まだ早い! 今回は、クラウドファンディングについてお話します。クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、簡単に言えばインターネット上で寄付を募ること。アメリカでIndiegogoやKickstarterなどを筆頭に、2012年頃から続々と新しいプラットフォームが作られ始めました。

 日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、昨年キングコングの西野さんがクラウドファンディングで調達した資金でオリジナル絵本「えんとつ島のプペル」を出版し、話題になりました。

ニューヨークでの演奏会後に

この夏に日本ツアーをやりたい!

 この記事でクラウドファンディングについて書こうと思ったのには理由があります。2016年9月、私はジュリアード音楽院の同級生と「アンソニア・カルテット」という弦楽四重奏団を結成しました。ドラマ「カルテット」で登場したような、4人のグループです。

 来年度の学校の選抜プログラム(Honors Chamber Music Program)に選ばれたので、この夏にキックオフとして日本ツアーをやりたい! と皆でプランを練り出したのが5月のこと。そこからツアー資金を集めるため奔走したのですが、学校や財団の奨学金に応募しても、夏直前だったこともありなかなかうまくいきませんでした。

 そこで私たちがトライしたのがクラウドファンディング。日本ツアーに必要な予算1万ドル(日本円で約90万円)を目標金額に設定し、gofundmeというサイトで寄付を募りました。すると、わずか9日間で目標金額を達成し、無事8月の日本ツアー開催に至りました。大分では8月7日、東京では8月11日にコンサートを開くことができました(ツアー詳細はこの記事の下部に記載しています)。

 さて、どうやって目標金額達成にこぎつけたのか? 私たちが実際に試した方法や、次回試したい、と私が思う方法を紹介します!

目標金額達成までのプロセス

1.まずプラットフォームを決める
第1のステップとして、どのプラットフォームを使ってクラウドファンディングを行うかが重要です。手数料の有無や、海外からの送金の可否、信憑性、評判、自分が集めたい分野の集めやすさなどをリサーチして、自分の目的に一番合ったプラットフォームを選びます。海外では、私たちが使ったGoFundMeを始め、Kickstarter、IndieGoGo、RocketHubなどが人気です。日本では、キャンプファイアーやReadyforをよく目にします。

実際のクラウドファンディングのページ

2.資金集めの目的とストーリーを書く
なぜお金を集めようとしているのか、そしてなぜそのプロジェクトをするに至ったのか、それを読者にわかりやすいように書きます。最初にそのアイデアを思いついたきっかけ、そのプロジェクトが社会的にどんな意味をもつのか、誰に直接インパクトを与えるのか、具体的に書きます。ここではあなたのことを全く知らない人に向けて、写真や映像を使いながら、何をしたいかはっきりと伝えることが大切です。

3.目標金額を設定する
自分が建てた予算表に従って、集めたい金額を決めます。ここでは予算表の立て方が大変重要ですが、通常は万一の臨時出費(天候によって交通費が変わる、旅先で病気になる、など)をトータルの10%追加します。通常のクラウドファンディングサイトでは、まず目標金額の設定をしますが、人気のプロジェクトの場合はその金額を超えてもまだ寄付が集まるケースも多いです。例えば、前述のキングコングの西野さんが個展を入場無料で開催するために始めたクラウドファンディングキャンペーンでは、180万円の目標金額に対して、その2576%である4600万円以上が集まりました。(引用:https://camp-fire.jp/projects/view/10837)

4.リターン(お礼)を決める
金額に応じて、寄付してくださった方々へのお礼を決めます。私のカルテットは、ツアー中の演奏プログラム上に名前の記載をさせていただきました。例えばソフトウエアを開発したい、という企画では、完成品を寄贈というものもありますし、大きいアーティストのプロジェクトの場合には、10人限定ディナーや舞台裏を見学、などのリターンがあったりもします。

5.シェアする
自分のプロジェクトページを広めます。友人にLINEする、ブログ記事を書く、FacebookやTwitterなどSNSでシェアする、は当然のステップです。さらに、家族・日頃お世話になっている方々・先生・メンターなどに、近況報告を兼ねて丁寧なメールを送ります。また、直接お願いに行くのもとても大切です。シェア、と聞くとオンラインだけで済ませがちですが、肉声で伝えるのと字面で伝えるのでは、本気度の伝わり方が違います。

6.近況を投稿する
プラットフォームによっては、近況を投稿できる場合があります。「50%集まりました、ありがとうございます!」と写真をつけて投稿したり、プロダクトの途中経過を投稿したりすると、寄付を検討している人との距離がさらに縮まるので、おすすめです。

ジュリアード音楽院同級生4人で結成したグループ、The Ansonia Quartet

大切なのは心からのお礼

 今回はクラウドファンディングについてお話しましたが、いかがだったでしょうか。「コンテンツと人材は揃っているけれども、資金が足りない!」「プロジェクトには120%自信があるのに、資金を調達するすべがない!」と思っている方は、ぜひトライして世の中に面白いプロジェクトをどんどん増やしていっていただきたいです。

 最後になりましたが、クラウドファンディングにおいて一番大切なのは、寄付をしてくださった方に心からのお礼をすることです。メンバーからのお礼状やお礼訪問など、お金がなくても感謝を伝えるためにできることはたくさんあります。目標金額達成後、プロジェクトの遂行に熱中するだけでなく、寄付者一人ひとりに丁寧に感謝の念を伝えるのが何よりも大事だということを覚えていただけたらと思います。

 この場を借りて、私たちアンソニア・カルテットの日本ツアーのクラウドファンディングをご支援してくださった世界中の皆様に心からの感謝を申し上げます。

東京でのアンソニア・カルテット・コンサート