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地方の豪族企業(9)岩塚製菓(新潟県長岡市)
――おかき、価格より価値、
国産米100%にこだわり

地方の豪族企業(9) 岩塚製菓(新潟県長岡市)――おかき、価格より価値、国産米100%にこだわり

 ジャスダック上場企業で新潟県長岡市に本社を置く岩塚製菓は、品質に強いこだわりをもった経営をしている。他の米菓メーカーが割安なミニマムアクセス(MA)米などを採用するなか、米菓に適した国産米を使い続けている。中国で米菓事業を展開する台湾企業と提携するなど、海外にも視野を広げている。

 長岡市にある岩塚製菓の主力工場、沢下条工場では、香ばしいにおいが広がる。生産ラインの上を流れているのは、岩塚製菓の主力製品「田舎のおかき」だ。2009年の発売で、原材料のもち米を国産100%にしているほか、単身世帯の増加などに対応して少量パックにしている。

伝統米菓深掘り

 「消費者は伝統的なおいしいおかきを食べたいと思っているはずだ」。槙春夫社長の読みがあたり、国産米を使った味わいの良さが市場に受け入れられた。調査会社、インテージによると、おかき部門の売上高ランキングで「田舎のおかき」は12年から5年連続で首位の座を守っている。

 米菓メーカーの経営環境は厳しい。洋菓子との競争や人口減少で市場規模が縮小している。しかも、ディスカウントスーパーが台頭し、価格訴求力のある商品が求められるようになった。

 多くの米菓メーカーは生産コストを引き下げるため、工場の自動化を進めた。それに伴い、各社の商品構成も変わっていった。以前は、おかきと煎餅の比率は半々だったのだが、おかきが低下、煎餅が高まったのだ。

 おかきの原料となるもち米は、熱で膨らませるといびつな形になりやすい。うるち米に比べて機械による製造が難しい。製造期間も煎餅なら3日程度ですむところを、おかきは7~10日かかる。

 安く手早く製造できる煎餅に各社が軸足を移すなか、岩塚製菓は「伝統米菓の深掘り」(槙社長)という姿勢を保ち、おかきにこだわった。

 他の大手米菓メーカーは生産コストを抑えるため、国産米だけでなく、MA米など外国産米を使用している。岩塚製菓はすべての製品で国産米100%の方針を保っている。

 輸入米の場合、粉末状に加工された状態で納められるため、米の風味が損なわれやすい。国産米では加工前の米が産地から直送される。新鮮な風味を残したまま米菓をつくれる。「価値訴求で考えた場合に国産米の方がふさわしい」(槙社長)

 11年には米を原材料にした製品に原産国を表示するように法律で義務付けられた。これが追い風になり、消費者の支持を集めている。

おいしさで買収

 15年には、かりんとうを製造する田辺菓子舗(新潟県加茂市)を買収した。同社の主力ブランド「手づくりたなべのかりん糖」は、長さ10~12センチほどと、通常より倍以上大きい。さっくりとした食感や合成保存料や着色料を一切使わない点が特徴だ。土産や贈答品として販売が伸びている。

かりんとうを増産して土産物や贈答品需要を取り込む(新潟市内の土産物店)

 長岡市にある岩塚製菓の工場に生産ラインを新設、かりんとうの年間生産能力(販売金額ベース)を約1億2000万円と従来の約2倍にした。

 田辺菓子舗の買収は、岩塚製菓が商品開発の考え方として掲げる「おいしいものづくりネットワーク」の一環だ。槙社長は「もうかるから買収するのではなくて、おいしいかどうか、食文化として価値があるかどうかが重要」と説く。事業買収などを通じた品ぞろえの拡充に意欲をみせる。

 海外事業では、台湾の製菓大手、中国旺旺とタッグを組んでいる。岩塚製菓と旺旺との付き合いは1980年代までさかのぼる。岩塚製菓が旺旺の前身の会社に米菓の製造技術を供与したのが始まりだ。日本独自の煎餅が中国でヒットし、旺旺は急成長した。「岩塚がなければ今の旺旺はない」というのがトップの蔡衍明氏の口癖とされる。

 現在でも岩塚製菓が技術指導員を派遣し、原材料の選定から設備管理まで指導する。岩塚製菓は旺旺に約5%出資しており、旺旺の業績が高まれば、配当金が増える可能性も高くなる。

 岩塚製菓は年内にも自社ブランド製品「ライススタイル」で米国市場を本格的に開拓する。ライススタイルには、タンパク質の一種で血糖値を上げるとされるグルテンを含んでいない。豆腐や玄米など健康的な食材を原料に採用した。健康志向の高まりを商機にする。

 岩塚製菓の17年3月期の連結営業利益は前の期比約3割増の5億円に達したとみられる。19年3月期を最終年度とする中期経営計画では、連結営業利益の目標値を10億円にしている。国産米を使った米菓による国内市場深耕と、中国旺旺との連携拡大による海外市場の開拓が課題となる。
(新潟支局 篠原英樹)[日経産業新聞2017年4月14日付]

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