日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

サステナブルな会社選び(5)アサイードリンクのフルッタフルッタ
買えばエコになる「仕組み」で市場を開拓

authored by 「オルタナ」編集部
サステナブルな会社選び(5) アサイードリンクのフルッタフルッタ買えばエコになる「仕組み」で市場を開拓

 この連載では、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」編集部の記者が企業の規模や知名度を問わず、CSR(企業の社会的責任)で先進的な役割を果たし、社会的課題にも積極的に取り組む企業を紹介しています。企業のCSRやサステナビリティ担当部署で働く若手社会人や社会起業家へインタビューし、「社会的課題を解決する働き方」を様々な角度からお伝えします。

フルッタフルッタを2002年に立ち上げた長澤社長兼CEO

 今回は、日本で初めてブラジル原産の果物、アサイーを使用したドリンクを販売し、2014年に東証マザーズに上場したフルッタフルッタを紹介します。消費者は企業理念や商品の製造過程についても厳しくチェックするようになりましたが、フルッタフルッタ(ポルトガル語で「フルーツ・フルーツ」の意味)の長澤誠社長兼CEOは、「理念だけではモノは売れない」と言い切ります。「エコだから買いましょう」と訴求するのではなく、「買ったモノがエコにつながる仕組み」をつくることがサステナブルな企業の役割だと強調します。

アマゾンでのアサイーとの運命的出会い

――フルッタフルッタはブラジル・アマゾンの日本人移民が経営する農協と契約して、アサイーを仕入れています。この農協では、「森をつくる農業」と称されるアグロフォレストリー(森林農業)でアサイーを生産していますが、どのようにして出会ったのでしょうか。

 ひと言で言えば、運命的な出会いでした。1990年代後半、私は食品メーカーに在籍し、クプアスというカカオの親戚にあたる果物を探しにアマゾンを訪れていました。クプアスの種はチョコレート代替品の原料になるのですが、その種をアマゾンでは捨てているという話を聞き、だったらそれを再利用しようと考えたのです。

 リサイクル意識というより、どうせ捨てているものなら有効利用したいという思いが強かったですね。いくつかのサプライヤー(原材料供給者)を見て回り、最後に訪問したのが、最も多くクプアスを栽培しているトメアス総合農業協同組合でした。そこは日本からの移民が経営する農協でした。彼らの協力を得ながら、製品化に向けて試作を重ねていましたが、残念ながら諸事情により、断念せざるを得なくなりました。

――クプアスの種に代わるのがアサイーですか。

独占契約を結ぶトメアス農協の組合員である日系人生産者の皆さん

 諦めて日本に帰ろうとしたときに、トメアス農協の生産者からアグロフォレストリーという農法を聞きました。荒廃地でコショウを栽培し、コショウの間に野菜の種をまいたり果樹や樹木の苗を植えたりする農法です。5~10年もするとコショウが枯れて、果樹が実をつけます。20年すると、高木と低木が共存した自然な生態系が完成するため、「森をつくる農業」と言われています。

 ここでは栄養価が高いアマゾンフルーツだけでなく、コショウ、ゴム、マホガニーなど多種多様な作物や樹木が育ちます。二酸化炭素の吸収にも一役買っています。私は環境への意識が高かったわけではなく、むしろ、エコとは真逆な資本主義の世界を生きてきた人間です。だからこそ、この農法を見たときに大きな衝撃を受けました。

 もともと、破壊を繰り返す資本主義のあり方に違和感を持っていたため、経済活動によって森を拡大できるアグロフォレストリーがその疑問を解決する糸口になるように見えました。そして、この森で栽培されているアサイーに可能性を感じて、2002年に起業しました。

「理念だけではモノは売れない」を知る

――アサイードリンクは日本では今では女性を中心に好まれ、2014年に東証マザーズに上場しました。しかし、日本で販売を始めた当初は苦戦したようですね。

アグロフォレストリ―ではアサイーだけでなく多種多様な原料が採れる

 アグロフォレストリーの素晴らしさを消費者に伝えたいという気持ちが強かったので、最初は環境に配慮した製品として訴求していました。しかし、それでは消費者には響かないと身を持って分かりました。

 あるとき、こんな体験をしました。アサイードリンクを試飲してもらうために街中で配っていると、一人の中年男性から「ドロみたいなものを飲ませるな」と怒られてしまいました。日本ではまだアサイーの知名度はなく、独特な飲みごたえなので、その男性にはそう思えたのでしょう。もちろん、「環境のために」と伝えても買ってもらえるわけがありません。

 理念だけではモノは売れない。モノが売れないと経済は動かない。環境に配慮した製品をヒットさせるためには、消費者メリットを考えた魅力を追求しなければいけないと思いました。そこからは、「エコだから買いましょう」ではなく、「買ったものがエコにつながる仕組み」をつくるようにしました。店頭では、製品の環境性について説明することはやめて、「美容や健康に良い」と伝えることにしました。さらに馴染がないアサイーに抵抗感をなくすために、日本人なら誰でも知っているバナナと組み合わせて、製品化しました。

――今年からは、これまで積極的に伝えてこなかった製品の環境性について消費者と話し合う場、「フルッタフルッタ・コロッキオ」を毎月1回、主宰されています。この狙いは何でしょうか。

 トレンドとの闘いです。アサイーのマーケットを短期間でつくることに成功しましたが、ブームが去って、離れていった消費者も多くいます。規模を拡大していくために、市場メカニズムに合わせることは必要ですが、ブームだけを追いかけてもサステナブルなビジネスは成立しません。

 現地にいるサプライヤーを裏切ることはできませんので、安定した成長が必要です。これが、サステナブルなビジネスの大前提です。その人たちがつくったものを常に買ってくれるファンを維持するために、「フルッタフルッタ・コロッキオ」を企画しています。

若い頃には真逆な環境にいてもいい

――サステナブルな会社はどのようにして見つけたらよいでしょうか。

アサイー入りドリンクはスムージーのような濃厚な飲みごたえ

 サステナブルな会社を選びたい理由が、「ビジネスが嫌いだから」では、キャリアを積む上で間違いを起こしてしまうでしょう。まずビジネスを好きになってほしい。その上で、会社を見定めてほしい。

 サステナブルな会社かどうかは、その会社が扱っている商品やサービスを見れば分かります。「トレンド」や「最先端」という言葉を掲げ、商品を代わるがわる販売している会社には、真のサステナビリティを感じることはできないと思います。その商品やサービスを扱っていることにしっかりとした意味を持っているかどうかだと思います。

 将来、サステナブルなビジネスに携わりたいと考えているなら、若い頃はあえて、真逆な環境に身を置くことも有効かもしれません。私も真逆な世界にいたからこそ、アグロフォレストリーを見たときに大きな衝撃を受けました。環境とは対局の会社にいたことで、本当にこの問題を解決したいという思いが生まれました。*エシカルというなら、まずその逆を知ることが大事だと思います。
(聞き手は「オルタナS」編集長・池田 真隆)

◆アライアンスが「第2成長期」のカギ
 フルッタフルッタはアグロフォレストリーや自社の取り組みを「グリーンエコノミー」と位置づけています。アグロフォレストリーで採れた多様な原料を同社だけで加工するのではなく、提携企業にも供給しています。アライアンスを組むことで経済の力で森林再生を目指しています。提携する企業側のメリットとしては、事業直結型のCSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)活動を展開することができるようになります。既存商品の原料をアグロフォレストリーの原料に変えるだけで、環境配慮型の商品になります。
 トメアス農協のアグロフォレストリーは7000ヘクタールほどで、高木の樹木が取り込める温室効果ガスは年間で5万3185トンと試算されています(同社調べ)。そのため、この温室効果ガスの量を年間で使っている原料の量で割ることによって、1製品あたりの温室効果ガスの固定量を算出することができます。今後は、アグロフォレストリー産の原料を使用している企業に認証マークを付与することも考えています。
長澤 誠(ながさわ・まこと)・フルッタフルッタ社長兼CEO
 関西学院大学卒。2002年フルッタフルッタを設立。ブラジルのアマゾンの日系生産者らの農協と独占契約を結び、アサイーをはじめとするアマゾン産フルーツの輸入加工販売ビジネスのパイオニアとなった。「自然と共に生きる」を企業理念とし、アマゾン産フルーツのビジネスを通じてその生産現場の森をつくる農業「アグロフォレストリー」の発展に貢献することをミッションとしている。

【参考情報】
*「エシカル」とは:「倫理的・道徳的」という意味の形容詞。フェアトレードやボランティア、ソーシャルビジネスなど、「良い行い」の総称。「良い行い」なので、ボランティアだけでなく、消費活動やビジネスシーンにおいても適用できる。

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>