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[ career-働き方 ]

地方の豪族企業(10)萩原工業(岡山県倉敷市)
――ブルーシート、お好み仕様で、
防水・防音・通気性、自在に

地方の豪族企業(10) 萩原工業(岡山県倉敷市)――ブルーシート、お好み仕様で、防水・防音・通気性、自在に

糸から一貫、400種

 行楽地では、シートを敷き、その上で弁当などを食べている人たちを目にする。このシートは「ブルーシート」と呼ばれ、工事現場を囲んでほこりの飛散を防ぐのに使われている。ブルーシートの最大手メーカーが岡山県倉敷市に本社を置く萩原工業。2017年10月期の連結営業利益は26億円で、前期に続いて最高益を更新する見通しだ。

 広島県との県境に近い岡山県里庄町。萩原工業の里庄工場では、樹脂でできた糸が巻き取られていた。糸は専用機械で織られて布になる。防水や紫外線カットなどの機能を持たせたフィルムをコーティングすれば、ブルーシートの完成だ。

 萩原工業によると、国内のブルーシートの市場規模は80億~100億円とみられる。同社の推計シェアは約3割でトップだ。国産に限れば約9割に達するという。

 工業資材の通販サイトでは、中国製は3.6メートル×5.4メートルにつき360円程度で購入できる。だが、萩原工業製は2900円程度。価格差は約8倍だ。それでも建設会社は萩原工業製を選ぶ。

 16年10月に起きた鳥取地震。鳥取県は雨漏りを防ぐためのブルーシートを被災者に支給した。だが、支給されたシートはすぐに破れてしまい、雨漏りを防げなかった。鳥取県は急きょ萩原工業にシートを発注した。

詰まった織り目

 「触ってみてください。すぐに違いがわかりますよ」。萩原工業で大判のシート(ターピーシート)を担当する藤田学ターピー部長は2種類のシートを差し出した。

 ひとつは中国製。触ってみると薄っぺらさを感じる。織り目も粗い。もうひとつは萩原工業製。手に取ると厚みがあり、織り目も詰まっている。

 「国内で糸から製品まで一貫してつくっているのは当社だけではないか」。萩原工業の浅野和志社長は強さの理由をこう説く。同社は用途に応じて糸の素材を使い分けたり、添加剤の種類や量を調整したりしている。

 建築現場用には軽くて丈夫なポリエチレンから糸をつくる。作業員の負担を減らすのが目的だ。解体工事現場用のシートには防音性を高めるため、物性強度が高いオレフィン系素材を使う。

 塗料や接着剤を使う現場には、通気性の高いメッシュタイプのものを用意する。屋外で長期間使う顧客には、紫外線で劣化しにくいものを提供する。生産機械を自社で製造していることもあり、開発した製品をすぐに市場に投入できる。オーダーメードのように対応してきており、品ぞろえは約400種類に及ぶ。

 地震からの復興工事や都心再開発が進み、シートの需要は堅調だ。コンクリート用補強繊維や人工芝用の糸などの樹脂加工製品の売れ行きも順調。17年10月期の売上高は230億円となり、5年間で約1割伸びる見通しだ。株価も5年間でほぼ2倍に膨らんだ。

海外市場を開拓

 さらなる成長に向けて取り組んでいるのは海外市場開拓だ。

 米国やオーストラリアでは雨量が少ない地域で農業を行っている。こうした地域では貯水タンクが設置されている。萩原工業はタンクの劣化を防ぐための漏水防止シートを売り込んでいる。

 中国や東南アジアにはシートで工事現場を囲う習慣はない。だが、景観や生活環境への人々の関心が高まれば、シートの需要が生まれる可能性がある。萩原工業の16年10月期の連結売上高に占める海外比率は27%。まずはこの値を30%台に乗せるのが当面の目標だ。

 萩原工業の設立は1962年。イ草を織ってつくる「花ござ」を製造していた萩原(倉敷市)から独立して誕生した。

和風の柄で風景との調和を高める

 創業者の故萩原賦一氏の口癖は「おもしれえ。すぐやってみゅう(みよう)」。萩原工業はこの言葉を象徴するような製品を2月に発売した。

 発売したのは和柄のシート。白と緑の糸を交互に織り。畳の縁を思わせるデザインにした。「何に使ってもらうかなどは考えていなかった」(浅野社長)が、面白そうだからやってみようということになった。

 関心を示したのは河川敷や公園の管理事務所だった。既存のシートは花見や花火大会などのイベントにそぐわないとの意見があった。和柄であれば、なじむとの反応だ。

 産業資材メーカーの製品開発は「顧客のニーズありき」が鉄則。だが、ときには社員に自由に発想させないと開発力は落ちる。浅野社長は「新商品が認められれば、社内の士気も高まる」と期待している。
(岡山支局 三木田悠)[日経産業新聞2017年6月2日付]

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