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[ skill up-自己成長 ]

教科書は街おこし(8)就活後も役立つ
「1分間夢がたり自己紹介」のすすめ

久米信行 authored by 久米信行久米繊維工業会長
教科書は街おこし(8) 就活後も役立つ「1分間夢がたり自己紹介」のすすめ

 あなたは生涯をかけて実現したい夢を1分間で語れますか?

 夢をかなえる道筋や、そのための日々の努力も語れますか?

 わが明治大学商学部ベンチャービジネス論では、最終選考として受講生全員に「1分間夢がたり自己紹介」をしてもらいます。なぜなら、明大生に限らず、多くの若者たちが「人に語るべき大きな夢」を持ち合わせていないからです。さらに、1分間という短い時間で、自分の夢を語りつつ印象的な自己紹介をすることができないからです。

 もしも就活はもちろん入社後に毎日のように待ち構えている「自己紹介」の機会で、「1分間夢がたり」ができたらどうでしょう?就職先の社長や人事部長はもちろんのこと、直属の上司や、取引先の方々にも、特別な好印象を与えることができるでしょう。これこそが、私の実践的な講義で学生たちに授けることのできる「人生最強のツールにして最高のギフト」だと考えています。

夢に挑む大人たちの「熱」に触れれば夢が持てる

 学生たちに尋ねますと、この「1分間夢がたり」に挑戦するまで、自分の夢について考えたことがなかった人が多いようです。最高学府で学べる恵まれた環境にありながら、夢や志を持ち合わせないとは驚きです。

 しかしながら、数年前までは就職氷河期で、学生達は勉強よりも就活に追われていたので、やむを得ないところもありました。しかし、今は、頑張ればすぐに内定が頂ける売り手市場です。その時間的精神的余裕を活かして、もっと真剣に「就活後に実現したい夢」について考えても良いでしょう。

 私は、10年間の講師経験で夢なき若者への特効薬を見つけました。それは夢に挑み続ける「熱い大人」に出逢い、熱い言葉に触れることです。そこで、今年も私が尊敬する各界のチャレンジャーたちに、特別な講義をしていただきました。

講義ブログ

5/10 習慣とひとりビジネスの専門家  佐藤 伝さん
5/17 毎日新聞社 科学環境部 デスク  佐藤 岳幸さん
5/24 日経カレッジカフェ 副編集長   渡辺 茂晃さん
5/31 JTB総合研究所 コンサルタント  吉田 賢一さん
6/07 彫刻家 日本金属工芸研究所 会長 山田 朝彦さん
6/14 日経産業新聞 副編集長      長島 芳明さん
6/21 ベンチャー経営者 支援者 作家  徳本 昌大さん
6/28 墨田区役所 地域力支援部長    鹿島田 和宏さん
7/05 フットマーク 代表取締役社長   三瓶 芳さん

 ゲスト講師のみなさんの熱い講義のエッセンスは、講義ブログでも公開しているので、ぜひご覧になってください。各記事のコメント欄には、受講生たちがゲスト講師から感じ取ったことや学んだことも書かれています。

 しかし本当は...言葉にならないゲスト講師の熱い志に触れることこそ、学生たちにとって最大の学びなのです。今年も受講生の多くは、明らかに半年間で眼の色が変わりました。知らず知らずのうちに、何かに大きなことに挑戦する心が、自分の中に芽生えているのでしょう。

1分間夢がたりの極意=具体的であるほど叶う

 それでは「1分間夢がたり」自己紹介の方法をご紹介いたしましょう。自己紹介は3つのパートに分かれています。

1)自分が死ぬまでに生涯をかけて実現したい夢
2)その実現のために10年後どこで何をしているか
3)10年後に向けて今日から努力すること

自己紹介の記入用紙

 これを提出用のシートに書いてもらってから、1分間で話せるようにリハーサルをしてもらいます。しかし、ただ黙って学生に書いてもらうと、あいまいで抽象的なことを書いてしまう場合が多いのです。

 例えば

1)自分が生涯をかけて実現したい夢は「日本と海外の橋渡し」
2)その実現のために10年後は「商社で海外勤務」
3)10年後に向けて今日から「英語を勉強」

 といった具合です。

 一見すると立派に見えますが、具体性に欠けています。5W1Hで言うならば、WHERE(どこで)WHAT(何を)WHY(なぜ)HOW(どうやって)が具体的に明言されていません。

 もし夢を1分という短い時間で語るにしても

1)自分が生涯をかけて実現したい夢は
「留学していた◎◎国に日本酒の文化を広める」

2)その実現のために10年後は
「日本酒を扱う商社の◎◎国支店の初代支店長になる」

3)10年後に向けて今日から
「◎◎国好みの日本酒を探して◎◎語で紹介するSNSを開設」

 というように、なるべく具体的に書くことが大切です。

 そして発表時には、以下の5点を注意してください。

1 背筋まっすぐ、肩の力を抜いて
2 笑顔をみんなにふりまきながら
3 明るく大きい声で元気よく
4 眼を輝かせて自信を持って
5 自分の夢を熱く語る

 これで、自己紹介を聴く人の心象は劇的に変わるでしょう。ただでさえ「1分間夢がたり自己紹介」で目立つ上、みなさんの夢が熱い想いとして、さらに印象深く相手に伝わるはずです。

9人のゲスト講師から熱いメッセージをいただいた

就活にも就活後にも役立つ「1分間夢がたり自己紹介」

 この「1分間夢がたり自己紹介」が一番有効なシチュエーションは、就職面接と就職後の新入社員研修でしょう。ひょっとしたら目立ちすぎて、同期に「意識高い系」と思われ「ちょっと引かれる」かもしれません。しかし、社長や人事部長の第一印象は「決定的」となるでしょう。みなさんの夢の実現に向かって「新たな運命」のスイッチが起動するはずです。

 かくして、入社時点で、目にはさやかに見えねども、社内評価で同期と何歩も差がついてしまうのです。その差はなかなか埋めることができません。

 例えば、ゲスト講師に三瓶芳社長が登壇してくださった水泳・健康・介護用品のトップメーカー「フットマーク(http://www.footmark.co.jp/)」に、私が就活をしているとしましょう。同社にただ就職できるだけなく、入社後、自分の夢を叶えられるようにするには、どんな「1分間夢がたり自己紹介」が良いでしょうか?

 私ならこんな自己紹介をします。

 「私が生涯をかけて実現したい夢は、世界に誇れる日本発のロングセラー水着を創造することです。

 その夢の実現のために、10年後、私はフットマークの水着企画部門で、新商品の企画担当として、日夜、お客様や店舗を訪問して意見を聴きながらデザインをしています。

 10年後に向けて、私は今日から、美術館や博物館に通い詰めて、日本の美しい絵画、彫刻、工芸品などを見尽して、さらに美意識を磨きます。同時に、友人の海外留学生たちから、好きな日本のデザインを教えてもらって、将来の商品企画に役立つ和風デザインのデータベースを創ります。」

 これだけ熱く語っても、1分以内に収まります。

ゲスト講師の三瓶さん

 ゲスト講義の後、フットマークの三瓶社長と受講生の有志が懇談した際、昨今の就活事情の話になりました。三瓶社長ががっかりするのは「住宅手当はあるのですか?」といった福利厚生の質問をされる時だそうです。逆に、頼もしく思えて好印象なのは「私にこんな仕事をさせてほしい」と直球でリクエストされる時だそうです(なぜかそんな「意識高い系」は女子が多いそうですが...)。

 ですから、こんな熱い「1分間夢がたり自己紹介」をされたら、いかに経営者の胸が高鳴り記憶に残るか、想像に難くないでしょう。

明大生の「1分間夢がたり自己紹介」事例

 最後に、講義ブログやFacebookにリンクして公開された明大生たちの夢をご紹介いたしましょう。

・人生かけて成し遂げたいこと:「自分の本気に挑戦できる人を増やす」
・10年後にやっていること:「本気に挑戦しあぐねてる人100人の背中を押している」
・今からはじめること:10月からはじめる「thirdplace」をコンセプトとした、メディアを立ち上げの準備
(宮下尚人さん)

・人生かけて成し遂げたいこと:自分の夢は、大学の教育改革に関わることです。
・10年後にやっていること:そのためには、10年後私はビジネスマンとなり、様々なことでの01に挑戦しています。
・今からはじめること:最終的に夢を叶えるために、今は現在仲間とたちあげようとしているメディアをきちんと立ち上げることです。
(島智大さん)

・人生かけて成し遂げたいこと:私が死ぬまでに実現したい夢はテーマパークの達人と呼ばれるような存在になること
・10年後にやっていること:10年後の私はきっと外国のどこかか日本の企業で企画開発担当とかマーケティング部で戦略ビジネスを学んでいます
・今からはじめること:そのために大学中に世界のテーマパークを制覇します。
(小林愛実さん)

 残念ながら、勇気を出して、自分の夢をネットで公開したのは数名だけでした。しかし、きっとその差は10年後20年後に大きなものとなるでしょう。

講義後に投稿された学生の感想

夢の実現に向けて夢がたりを

 読者のみなさんも、この「1分間夢がたり自己紹介」を創ってみてください。そして、日々バージョンアップしながら、社内の上司や同僚、お取引先のみなさん、勉強会の師匠や仲間との出会いの時にも活用してください。

 この新しい習慣はきっと、みなさんの夢の実現に役立つはずです。

1 夢を持つ
2 夢を見える化する
3 夢を語り続ける
4 夢に向かって精進する
5 夢への精進を習慣化する

 就活と入社を好機として「自己紹介」という身近な習慣に「夢語り」をビルトインしましょう。この新しい習慣を続けて、明大生はもちろん読者の大学生のみなさんが、将来大きな夢を実現して生き生きとした人生を送ることこそ、私の一番の楽しみなのです。