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[ career-働き方 ]

ワークスアプリ牧野CEOが語る変革起こす「ワガママ人材」、
採る覚悟あるか

ワークスアプリ牧野CEOが語る 変革起こす「ワガママ人材」、採る覚悟あるか

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)の進化、グローバル化など急速なビジネス環境の変化を受け、イノベーション(変革)を起こせる「優秀な人材」へのニーズが高まっている。しかし、ワークスアプリケーションズの牧野正幸最高経営責任者(CEO)は、そうした人材の特徴を理解した上で採用しないと才能を潰してしまう、と指摘する。そもそも優秀な人材とは何か。また、彼らを適切に伸ばせる評価制度とは何か。

いい人材とは何か

ワークスアプリケーションズの牧野正幸CEO

 「いい人材が採れない」――。こんな言葉をよく聞きます。では、いい人材とは具体的にどのような人でしょうか。学歴がよければいいなら、極端にいえば面接の必要はありません。「東京大学卒なら全員合格」というのも、ひとつの方法論です。しかし、大半の企業が「それだけでは当社の求める人物に出会えない」と考えるでしょう。

 多くの経営者が、新卒者に「問題解決能力」と「ポジティブ思考」を求めます。特に最近、この2つが重視されていると感じます。日本企業がイノベーションを迫られているからです。しかし、この2つは満たしても、ほかに問題がある人材だったらどうでしょうか。

 私の経験上、問題解決能力がある異能の人は発想が飛躍する傾向が強く、規則に縛られない人が多いです。彼らはリクルートスーツではなく、革のジャケットとジーンズで面接にくるかもしれません。企業側が服装を指定していない限り、彼らに非はなさそうです。しかし、多くの企業は彼らを不合格にするでしょう。

採用、人事部に任せられるか

 採用担当者の難しさはここにあります。経営陣が求める「問題解決能力」や「ポジティブ思考」を持った人たちは活躍できるのでしょうか。答えは数年後、場合によっては10年以上たたないと出ません。その答えが出る前に、彼らが上司にたてついたり、会社の暗黙のルールを守らなかったりして、組織の和を乱すかもしれません。

 10人採用して9人は辞めたが、残りの1人が優秀で、何十年かして社長になった――。これで採用した人事の担当者が評価されることはありません。その頃には既に担当者は会社にいないからです。それゆえ人事はリスク回避を優先します。「変なことを言わない」「あいさつがきちんとできる」といった暗黙の条件があって、そちらを重く見るのです。

牧野氏は「有能な人の扱いは本当に難しい」と話す

 重要なのは、会社が求める人材像をはっきりさせることです。私の知る限り、「問題解決能力」と「ポジティブ思考」に極めて優れ、協調性なども十分備えている人間は存在しません。彼らはかなり変わっているし、自己主張の強い人間が多いと思います。「それでも問題解決能力の高い人材が必要だ」というなら、評価や考課を担当する人事部に任せないで、独立した専任の採用担当を任命するべきなのです。当社では、こうした専任の担当を置くとともに現場の社員も採用活動を行う形で、必要な人材を採るようにしています。

優秀ならワガママでもいい

 当社でも、有能な人の扱いは本当に難しいです。彼らは頭も要領もいいので、周囲のやり方を否定したり、キャリアの時間軸がほかと違ったりします。何より非常にワガママです。「昇進、昇格は順番だから1、2年我慢して」と言ったら、すぐやめてしまう。ですがイノベーションを起こしたいなら、ワガママも許容し、才能を育てる必要があるのです。

 能力が高くても、ちょっと変わった人を的確に評価できる上司は多くありません。特に自分が凡庸な場合、そういう部下を低く評価しがちです。私は、上司の評価能力に頼った人材育成法では、有能な人材を潰す可能性があると考えています。

 当社では、一緒に働いている複数の同僚に「その人が飛び抜けて優秀かどうか」を聞き、その評価に最も重きを置くことにしました。多くの人がそう評価したら、報酬も役職も上げる仕組みです。

「組織の力」、犠牲にしても

 しかし、このやり方には大きな欠点があります。人事評価に関する上司の権限が小さくなり、組織の結束が弱くなりかねないのです。個人のパフォーマンスはよくなったとしても、組織のことは考えないようになりがちです。組織として、どう力を発揮するかを考える人はマネジャーくらいしかいなくなり、トップからみても非常にマネジメントしにくい会社になってしまいます。

 当社の組織としてのパフォーマンスは、管理型の組織に比べて高いでしょうか。私は、そうは思っていません。イノベーションと組織力は「あちらを立てれば、こちらが立たない」というトレードオフの関係です。私は組織力より、ずばぬけて優秀な人を採るほうを優先したかったのです。

 イノベーションより組織を優先すれば、どうしても変革のスピードが落ちてしまいます。だから個人の能力を優先し、優遇しているのです。上司や役員は、彼らのアイデアを実現できるよう協力します。当社はそういう仕組みで動いています。
(松本千恵)[日経電子版2017年7月2日付]

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