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チェック! 今週の日経(24)富士通、携帯事業撤退で進む
「製造業のサービス化」

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック! 今週の日経(24) 富士通、携帯事業撤退で進む「製造業のサービス化」

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は皆さんにとって身近なスマホの話です。かつて、日本の携帯電話で大手メーカーの一角を占めていた富士通が、その事業を売却してしまうというニュースが流れました。

国内市場で縮む日本メーカーのシェア

 8月22日付の日経新聞朝刊1面の準トップにこの記事が掲載されました。

「富士通、携帯電話事業売却へ ファンドなどと交渉」(8月22日)

 スマホの「arrows(アローズ)」ブランドで知られ、携帯電話の国内シェア5位の富士通が、携帯電話事業を売却する方針を固めたという独自ニュースです。国内の携帯電話市場はピークを過ぎて伸び悩んでおり、しかも市場の4割以上、スマホに限れば半分以上を米アップルに握られる一方で、ファーウェイ(華為技術)など中国系企業も攻勢をかけています。こうした状況では、もう利益を生むことはできないと判断したのでしょう。

 富士通の携帯電話は主にNTTドコモ向けでしたが、販売台数はピークだった2011年度の800万台から、今年度は310万台と半分以下になる見通しです。富士通が撤退すれば、もう国内企業でスマホを中心とした携帯電話を製造・販売する企業はソニー、シャープ、京セラの3社だけになってしまいます。2000年代初めには11社もあったのですから、とても厳しい市場だったことが分かりますね。

通信会社頼みに限界があった

 スマホの世界市場ではiPhoneのアップルや韓国のサムスン電子、さらに低価格の中国製品などが覇を競っています。日本企業はもう太刀打ちできず、国内市場に頼るしかないのが現状です。富士通にNEC、日立製作所を加えた3社は、旧日本電信電話公社(現在のNTTグループの前身)へ通信機器を納入していたことから「電電ファミリー」と呼ばれ、携帯電話の時代になってもNTTドコモ向けの製品を多く作っていました。それが、NEC、日立に続いて富士通も撤退することになり、国内の通信会社頼みできた戦略の限界が明らかになりました。

 実は富士通はかつての売り上げの柱だったパソコン事業も、中国のレノボ・グループ(2004年にIBMのパソコン部門を買収した企業)と統合する検討を進めています。そうなると、これからの富士通は何で利益を上げていこうとするのでしょうか。

ITサービス分野の拡大に期待

 富士通の業績は決して悪くありません。今年度上期(4~9月期)の連結営業利益は前年同期より5割ほど増えそうなのです。直接の理由はスマホ向けのLSI(大規模集積回路)などが好調だったからですが、それ以外にも同社の事業構造が大きく変わりつつあることが影響していると考えられます。携帯電話撤退のニュースが流れた日の夕方、日経電子版に次のような解説記事が掲載されていました。

「富士通、脱・汎用品でIT集中 携帯事業売却へ」(8月22日)

富士通のスマートフォン「arrows」

 記事では、富士通はコモディティー(汎用品)化し、価格競争以外には打つ手がなくなった携帯電話事業から手を引き、今後の収益拡大が期待できるITサービス分野の体質強化を図るとありました。同社はすでに売上高(17年度見通しで4兆1000億円)の4分の3をシステム開発やサーバー販売などITサービス分野が占めています。携帯電話やパソコンはすでに15%に過ぎない非中核事業なのですね。

 最近、「製造業のサービス化」という言葉をよく聞きますが、富士通やNECなど通信機器メーカーはまさにこのITサービスで生き残りを図ろうとしています。海外では米GEや欧州のフィリップスなども、従来の製品作りから大きく事業転換し、業績を建て直しています。モノづくりが廃れるかもしれないことには抵抗も感じますが、これが先進国の製造業の新しい姿なのですね。
(研修・解説委員 若林宏)

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