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世界最大規模の研究施設・CERNで学んだこと

物理ろまん主義(3)

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今までの二つの記事は両方私がCERNに来るまでについて書いてきましたが、今回からは CERNでの出来事によりフォーカスして書いていきます。今回はCERNでの私の研究について、そして最後に少しCERNでの生活についても書こうと思います。

CERNは欧州原子核研究機構の略称です。日本語やフランス語では『セルン』、英語では『サーン』と発音されます。フランスとスイスの国境上に世界最大規模の研究施設とも言われるメインの施設があり、素粒子物理学をはじめとする高エネルギー物理に関する研究をしています。

CERN は最大13000人まで収容できると言われていますが、現地にいるほとんどの方々は私のような客員研究員で、本業は他の大学での教授をしていたり、博士課程の学生として勉強しいる方々が非常に多く、現在CERNに全体で何人いるのか把握するのは非常に難しいです。実際、私が参加しているプロジェクトでも、大学学部生は私だけです。

山手線と同じぐらいの巨大加速器も

夏の間には大学生向けのCERN主催のプログラムが開かれていたり、いろいろな大学のプログラムが開かれているので、他の季節と比べると比較的賑わっているようです。プログラムの参加者は、CERNでレクチャーを受けたり、少しだけ実験に参加したり、ジュネーブ観光ができたりと、色々詰まったお得なプログラムなようでした。私は今回客員研究員として来たため、そのようなプログラム参加者との交流がなかなかできず、少し心残りです。

CERNは、私が通常働いているメインの施設のほかに、いくつかの研究施設や、巨大な研究機器も所有しています。その中には全周27kmもある大型ハドロン衝突型加速器、通称LHC(Large Hadron Collider)というものもあります。この実験器の役割を想像しやすく例えるならば、地下100mに埋まった山手線ほどの長さの大きな円形チューブの中に陽子たちを、物体が持ちうる最高の速度である光速の99.9%もの速度まで加速し、ぶつけ合うようなものです。

そして、アインシュタインが特殊相対性理論を発表した際に、光に関する原理と組み合わせて同時に発表した「質量とエネルギーはお互いに変換可能である」という理論をもとに、二つの陽子の衝突時に生まれたエネルギーから新たな質量(=新たな粒子)を生み出すという実験を行っています。その結果、CERNのLHC 内では地球においての自然界には存在しない、または発見しにくい粒子を作ることができ、宇宙における物体の存在についての理解を深めることができるのです。

作られた新たな粒子たちは、LHCの円周上にある、主に4つの検出器と研究施設により観測されます。4つの検出器の中には日本も研究によく関わっていて、またCERNのメインの施設の最も近くにあるATLAS (A Toroidal LHC ApparatuS)、そのATLASと協力して2012年のヒッグス粒子の発見に貢献したCMS (Compact Muon Solenoid) 、強いエネルギーを使って初期の宇宙の状態を再現する目的を持ったALICE (A Large Ion Collider Experiment)、そしてCERNが解き明かそうとしている謎のうちの一つをB中間子という粒子を使って研究しているLHCb(LHC-beauty)があります。

私が今回参加しているMATHUSLAという実験グループの目的は、以上でご紹介した4つの検出器の他に新しく5つ目の検出器を作ろうというものです。この検出器は他の検出器とは違い、地上に建設される予定です。地下にある検出器では粒子の移動距離が足りず、検出されるための反応を起こせない粒子を発見するため、LHC内で作られた粒子が地層を通り越し地上に出てくるまで待ってから検出する仕組みです。この実験により新たな素粒子を観測することができると、人類が100年ほどかけて作り上げてきた大きな理論を反駁することができるのです。

そのグループのために現在、私が行っている実験は、その検出器のデータの邪魔(ノイズ)になりうる宇宙線という物質の分析をするというものです。この物質は常に宇宙空間から降り注いでいるもので、その性質を分析することにより、検出器を稼働させ宇宙線がノイズとなった際、その排除をすぐさま行うことができるのです。

他にも、このような機械を使う研究と同時に、理論に基づいた計算を行う研究もしています。この研究こそが、普段の大学内での研究や実験とCERNでの研究との違いを実感させてくれるもの、そして物理のロマンをさらに感じさせてくれる経験となりました。

物理のロマンに触れた

物理学で精巧な機器を用いない普段の実験を行う際、いつも前提としてあるのは、実験は完璧になりえないということです。例えば、実験で1.2グラムの重さを測っても、それは完璧な1.2グラムではありません。もしかしたら1.205グラムかもしれないし、逆に1.2グラムよりも1万分の1グラム軽いかもしれません。

けれども人間のすることに「誤差」が生まれてしまうのは仕方がないことです。ですから、それによって実際の結果と予測値に違いがあっても、その「誤差」はいわば一般の人類の究極を超えた、私たちの取り扱い範囲外のものであり、物理学の手に負えるものではないと見なされています。

しかしながらCERNで行っている今回の実験では100億分の1秒の誤差も許されず、その違いを作り出さないために使用する導線の長ささえ決められています。今まで導線はただ電気を伝えるためのものであり、それ以下でもそれ以上でもないと思っており、長さなど気にしたことはありませんでした。しかし今回の実験では導線の中を通る光子の速さと、データを伝達する為にかけたい時間から導線の長さを割り出し、100億分の1秒もの小さな誤差も出ないように実験の設計を行います。もちろんここではさらに細かい、1兆分の1秒ほどの誤差が出てしまうのは事実であり、どんなに測量を細かく正確にしていっても私たち人類にとって連続的なものに対して特定の値をどこまでも正確に把握するのは不可能なことです。

しかし 、通常の生活の中では扱いきれなかったレベルの『誤差』を物理学の一部として理解し、届かない『正確』に向かって一丸となって向かっていく人類の知識の可能性、そして反対に『正確』には届かないという事実の前に立ち尽くした時の自然の中での人類の小ささを思い知らされる瞬間は、まさしく私が物理の美しさ・神々しさを感じる時、物理のロマンが溢れていると感じる時なのです。

この上で述べた、私が物理に抱く神々しさという感情は日本語にするとすごく不思議な感じがします。神という感じが一つの単語に二回出てくるなんてなんとも宗教的です。17世紀の教会とガリレオの地動説における対立をはじめとして、宗教と科学は対立の関係にあると思われることも多いでしょう。

しかし実は自らが敬虔なカトリック教徒であったガリレオが「数学は神が宇宙を書くためのアルファベットだ」という言葉を残していたり、特殊相対性理論を確立したアインシュタインもかの有名な「神はサイコロを振らない」と残していたりするように、宗教と科学は多くの人の中で共存していたのではないでしょうか。

私自身も宗教と科学は対立のものとは感じておらず、むしろ同じ意味を持った二つの媒体なのではないかと思っています。この考えは私にとっての物理のこの世界での 存在意義に値するので、CERNのご紹介が終わってから違う記事でお話しさせていただこうと思います。

他の国際機関に比べて一般のメディアにはあまり登場しないCERNについて今回は紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 今回はCERNの研究内容について詳しく説明しましたが、次回はカフェテリアでの食事や、科学者たちの仕事中の雰囲気などをお伝えしていきたいと思います。

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