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[ career-働き方 ]

地方の豪族企業(11)カチタス(群馬県桐生市)
――住宅、駅チカより駐車場、
中古再生、心地よく

地方の豪族企業(11) カチタス(群馬県桐生市)――住宅、駅チカより駐車場、中古再生、心地よく

 ニトリホールディングス(HD)が5月末に約230億円を投じて資本参加した企業が群馬県桐生市にある。築30~40年の中古住宅を買い取ってリフォームして売る――。カチタスはこんなビジネスで「相棒」に選ばれた。48歳の新井健資社長は「消費者は家が欲しいのではない。いい暮らしが欲しい」と語る。

 「あなたのおうちをすぐに買い取りカチタス♪」。鳥のキャラクターが歌いながら電卓をたたく。ユニークなテレビCMだが、流れているのは地方だけ。東京で目にすることはまずない。

 「我々のターゲットは地方で住宅を初めて購入しようとしている人(1次取得者)」。新井社長の言葉を体現する物件が群馬県伊勢崎市にある。

 最寄り駅から車で15分。「こんな遠いところで家が売れるのか」。記者のそんな思いを感じたのか、カチタスの原英之課長は説明してくれた。「地方では公共交通機関があまり発達していないので、駅からの距離はあまり関係ないんですよ」

 地方では、自家用車で通勤や買い物に行くのが一般的。「駅チカ」かどうかは住宅の価格や売れ行きにあまり影響を与えない。その代わりに重視されるのが駐車場だ。伊勢崎市の物件でもゆうに2台はとめられる駐車場を敷地内に備えていた。

居住感をなくす

 カチタスでは、原則として買い取った住宅の庭を駐車場につくりかえる。「庭は住む人によって必要だったり、不要だったりする。だが、駐車場はどの家庭にも不可欠」(新井社長)だからだ。

 (1)家を新築する(2)中古住宅を買う(3)取得をあきらめて賃貸に住み続ける――。住宅の1次取得を考えている人には3つの選択肢があった。カチタスは「リフォーム済み中古住宅」という第4の選択肢を提案する。

 人口減少と高齢化で地方では、空き家が増えている。半面、マンションの供給は少なく、1次取得者は戸建て住宅を購入するのが一般的。だが、新築は割高だ。中古は安いが、前に住んでいた人の「居住感」が残る。

 カチタスは住宅を買い取り、工務店などと共同でリフォームする。構造が許せば、間取りを大幅に変える。台所やトイレ、風呂場などの水回りは基本的にすべて取り換える。畳はフローリング、押し入れはクローゼットに変える。急な階段には手すりを付ける。

 外見の古くささは否めない。それでも中に入ればフローリングから木の香りが漂う。どのようにリフォームしたら生活の質が向上するか、どんなキッチンやお風呂が消費者に喜ばれるか。「そこが我々の腕の見せどころです」(原課長)

平均1300万円前後

 カチタスの主な顧客は世帯年収が200万~500万円の人たち。地方の新築戸建て住宅が3000万円前後するなか、カチタスの物件は平均1300万円前後。35年ローンで月々の支払いが約4万円になる計算だ。賃貸住宅の賃借料と同じか、やや低い水準だ。グループで2016年度に前年度を642戸上回る4402戸を販売した。

 新井社長は「住宅にかかるコストが下がれば、日々の生活を豊かにすることにお金をかけられるようになる」と説く。

 ニトリとの提携で目指しているのが、リフォームした家にニトリの家具を配置し、そのまま販売する「ホームステージング」と呼ばれる手法だ。住宅だけでなく、ニトリの家具一式の価格も住宅ローンに含めて、家具の購入費用を分散できる。内見のときに消費者は実際の生活を感じられる。

 カチタスの前身は墓石販売の「やすらぎ」だった。1998年に中古住宅をリフォームして販売する事業を始め、2004年に株式を上場した。金融危機による不動産市況の悪化で業績が傾き、12年に上場を廃止して投資会社のもとで経営再建に取り組んできた。

 13年に社名を「カチタス」に変更した。空き家に「価値を足す」というのが由来だ。社名のアイデアは社員から出た。

 空き家の増加で買い取りコストが低減、16年には社名変更後の買い取り戸数が1万戸を超えた。若い世代を中心に新築にこだわらない考え方が広がり、業績が持ち直している。17年3月期の売上高は前期比約15%増の452億円、営業利益は約33%増の52億円だった。

 ニトリが投じた資金は投資会社が保有していた株式の買い取りに充てられ、筆頭株主も投資会社からニトリに代わった。名実ともに経営再建を果たしたカチタスが向かうのは「地方で豊かに暮らす」という生活様式の実現だ。(矢野摂士)

新井社長に聞く、ニトリの家具とセットに

中古住宅買い取り再販でトップシェアを誇るカチタスの新井社長に戦略を聞いた。

――地方で販売を伸ばしています。都市圏では事業を積極的に展開しないのでしょうか。

 「自動車が生活必需品になっている地方では、駐車場が必須だ。この構図は変わらない。東京23区などの大都市では、これまでカチタスが培ってきたノウハウを生かしにくい」

――リフォームのデザインは、全体的に落ち着いたものに見えます。

 「万人に受け入れられるデザインでないと買い手が付かないので、無難な色やデザインにすることが多い。リフォームが終わる前に購入者と契約を結んでおき、ローン審査の見通しが立てば、キッチンなどの水回りや壁紙を希望に応じて変更することもある」

――地方では、空き家問題が深刻です。

 「安価にリフォームして再販売することで、空き家問題の解消に貢献できると感じている。消費者が安くきれいな家を買えるというのは大きな価値だと思う。買い取り再販という業種の認知度を高めたい」

――ニトリと資本・業務提携しました。

 「12年にアドバンテッジパートナーズ(AP)という投資ファンドの出資を受け入れた。次の提携先としてパートナーを探していた」

 「住まいの豊かさを提供するという考えが両社で一致した。具体的な提携内容は今後詰めるが、住宅の価格に家具代を含めるといった販売面で提携する可能性がある」
[日経産業新聞 2017年6月21日付]

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