未来を切り拓く「第3の手帳」を持とう
人事部長のひとりごと(18)
こんにちは、中澤二朗です。私は今は大学で教えていますが、昨年まで、都内の某大手企業の人事部にいました。当時から、私が学生に勧めていたことを一つご紹介します。皆さんが未来を切り拓きたい。そうした力を身につけたい、もしそう願うなら、「第3の手帳」を持ってほしいということです。
私たちは、大人も含めて誰もが大概は二つの手帳を持っています(ノートかもしれません)。一つはスケジュールを書き込むもの(第1の手帳)。もう一つは、大事なことを書き留めておく記録用です(第2の手帳)。
しかし、そこにとどまっていては、未来を切り拓く力はつきません。「創造的な仕事に就きたい」、「仕事を、名指しで頼まれるようになりたい」と思ったら、もう一歩踏み込んだ努力をする必要があります。
スケジュール帳ではなぜダメなのか
ただ、スケジュールに書かれた予定をこなしているだけでは、未来に通じる扉を開けることはできません。未来への「学び」は確かに重要ですが、インプットばかりにかまけていると、アウトプットする暇がなくなります。
例えば、今、あなたの手帳(第1の手帳)にこんな予定が入っていたら、どう、それに対応しますか。
・来週の12日(水)、13時。〇〇〇会社に入った先輩の話を聞きに行く。
・来月の5日(木)、15時~17時、ゼミの担当(テーマ決め、資料準備、回し)
もしも漫然とその日を迎え、「後は、その場でなんとか対応しよう」というのでは、とても未来を拓くことはできません。それはまさに後ろ向きで未来に立ち向かうようなもの。自分のやる気は起こりませんし、一緒にやろうという仲間も出てこないに違いありません。
そこで、「第3の手帳」の登場です。新たに手帳を買い求め、そこにこうしたすべきことを書き付けて、日々それについてどうすればよいか、よいやり方があるか考えるようにしたらどうでしょう。
先輩に会ったらこんなことを聞いてみたい。こんな意見をもっているので、是非それについてコメントも聞いてみたい。それやこれや、思いつくたびにその手帳に書き込んでいたとしたら、きっとより良い時間が過ごせるに違いありません。いや、そればかりではありません。課題を自ら考え、それを積極的に問いかけてくるあなたを見て、先輩が、「ウチの会社を受けてみないか」と言ってくれるかもしれません。
「深く考える」ためのツール
「第3の手帳」はもっと違う使い方ができます。気になるテーマを書き込み、電車に乗っているとき、はたまた友だちを待っている隙間に始終考えるようにしていたら、どうでしょう。
・今朝のテレビでやっていた、中国の学生事情はどうなっているのだろう。
・「働き方改革」の何が問題か。どうすればいいか。それは、なぜか。
・「私たちは生まれてから何にもいいことがなかった」。この言葉をどう評価するか。
・会社って何か。
・働くって何か。
知らず知らず、深く考える思考のクセがつき、人にも一目置かれるようになるのではないでしょうか。さらに、日常生活で「第3の手帳」に書くテーマを見つけようと思うだけで、ぼんやり過ごすのではなく、自分自身が前向きに、ウキウキしながら過ごせるのが不思議です。
手帳はいくら高くても、1000円前後です。そんな少ない投資で、未来を拓く力が養えるのですから、ぜひ試してみてほしいと思います。
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