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チェック!今週の日経(23)中国アリババ、スマホ決済で日本進出
電子決済市場をリードできるか

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック!今週の日経(23) 中国アリババ、スマホ決済で日本進出電子決済市場をリードできるか

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は電子決済サービスをめぐるニュースを取り上げてみましょう。

中国アリババが日本市場に参入

 16日の朝刊1面トップに次のようなニュースが掲載されました。

紙面

アリババ、スマホ決済上陸 中国発、使いやすさ強み 日本人向け、5万店で(8月16日)

 中国ネット通販最大手のアリババ集団(浙江省)が来春にも、日本でスマートフォン(スマホ)を使った電子決済サービスを始めることを報じたニュースです。電子決済サービスは、銀行口座やクレジットカードと連携したアプリやカードを使って、店舗のレジなどに設置した決済端末で支払う仕組みのこと。日本ではプリペイドカードによる電子決済こそ普及していますが、スマホ決済はまだそれほど普及していません。一方、中国は世界で最もスマホ決済が普及している国といわれています。その中国で市場を二分しているのがアリババによる「支付宝(アリペイ)」と騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャットペイ)」です。そしてアリペイはすでに訪日中国人客向けに日本でも対応店舗網を広げています。この店舗網をベースに日本人向けの決済サービスを始めようというのです。

爆買いイメージ
アリペイは訪日中国人客の急増に合わせて対応店舗網を整備した

 スマホ決済で大きな存在になると、どうなるでしょう。決済サービスは多くの買い物の基盤になります。小銭もカードも持たずにスマホさえ持っていれば支払いができるので、アリペイを使える店の方が便利と感じるようになります。個人の支払い管理も一括でできたほうがわかりやすいでしょう。このような形でアリババは顧客の囲い込みができるようになります。一方、お店やサービスを提供する企業にとっても、アリペイを使えるようにした方が顧客を呼び込みやすい、ということになっていきます。

 さらにそこから、膨大な購買行動という個人情報がアリババ集団の手に入ることになります。この情報をもとにリコメンド(おすすめ)機能などを駆使すれば、アリババ自身や決済サービスを使う企業に次のビジネスチャンスを生み出すことも可能になり、自身の経済圏を大きく広げることにもつながっていきます。

 記事によれば、日本の電子マネーによる決済市場は年間5兆6000億円ほど。中国は17年で250兆円になる見込みという調査もあり、実に40倍以上の市場規模です。人口減少社会といわれる日本でも、電子決済市場に関してはまだ成長余地の大きいということができるでしょう。その市場でアリババは覇権を握ることができるのでしょうか。

中国ネット企業の実力は?

 その点を考えるのに格好な材料を提供するのは、日経電子版の次の記事です。

[FT]百度、アリババ...中国ネット企業は「無菌室」育ち(8月18日)

 英フィナンシャルタイムズによる論評記事です。この記事では、売上高で世界3位の大手インターネット企業、京東集団(JDドットコム)の創業者兼最高経営責任者(CEO)、劉強東氏の「生まれた日に無菌室に入れられ、細菌や病気に一切さらされず、浄化された空気と水だけを与えられていたら、外に出たときに、すぐさま病気になる」という発言を紹介しています。中国企業は真の競争力を磨けていないと、自ら懸念を表明しているのです。「(中国本土より規制のゆるい)香港の住民は圧倒的にウィーチャットより米ワッツアップを好み、アリババや京東のサイトで買い物をする人はほとんどいない」という現状も指摘しています。

 もうひとつ忘れてはならないのは、個人情報の保護の視点です。アリババのスマホ決済での日本進出を伝えた記事では、普及している中国の消費者の間ですら、「決済履歴などの個人情報が企業から市民への監視を強める当局に流れているとの懸念が強い」と指摘しています。

魅力的な日本の消費市場

 これまで日本市場進出での中国の存在感というと、日用品や家電などの生産国というイメージでしたが、サービスや金融という分野でも果敢な挑戦が始まったといえるでしょう。こうした中国の対日ビジネスの広がりに関して、もう1本記事を紹介しておきましょう。

中国企業、日本に「紅い経済圏」 消費分野で進出続々(8月21日)

シェア自転車
上海市内の拠点に並ぶモバイクの自転車。同社の自転車シェアサービスが急拡大している

 記事では「かつて中国企業の日本進出はブランドや技術を狙った製造業の買収が中心だったが、消費・サービスへと分野が広がってきた」として、中国企業による日本でのビジネス展開をまとめて紹介しています。アリババ以外の進出事例で目に付くのは、民泊最大手の途家(トゥージア)、シェア(共有)自転車大手の摩拝単車(モバイク)などのシェアリングサービスです。日本では固い規制や習慣で普及が遅れている分野に、中国企業が現地で練り上げた実績をもとに市場開拓を進めようとしている現状が見てとれます。これらの企業からみれば、日本は魅力的な市場と映っているのでしょう。低成長が続き、将来的にも人口減少などのマイナス要因を抱えている日本市場ですが、ビジネスアイデアさえあれば、まだまだ成長と深堀りが可能な魅力的な消費市場があることを中国企業が教えてくれてもいるといえます。

(企画委員 水柿武志)

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