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[ career-働き方 ]

MBA取得は起業のためではない(上)スタートアップでCFOの必要性感じる

authored by 金子匡俊株式会社金匡代表取締役
MBA取得は起業のためではない(上) スタートアップでCFOの必要性感じる

 こんにちは。2016年に早稲田大学大学院でMBAを取得し、現在は企業の財務・会計面を支援する「CFOサービス」を展開している金子匡俊と申します。なぜ、わたしがこのサービスを提供しているのか、その理念はどこにあるのか。スタートアップ企業での経営経験、MBAのこと、周りの起業家の話などを書いて行こうと思います。これから仕事をして行く中で、やり甲斐を持って価値ある時間を過ごしたいと思っている方に、こんな道があるのだと知っていただければと思います。

CFOサービスとはどんなことか?

 企業財務のあり方が変わる必要があるといわれる日本で、欧州の先進的な企業財務の研究を大学と共同研究しながら、CFO(Chief Financial Officerの略)の役割を会社の外から支援しております。CFOは、日本では経理部長といったように「会社にあるお金を管理する人」という役割になることが多いのですが、海外では「財務・会計面から企業価値を向上させるスペシャリスト型の経営者」の役割を担います。日本の企業は長らく銀行借り入れに依存してきたといわれています。資金を銀行に頼り、それによって運営している企業がほとんどです。企業が銀行に依存することで、銀行はリスクを抱えることになります。依存せず資金調達の方法などを選択して行く必要があります。また、リーマン・ショックのような金融危機が起きると銀行は抱えるリスクが高まり一時的に資金を貸せなくなり、企業はすぐさま資金難に陥ります。バブル崩壊後の日本では各地でこのようなことが起こりました。

 一方、海外では、ネットを通じて小口の資金を募るクラウドファンディングなど新しい仕組みも増え、金融機関を巻き込んだ代替手段が確立されつつあります。私が現在代表を務める株式会社金匡では、日本で金融機関を巻き込んだ代替えの金融の仕組みを研究から導入に向けて働きかけを行うとともに、このような資金の受け手となる企業側の財務のあり方も多様化する中で、しっかりとした体制と知識を普及させることをCFOサービスで行なっております。

仕事の原点になった学生時代

 私がいまの仕事に就くようになった原点は学生時代にあります。学生時代はアルバイトで塾の講師をしていました。生徒は私が課題を出すたびに「みんなこんなに多くは勉強していない」といいました。しかし、生徒たちが言う「みんな」とは周りの友人2~3人に過ぎないのです。受験のライバルは全国にいるのに、生徒はそのことを実感できないようでした。私はこのギャップに違和感がありました。そして、生徒たちの「みんな」の幅がもっと広がってほしいと考えるようになり、高校生のための進学雑誌を創刊しました。次第に読者が増え、進路を変えるきっかけになったなどの声を聞き、高校生の行動が変わっていったことを実感しました。問題意識から行動することで人の行動を変え、それが生活、文化を創り出すことに繋がると感じられ、今の私の仕事の原点になっています。

CFOの価値を知る

企業の財務・会計面への支援で企業価値向上につなげる

 大学卒業と同時に就職し、その後スタートアップ企業に転職しました。その時のことです。会社が安定していなかったため、度々資金難になることがありました。理由は様々で、クライアントに納品ができず費用を回収できる見込みがない、新規事業に力を入れ過ぎて投資分が返ってこないなどです。ただ、共通して言えることは、先を見越して対処ができるかどうかで状況が大きく違ったということでした。

 ある資金難をなんとか乗り越えた後、会社として管理体制を強化し未然に防げるようにしようということなりました。「上場基準に匹敵するぐらいの体制を整える」と当時の経営ボードで明確にコミットをして、その体制作りに取り掛かりました。それまでは、数カ月後の売上高の見込みすら把握できず、かかった経費も数カ月後に把握をするという状況でした。要するに事業の第一線で日々活動をする動きが会計、財務部門に伝わっていませんでした。そのような状況を改善するために、会社全体を巻き込んで、会社の現状を正確かつ迅速に把握し、先を予測する仕組みを整えていきました。試行錯誤を繰り返し会社にあった仕組みを作りあげました。

 その結果、当初の上場企業に匹敵するぐらいという目標は外部の会計監査などでも一定の評価を得ることができました。先の財務状況を予測することで、未然に問題を解決し、先手を打つことができるようになったのは会社を経営するにあたり大きな変化でした。わかりやすくいうと、雨が降れば傘を買いに走っていたのが、朝に天気予報を見て傘を持って出かけるかを決められるようになったということです。

 焦って資金集めをすることはなくなりましたが、それでも成長のための資金が必要になることが度々ありました。

 その都度、金融関係者と面談をして、資金使徒などを説明し資金調達を行いました。ある時の面談で「財務諸表だけを見ればそんなに資金が必要とは思わないが、どうしてそんなに必要なのか?」という質問を受けたことがありました。会社の財務状況は一時的に良くなったものの、さらに会社を成長させるために必要な資金でした。私は2つのことを答えました。まず、世の中の景気の変化でこの会社がどういう状況にさらされるリスクがあるか、またチャンスがあるかということ。そして、今社内でどんな技術研究や新規事業の企画があるのかということです。どちらも、会社のことをわかっていないと話せないことです。そういった話をしていくことで金融機関と信頼関係を築くことができ、資金調達もでき会社を前進させることができました。

 このような経験からCFOが企業価値向上に寄与することを実感しました。

MBAで学ぶことが必要だった

 その後、CFOという役割になると、仕事で接する方も今までとは変わりました。弁護士、銀行担当者、税理士、会計士など、皆その道のスペシャリストばかりです。そうした環境になってからも、ただ言われるがままに決めていくのではなく、しっかりと相手のいうことを理解しながら、決定をしていくことが自分の仕事に責任を持つことになると感じました。そんな思いから知識を得るために勧められる書籍は読み、勉強会などには積極的に参加をしました。

 そうして社外に目を向けて行動する中で出会った会計士の鴇田英之さんからは「しっかりと経営を学んだほうが今後の仕事がよりやりやすくなるよ」とキャリアのヒントをもらいMBAを意識し始めました。改めて自分は将来どんな仕事を任される人材になっていたいのか、そこには何が必要なのかを考えると、やはり、経営、財務に関する実践的な専門知識と倫理観、判断力を身につけることが必要と思いました。

 日本でMBAとは、専門職修士の学位にあたり、社会に主体的に貢献できる人材を育成する大学院の修士課程のことだと理解しています。人事やマーケティング、戦略などは実際に経営の現場で働く中で触れることが多く、自分の担当するファイナンスについてより深く専門的な知識を習得したいと考えました。そこで私が選んだのは、ファイナンスに特化した早稲田大学大学院ファイナンス研究科(現経営管理研究科夜間主プロフェッショナル・ファイナンス専修)のMBAでした。

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