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[ career-働き方 ]

新卒はANA、転職組はトヨタ
人気企業なぜ違う

新卒はANA、転職組はトヨタ 人気企業なぜ違う

 2018年に卒業する学生の採用活動も一段落した。「暑さが厳しくなる前、6月中に入社先を決めた」(東京経済大4年)という声もある一方、複数の内定を得て「どの企業がいいか」「後悔したくない」と、いまだに迷っている学生もいる。彼らの参考になるのが、すでに社会に出て働く人たちが見た「良い会社」だ。業種や職種だけでなく、給与などの待遇面も気になるところだろう。転職先として人気が高い企業と新卒学生に人気の高い企業を比べてみた。

転職人気先、トヨタとグーグルが2強

 転職情報サイト「DODA(デューダ)」を運営するパーソルキャリア(旧インテリジェンス、東京・千代田)は、6月に「DODA転職人気企業ランキング2017」を発表した。回答者は、22~59歳までの正社員5031人だ。転職したい企業の1位になったのはトヨタ自動車、2位がグーグル日本法人、3位がソニーだった。過去5年間の結果を見てみると、若干の順位変動はあるものの、この3社が不動のベスト3となっている。

新卒人気企業ランキングと人気企業ランキングには、大きな違いがある

 DODA編集長の大浦征也氏は「トヨタを選んだ人からは『日本を代表する企業で働きたい』という声が多かった」という。業種別にみると、グーグル日本法人(2位)、楽天(6位)、アップル日本法人(8位)、ヤフー(11位)、アマゾンジャパン(16位)、ソフトバンク(19位)などIT(情報技術)関連企業が目立つ。大浦氏は「IT関連企業は、『週休3日制』の実現をめざすヤフーなど、働き方改革に熱心な企業が多いことも人気の理由だろう」と指摘する。

 転職サイト運営のビズリーチがまとめた「平均年収1000万円のビジネスパーソンが勧める、就職人気企業ランキング2016」でも、1位はトヨタ、2位はグーグルという結果だった。ソフトバンクグループや楽天などIT関連の人気は、DODAと近い結果が出ている。

新卒ランキング、「運輸・観光」「金融機関」が上位

 一方、就活生の人気企業ランキングはどうだろうか。就職情報大手のマイナビ(東京・千代田)が日本経済新聞社と共同で2017年4月に発表したランキングでは、文系総合の1位が全日本空輸(ANA)、2位がJTB、3位が日本航空(JAL)という結果だった。このランキングでは過去5年間、ANA、JTBグループ、JAL、三菱東京UFJ銀行、東京海上日動火災保険、エイチ・アイ・エスの6社が常に10位以内を維持している。電通も、女性新入社員の過労自殺が発覚するまではトップテンの常連だった。

学生から就職先として人気が高いANAとJAL

 就職情報大手の学情による18年卒業予定者の調査でも、1位はANA、2位はJAL、3位が資生堂となっており、運輸・旅行系の人気の高さは変わらないようだ。

 「交通インフラ・旅行サービス系企業」は、転職の人気ランキングでもANA(4位)、JAL(7位)などが根強い人気を誇っている。「20年には東京オリンピックがあるし、外国人観光客が増えている影響もあるのではないか」(大浦氏)という。一方、学生に人気のエイチ・アイ・エスは、転職人気ランキングでは103位、メガバンクの代表的な存在である三菱東京UFJ銀行も104位にとどまっている。

年収の高い人、重視する基準は別に

 DODAの転職人気企業ランキングでは、回答者の年収別に集計したランキングもある。年収650万円以上の人の回答を見ると、1位グーグル、2位トヨタに続いて、総合では12位だった武田薬品工業が3位に入ったのが目立つ。ほかに、総合25位のキーエンスが19位、総合48位の三井不動産が27位、総合87位のファナックが30位と、総合順位とは違う選び方が見えてくる。

 これらの企業には、平均年収が高いという共通点がある。有価証券報告書によると、キーエンスは1861万円。前期の1756万円からアップ。武田薬品工業が1015万円など、平均年収が1000万円を超える企業が多い。年収が高い人ほど、転職を考えるときにも待遇のよさを重視する傾向があるようだ。

 リクルートキャリア就職みらい研究所が発表した「就職白書2017」によると、今年就職した学生たちが企業選びで最も重視したのは「業種」「勤務地」「職種」の順だった。「給与水準」と答えた学生は6.1%にとどまっている。一方で、DODA転職人気ランキングで、その会社に投票した理由は「やりがいのある仕事ができそう」(57.3%)に続いて「給与・待遇がよさそう」(55.8%)だった。学生と社会人の判断基準の違いは明らかだ。

口コミ「やりがい」ランキング、外資系企業が上位に

 職場環境の実態を知りたい――。学生が情報収集のツールとして利用するのが、企業の実態を紹介する「ヴォーカーズ」などの口コミサイトだ。外資系コンサルティング会社の内定を断り、大手ネット企業への入社を決めた慶応大4年の男子学生も、「口コミサイトを見たら、断った会社のほうが評判よくて......。ちょっと揺れた」と不安そうだ。

 サイトを運営するヴォーカーズ(東京・渋谷)は毎年、集まった口コミから総合的に評価した「働きがいのある会社」を発表している。2017年では、1位がプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン、2位にセールスフォース・ドットコム、3位にリクルートマネジメントソリューションズ、4位にグーグルと続き、ベスト10に外資系企業が6社並んだ。IT関連企業は4社だった。

顔ぶれの違いはどこから?

 転職人気ランキングと学生の人気ランキングでこれほど大きな違いが生まれるのは、なぜだろう。

トヨタ自動車は転職先人気企業のトップを走る

 「学生はANAなど交通インフラ系や金融大手のように、知名度が高くて安定感のある会社を選びがちだ。グーグルはブランド力は高いが、大量採用はしておらず、トップクラスの大学生以外には『手の届かない会社』というイメージが強いのだろう。一方、転職者には、待遇面からもぜひ挑戦したい会社と映るのではないか」(大手人材サービス会社幹部)という。

 転職ランキングを見るうえで、注意すべきポイントもある。採用市場に詳しい人材研究所(東京・港)の曽和利光社長は「新卒から育成することを重視する戦略をとっているため、中途採用の求人市場で名前が出てこない会社もある」という。そういった企業は、転職者向けの広告を出さないので認知度が低くなり、ランキングには登場しにくくなる。金融大手は特にその傾向が強いという。

 積極的に中途採用を行う企業は、急成長のさなかだったり、特定の部署の拡大を目指していたりする可能性が高い。転職人気ランキングの上位にある会社だからといって、理想の就職先とは限らない。ただ、キャリアを一定以上積み上げた転職者の動向は、学生が就職を考える上でも重要なヒントになるだろう。
(松本千恵)[日経電子版2017年7月8日付]

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