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[ liberal arts-大学生の常識 ]

賢い自動運転・あせる私
「レベル3」を体験

賢い自動運転・あせる私「レベル3」を体験

 自動運転技術が身近になる時代が、近づいてきた。主要メーカーが高速道路の複数車線での自動運転技術の実用化を掲げている2018~20年はもう目の前で、開発は着々と進んでいる。ホンダはこのほど、システムが中心となって運転する「レベル3」に相当する自動運転技術を報道陣に公開。実験車両に試乗して、少し未来の「運転」を体験してきた。

 栃木県芳賀町にある本田技術研究所のテストコースで、周回路を高速道路に見立てた試乗だ。

 これまで取材の場で見た自動運転の試作車は屋根にセンサーやカメラを複数積んでいたが、待っていた自動運転システムを搭載した車両は、見た目は通常のセダン。だが高精度な地図やカメラ、複数のレーダーやレーザー光を使ったセンサーの「ライダー」を搭載しているのだという。

 自動運転の車に乗るのは今回が初めてだった。一般道は手動で運転する車なので、運転席に乗り込み、まずは自分でアクセルを踏んで車をスタート。

高速道路での自動運転に対応した車(左)の外観は、市販のセダンと変わらない(栃木県芳賀町)

 「ボタンを押してください」。実際の高速道路なら加速車線にあたるところで、同乗したホンダのエンジニアの指示にしたがって操作すると、いよいよ自動運転だ。

 恐る恐るハンドルから手を、アクセルペダルから足を離してみた。もちろん、車は何事もなく進み続ける。方向指示器が勝手に点滅し、少し加速して本線に合流した。

 肝心の乗り心地だが、違和感は何もない。車線変更の際や追い越しの加速も滑らか。カーブでも安定して走り、急な動きに体が振られることは皆無だった。他人の運転で時々感じる不快な急減速・急加速といったことも無く、安心感をもって運転を委ねた。

 ふと「窓の外の緑がきれいだなぁ」と考えた。運転席にいるのが嘘のようだ。想像以上に手持ち無沙汰。それでもレベル3では人がいつでも運転を代われる状態であることが必要で、緊張は保たなくてはいけない。

 前走車が遅いと判断すると、車線変更をしてさらりと追い抜く。渋滞を検知すると、進行方向から視線を外すことを許され、テレビ電話などを楽しめるようになっていた。車内のカメラで運転者の視線や顔の向きをチェックしており、渋滞が解消すると、シートベルトが震えて再び前を向くように促された。

 課題を感じたのは、システムと運転者との意思疎通の面だ。一般道への出口が近づいてくると、システムから運転の交代を求められた。メーターに「自動運転を終了します。運転操作を交代してください」というメッセージが表示され、ハンドルのインジケーターがオレンジ色に光って警告する。視覚に続いて、次は聴覚に訴える。音声で警告や警報が流れる。

 最後はシートベルトが振動し、触覚で知らせる。ここでようやくハンドルを握るとセンサーがそれを検知し、運転を任された。とはいえ、車が走っている状態で運転を交代した経験なんてあるはずもない。うろたえてしまい、とたんに車がふらついた。しばらくの間、アクセルを踏むのも忘れていた。慣れればすんなり交代できそうだが、クルマだけではなく、ヒトも進歩が必要だ。

 この自動運転システムでは、もしシートベルトが振動して最終警告をしてもドライバーがハンドルを握らなければ、車は安全な場所に停止させる緊急停止制御をする。

 ホンダは高速道路での自動運転の実用化に続いて、一般道にも自動運転を広げる計画。八郷隆弘社長は自動運転時代のホンダ車について、ハンドルが無いような車両は想定せず、ドライバーとして運転を楽しめる状況では自分で車をコントロールできるようにするなど、「移動の楽しさを追求したい」という。

 記者はどちらかというと運転が下手だ。ハンドルを握ると景色を楽しむ余裕は全くない。技術が実用化される近い未来が楽しみになる、1周4キロメートル・5分の体験だった。
(企業報道部 若杉朋子)[日経産業新聞2017年7月3日付、日経電子版から転載]

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