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[ liberal arts-大学生の常識 ]

失敗は一時の恥、成功は一生の栄光

ブランドン・ヒル authored by ブランドン・ヒル米ビートラックスCEO
失敗は一時の恥、成功は一生の栄光

 シリコンバレーには失敗に寛容な文化があると言われる。本当にそうなのであろうか。ライドシェア最大手、ウーバーテクノロジーズの不祥事と同社の最高経営責任者(CEO)トラビス・カラニック氏の辞任を目の当たりにすると、必ずしも寛容とは言い切れない。

 かつてはアップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏も退任に追い込まれたことがある。シリコンバレーでも失敗すること自体が賛称されている訳ではない。

 もし日本と異なる点があるとすれば、失敗や不祥事がごく短期間で人々の記憶から忘れさられることだろう。むしろ、その失敗をバネに新たな成功を創り出すことで、よりよいストーリーが作り出される。人々の関心は失敗よりも成功に集まりやすい。それも失敗を経てからの成功の方が注目度合いが一段とアップする。

 ジョブズ氏はその良い例だ。彼はアップルに復帰した後、数々の革新的な製品を生み出し、伝説の人物の1人となった。カラニック氏もウーバーを立ち上げるまでに、いくつかの会社の経営に失敗し続けてきた。それでも最終的にうまくいけば、成功者として認識される。

 企業のプロジェクトや製品でも同様の例があげられる。アップルは「アイフォーン」を世に出すよりかなり前に、携帯情報端末「ニュートン」を発売したことがある。技術水準がまだ高くなかったため、ニュートンは普及しなかった。だが「アップルを失敗した企業」と語る人はいない。今は飛ぶ鳥を落とす勢いのアマゾン・ドット・コムもスマートフォン「ファイアフォン」など、いくつもの「失敗作」を市場に出している。

 実は消費者は企業が思っているほど失敗には批判的ではない。最終的にヒット商品を生み出せば、帳消しになるか、それ以上の結果を生み出すことができる。

 一方、日本企業は失敗を恐れるあまり、革新的な製品を市場に出すことにちゅうちょしているようにみえる。社内ではかなり面白いアイデアが次から次に生まれている。だが「市場に出して、もし受け入れられなかったときにブランドに傷がついてしまう」という理由でお蔵入りしてしまう企画があまりにも多い。

 その理由の1つとして、日本の消費者の「厳しい目」をあげられるかもしれない。消費者があまりにも品質にこだわるため、企業は少しでも見劣りする製品を販売するわけにはいかないと考えてしまうのではないか。

 しかし、数々の失敗があったとしても、それを覚え続けられるのは、当事者ぐらいのものであり、周りの人たちや一般の消費者が失敗に注目するのはごくわずかな期間でしかない。逆に1つでも大きな成功を生み出せれば、それは「成功例」として長く語り継がれる。

 そのため、シリコンバレーでは、失敗を恐れずにチャレンジし続ける人が多いのかもしれない。連続起業家としていくつもの会社を倒産させてから最終的に会社を成功に導いた事例は数え切れないほどある。多くの経営資源を投入したにもかかわらず、その製品・サービスが鳴かず飛ばずのままである場合もある。しかしそれに対してネガティブなイメージを持ち続けられることはあまりない。

 「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざがある。シリコンバレーでは「失敗は一時の恥、成功は一生の栄光」が常識となっている。

ブランドン・ヒル 札幌市生まれ。サンフランシスコ州立大学デザイン学科在学中からウェブサイトのデザイナーとして活躍。卒業後の2004年にブランディング・ユーザーエクスペリエンスデザインを手掛けるビートラックスを設立。趣味はバイク、テニス、ロック音楽。

[日経産業新聞2017年6月27日付、日経電子版から転載]

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