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[ liberal arts-大学生の常識 ]

起業家支援は資金のみならず
悩み解消も投資家の役目

authored by 森川 亮C Channel社長
起業家支援は資金のみならず悩み解消も投資家の役目

 今回は最近の起業の環境について書こうと思います。

 先進国では、既存の大企業の成長が鈍化し、ベンチャー企業が経済や雇用をけん引しています。いかにベンチャー企業を育て、イノベーションを生み出すのかが国の政策としても重要になっているのです。

 日本でも若い人たちが起業してイノベーションを起こそうとしている動きが広がってきました。それは、戦後に成長した大企業の成長が鈍化したり、厳しい経営状況になったりするのを彼らが目の当たりにしたからでしょう。そうした若手起業家を支援する会社も生まれてきています。

 創業して間もない「シード段階」のベンチャー企業に投資しているベンチャーキャピタル(VC)の1つにスカイランドベンチャーズ(東京・渋谷)があります。代表の木下慶彦さんは大手VCや独立系のVCを経て、20代の若さでスカイランドベンチャーズを立ち上げました。まさに彼自身が若手起業家です。

 スカイランドベンチャーズの投資先には、IT(情報技術)による物流システムを活用した鮮魚専門の卸売り会社の八面六臂(東京・中央)や、全世界で1000万件のダウンロード数を達成したスマートフォンゲームを生み出したトランスリミット(東京・渋谷)などがあります。

 起業家が増えることも大事ですが、木下さんのように、起業家であり、しかも投資家でもあるという人がもっと多くなってほしいと思います。世界で通用する日本発のベンチャー企業を応援する雰囲気が世の中に広がると、ベンチャー企業が社会に与える影響も大きくなるでしょう。

 ベンチャー企業を世界規模で支援する団体もあります。米国の起業家のリンダ・ロッテンバーグさんが1997年に立ち上げたエンデバーです。彼女が起業したときに苦労した経験が原点となっている組織です。

 エンデバーはニューヨークに本拠地があるNPO法人で、現在、27カ国にある50近くの都市に拠点を構えています。メンターとして様々な分野の起業家の悩みを聞き、業務提携先や資金調達先を紹介しています。これまでに約600社、1000人を超える数の起業家を支援してきました。「エンデバーに認められると、VCから投資を受けられるようになる」と言われるぐらいの影響力を持っています。

 このほど、エンデバーの日本での拠点が設立されました。マネックス証券の松本大さんやガンホー・オンライン・エンターテイメントの孫泰蔵さんなど14人の起業家およびエンゼル投資家がボードメンバーとして参画しています。私もその中の1人です。

 私たちは日本のベンチャー企業を世界につなげることを主な目的としています。メンタリングをしたり、海外の大企業とのマッチングの場となるセレクションイベントへの参加を促したりしています。

 起業家は孤独です。特に若い起業家は投資家やパートナーにも相談できないような悩みや課題を抱えていることがよくあります。そうした人たちを側面から支える団体も生まれています。

 ファッション通販サイトを運営する夢展望の会長の岡隆宏さんが設立した「スタートアップ支援協会」です。資金調達や事業パートナーとのトラブルなど、人に相談しにくい悩みの相談に親身に応じる組織です。ベンチャー企業のベテラン経営者がこの組織でメンターを務めています。

 起業家の支援は資金面が大事と一般的に言われています。もちろんそれも重要ですが、悩み事の相談なども含め、起業家が直面するあらゆる課題に対処するエコシステム(生態系)が求められています。社会全体で起業家を応援するようになってほしいと思います。

森川亮(もりかわ・あきら)
 1989年筑波大卒。ソニーなどを経て2003年ハンゲームジャパン(現LINE=ライン)入社、07年社長。15年3月退任、4月C Channelを設立し、代表取締役に就任。

[日経産業新聞2017年6月29日付、日経電子版から転載]

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