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ライブハウス相次ぎ値上げ
背景に、あの法律

ライブハウス相次ぎ値上げ背景に、あの法律

 音楽好きが多く集うライブハウス。ロックバンドやソロのミュージシャンの演奏を聴きに訪れたことがある人も多いだろう。最近はそのライブハウスの入場料金の値上げが相次いでいる。背景には街の中小の酒販店を守る狙いで施行された、あの法律の改正があった。

料金はドリンク代とチケット代で構成

 6月1日。東京・渋谷にあるライブハウス「LUSH」は入場時のドリンク代を従来の500円から600円に引き上げた。下北沢などにある系列の3店舗でも同様に100円値上げした。ドリンク代は、飲み物1杯分として入場時に支払いが必要で「チャージ料金」のようなもの。店長の下石主税さんは値上げの理由について「6月からお酒の仕入れ価格が上がったため」と説明する。

LUSHはドリンク代を100円値上げした(東京都渋谷区)

 仕入れ価格が上がった背景にあるのが6月1日に施行された改正酒税法。街の中小の酒類販売店を守るのを目的に、スーパーなど量販店の酒類の安売りを厳しく規制した。施行によりビール系飲料の価格が上昇。ライブハウスの酒類の仕入れ値も上がり、ドリンク代の値上げにつながったという。

 ライブハウスの料金は入場時の「ドリンク代」と「チケット代」で構成されている。このシステムは営業の形態が出来上がったおよそ40年前から変わらないという。一般的にチケット代の相場は1500~3000円程度。名前の売れているバンドは3000円でも売り切れることが多い。一方、学生が組んでいる無名のバンドなどは1500円でも売れ残る例が少なくないという。基本的にチケット代は出演するミュージシャンの、ドリンク代は演奏場所を提供するライブハウスの収入になる。2杯目以降の飲み物は、客がその都度料金を支払う。

 ドリンク代のシステムを変更し、売り上げを伸ばしているライブハウスもある。東京・四谷にある「四谷Outbreak!」は6月1日から入場時のドリンク代を500円に据え置く一方、2杯目以降を400円から500円に値上げした。また、お酒を多く飲む客にお得となるように「5杯で2千円」「28杯で1万円」などのチケット制も取り入れた。店長の佐藤"boone"学さんは「変更後は売り上げが2割ほど増えた」と話す。

 値上げが相次ぐライブハウスだが、公演数は増加傾向にある。コンサートプロモーターズ協会(東京・渋谷)によると、2016年の国内アーティストのライブハウスにおける公演数は1万2721本と10年前に比べて2倍に増えた。従来はバンド主体だったが、ここ2~3年はアイドルの出演が増えているのが特徴だ。ここで言うアイドルはテレビなどで活躍する人気アイドルではなく、小規模なライブを中心に活動する「ライブアイドル」を指す。「アイドルのイベントはすぐに完売する」(LUSHの下石店長)ほどの人気という。ライブは音楽だけでなくお笑い芸人や落語家、演劇などにも広がっている。ドリンク代の値上げで客足が落ちているライブハウスは少ないという。アイドルや落語好きなど、ライブハウスに訪れる新規ファンの増加が値上げの影響打ち消しに一役買っているようだ。
(商品部 金尾久志)[日経電子版2017年7月20日付]

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