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[ liberal arts-大学生の常識 ]

資格で考えるキャリアプラン(5)話題の獣医師、将来性は医師より有望!?

戸崎肇 authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者
資格で考えるキャリアプラン(5) 話題の獣医師、将来性は医師より有望!?

 加計学園の獣医学部新設計画をめぐる一連の問題を通じ、獣医師が実は地方を中心に不足しているという現状を知った人も少なくないでしょう。日本の社会の今後の変化などを考えれば、医者になるよりも獣医を目指す方が、成功する可能性が高いのではないかと思われるほどです。

 まず獣医になるには、医者になるのと同様、獣医学部、獣医学科のある大学で6年間学び、かつ国家試験に合格しなければなりません。その大学入試のレベルも、大学によっては医学部に入るよりも難しいところもあります。全般的に難易度は高いのです。

地方で不足顕在化

動物病院の利用者は今後も増えそうだ

 しかも、医学部に比べて獣医学部の数は少ないのです。国公立大学と私立大学を合わせても16しかありません。医学部が82もあるのとは比べものにならないほどです。1学年の定員は全体で1000人未満。これに対して医学部の方は9000人を超えています。この結果、特に地方での獣医の不足が問題化しています。

 こうした状況を受け、政府は国家戦略特区に指定された愛媛県今治市で、加計学園の運営する岡山理科大学に対し2018年4月に獣医学部を新設することを認可しました。この認可をめぐっては、その選定プロセスに問題があったのではないかとの追求が野党の側からなされていますが、とにかく、今回の新設は実に52年ぶりのことになります。

 このように獣医になるためのハードルは結構高いことは否定できません。また、学費にしても、医学部ほどではないにしても、6年間で1000万円くらいは覚悟しなければなりません。しかし、それでも見返りは相当大きいものだと思います。というのは、人口の減少、人口の偏在を受け、地域によっては医者が余って来ることが予想されますが、獣医に関してはこれからますますその需要が高まって来ることが予想できるからです。

ペットは家族

 まずはペットを飼う人が増加してきていることです。高齢者の一人暮らしの増加は、孤独死ともつながって社会問題化していますが、その孤独を癒す1つの手段としてペットを飼う高齢者が多くなっています。「アニマル・セラピー」と言う言葉もあるように、動物には人間を癒す効果があります。養護老人ホームでも、ペットを活用して入居者の精神的なケアを行っているところがあります。このような高齢者にとってペットはかけがえのないパートナーであり、その健康管理はとても重要なことになってきます。だからこそ、その相談相手となり、問題を解決してくれる獣医の存在は重要となっています。

ペットは家族同様と考える人が多い

 また、同じことが都会で独身生活を送る人々についても言えます。特に最近は「猫ブーム」「犬ブーム」が起きており、テレビでもかわいい猫や犬たちが朝の番組などで盛んに紹介されていますし、写真集も相当な数が出版されています。かなりのお金をペットに注ぎ込んでいる人もいます。当然、そうした人たちにとっては、ペットの体調管理は重大事項であり、獣医に対する需要は高くなっています。しかも、こうした人々は可処分所得も大きい傾向があります。つまり、お金をそれだけ使えるということです。

 現に、ペットを飼っている人の中には、ペットを愛するあまり、「おいしいエサ」を過剰に与えてしまう結果、人間でいう「生活習慣病」のような状態にペットをしてしまうことも起きています。また、ペットにも高齢化問題が出てきています。長年かわいがってきたペットが高齢化し、その対策が大きな需要となっているのです。こうして、獣医が求められている領域はどんどん拡大しています。

 こうした状況を背景に、獣医学部を卒業して獣医として独立すれば、かなりのビジネスチャンスが開けるといえます。もちろん、獣医として独立し、病院を立ち上げていく際には、様々な診察・治療のための器具をそろえる必要があります。相当な初期投資は必要となるでしょう。しかし、その将来性は説明しやすいので、銀行などから融資を受けることはそれほど難しいとは思えません。医者として独立するのと同様、あるいはそれ以上に独立のリスクは少ないと言っていいと考えます。

活躍の場広く

 なお、獣医学部を卒業した後の進路としては、獣医として働くことが主流であることは確かですが、それ以外にも国家公務員や地方公務員として検疫や畜産、公衆衛生に携わる道もあります。近年しばしば発生している鳥インフルエンザなどの対応では獣医の資格をもつ人々の力は欠かせません。この分野では人が不足しています。

 畜産の分野もあります。畜産そのものは現状において活況を呈しているとは言えませんが、これからの日本を考える上で重要な産業であることに変わりありません。牛や馬、豚といった我々の食生活を根底から支えている日本の畜産業において、獣医の存在はやはり欠かすことのできない存在なのです。「食の安全」が大きな社会問題となっている中、この分野において活躍するということは、獣医としてもとてもやりがいのあることではないかと思います。

 そのほか、競馬にかかわるという道もありますし、動物園や水族館で動物の面倒を見るという道もあります。ただ、この分野は非常に人気が高く、職を得るのが難しくなっています。また、製薬会社で実験に用いられている動物の健康管理を行う業務もあります。このように、獣医としての資格をとれば、意外に多くの道が開けてくるのです。

獣医となるための6年が長すぎるかどうかは、皆さんの置かれた現状によって判断も異なってくるところでしょう。でも、医者になるよりも学費など投資金額も低く、将来性も大きいということはこれまで述べてきたところです。すでに大学生になった人も、就職して先行きに悩んでいる人も、一度獣医としての道を検討してみる価値は十分あると考えます。

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