日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

いきなり電話、戸惑う人も
「まずメール派」増える

いきなり電話、戸惑う人も 「まずメール派」増える

 電子メールの普及に伴い、ビジネスの現場で電話のかけ方やタイミングに戸惑う人が増えている。いきなり電話すると相手の負担にならないかという考え方だ。業種によっては電話はほとんど使わずメールなどで済ませる例もある。かける時にはどのような点に注意すればよいか。今どきの電話のマナーを探った。

 マニュアル作成ツール開発のスタディスト(東京・千代田)の豆田裕亮執行役員(39)は自分から仕事の電話をかけることがほとんどない。取引先との連絡はメールのほかフェイスブックなどの交流サイト(SNS)のメッセージアプリ、チャットツールを使う。

 「チャットでやりとりしている時なら、相手の都合も悪くないと分かりアプリで通話もできる。いきなり電話すると、強制的に先方の時間を奪いかねない。集中している時や、大事な打ち合わせの最中だったら申し訳ない」(豆田さん)

業務支援ツール開発のスタディスト(東京都千代田区)では代表電話にかかってきた電話は秘書代行サービスに転送される

 同社では、会社の代表番号にかかってきた電話は全て秘書代行サービスに転送する。かけてきた人や内容はメールで届けられ、優先順位や緊急度によって電話で折り返す。サービスを利用するのは「2010年の設立当時、従業員が少なく電話が鳴ると頻繁に手を止めて出ていた」(豆田さん)という経験があるからだ。

 「電話をかけると相手は仕事を中断しなくてはいけない。迷惑をかけないよう、なるべくメールで連絡するという風潮が高まっている」とマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは指摘する。「昔はすぐ電話をかけていたが、最初の連絡はメールが増えている」

 「メールの浸透で電話の地位が上がった」。こう語るのは「電話応対技能検定(もしもし検定)」を主催する日本電信電話ユーザ協会(東京・千代田)の吉川理恵子技能検定部長だ。「かつては会って話すのがビジネスの主流で(電話は補助的なものであり)『お電話で失礼します』と言うのがマナーだった」。今はメールでまず簡略なやりとりをして、重要で複雑な内容、クレームなどの話は電話を使うようになった。

 電話をかけるハードルが高くなり、メールとの使い分けが重要になっている。仕事先の業種や規模に応じて「相手に合わせて、どのパターンでも対応できるようにしておくことが望ましい」(西出さん)。初対面で名刺交換をする際に、今後のやりとりをどう使い分けると都合がよいか確認し合っておくとスムーズだ。

 では実際に電話する場合はどうすれば相手の負担にならないか。まずメールで連絡するなら、文末に「後ほど詳しくお電話で説明させていただきます」というように、電話するかもしれないことをあらかじめ書き添えておくといい。

 いざ電話をかける時は声のトーンにも気をつける。「トーンは声の表情。忙しい時に申し訳ないという気持ちを込めて話せば、相手には伝わる」(西出さん)。クレームはメールの文章だけではきつく取られてしまうことがある。電話なら声のトーンによって誤解を避けられる。

 電話の役割がより重くなったと受け止める人も少なくないが、「意識が変わっただけであって、電話のマナー自体が変わっているわけではない」(吉川さん)。話の要点をまとめ、簡潔に話す――といったマナーは今も基本だ。

 「メールやSNSなど文字だけで誤解なくやりとりするのは難しい。電話のマナーは覚えておくべき」(吉川さん)。西出さんも「電話をビジネスの基本として押さえておくのは大事」と話す。

電話恐怖症、克服には

 固定電話の減少などで、電話応対をするのに慣れない若者や「電話恐怖症」の人が増えている。2009年に始まった「もしもし検定」は開始から7年で受験者数が17倍の約1万1千人に増えた。電話応対に困っている人が多いことを表している。長年、ビジネスの電話応対教育に携わってきた吉川技能検定部長は、「若い人は固定電話にかかってきた電話で知らない人と話すことに慣れていない。いざ社会人になって電話で話すことに恐怖を感じてしまう」と指摘する。

 会社で電話を受ける時に緊張する人に特に伝えたいのが「電話は相手の話を聞くためのツール」ということ。「話をきちんと聞いていることが伝わればよい。電話で話さなければいけないと思うから怖く感じる」。吉川さんは、相手の用件を復唱し、相づちを打つなどを心がければ、電話応対は怖くないと説く。
(関優子)[日本経済新聞夕刊2017年7月24日付、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>