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激務卒業、週20時間でいい
アクセンチュアの働き方

激務卒業、週20時間でいいアクセンチュアの働き方

 「成長できるし給料もよさそう。しかし、激務に違いない」。外資系コンサルティング会社に憧れる大学生は多いが、ハードワークのイメージゆえに敬遠する人もまた多い。大手コンサルティング会社のアクセンチュア(東京・港)は近年、新卒を積極的に採用する一方、2015年から「働き方改革」に取り組んでいる。この「積極採用」と「働き方改革」はつながっているようだ。ねらいを執行役員の武井章敏人事部長に聞いた。

採用、「デジタル領域」を強化

アクセンチュアの武井章敏人事部長

 ――採用予定数や募集職種は。

 「非公開ですが、数百人規模です。この数年、増やしています。職種は4つです。企業経営の中核に関わる戦略コンサルタントやビジネスコンサルタントと、近年、顧客のニーズにあわせて増やしているデジタルマーケティングや分析にたけたデジタルコンサルタントです。あとは、エンジニア(技術職)ですね」

 ――最近、採用の場面で変わってきたことはありますか。

 「デジタル領域のニーズが高まっているので、その分野を学んでいたり、デジタルへの関心が高かったりする学生を積極的に採用しています。一口にコンサルタントといっても、専門分野が多様化しています。同じIT(情報技術)でも、セキュリティーやクラウドなどで専門性が異なります。また、同じセキュリティーでも金融と消費財の業界では異なる知見が必要になるので、とにかく多様な人材が必要です」

 「首都圏の学生だけでは採用が間に合いません。2017年度から全国の国公立・私立大に足を運んで、説明会をするようになりました。男女の比率も1対1が目標です」

 「あまり多く採用していなかった時代は、いわゆるトップ校の成績優秀な学生を中心に採用していました。しかし、当社の働き方、姿勢、ものの見方と合っていなければ、どれだけ優秀でも力が出せなかったり、成長の実感を得られなかったりするという問題があります」

 ――具体的には、どんな人材を求めているのですか。

 「2年前、それまでアクセンチュアでどういった人材が活躍してきたか、どういった人材を求め続けてきたのかをヒアリングし、抽出したエッセンスを10項目にまとめました。『背伸びをしてでも目標に手を伸ばさずにはいられない』『チームワークの可能性を信じる』などです。これをすべての面接官に配り、採用時のポイントとして伝えています」

時代の変化につれて、多様な人材が必要になっているという

 「特に重要なのは、変化の激しい時代に柔軟についていくような成長意欲やチャレンジ精神です。それを我々は、いきなり高いところを目指すのではなく『常にその一つ上を目指す』といっています」

 「例えば、当社に英語ができないまま入ると苦労します。かといって、英語のできない人を採用しないということは一切ありません。学生なのでコンサルティング業務の本質をわかっているとは思いませんが、それでもコンサルティングの仕事に意欲的な人がいいです。世の中に一石を投じたい、自分がインパクトを与えたい、という人を積極的に採用しています」

思考プロセスとコミュニケーション能力がポイント

 ――選考フローはどういったものですか。

 「エントリーシートの提出と適性検査、グループディスカッションを経て2、3回の面接です。入社4~5年の社員から管理職層まで300人の『先輩社員制度』というリクルーターを組織しています。彼らが自分の母校や出身地の大学を回って選考の説明をしたり、応募を促したりしています」

 ――グループディスカッションは、どんな形式ですか。

 「学生5、6人に対し、面接官が1人です。テーマは『日本にどのくらい駐車場があれば、混雑が緩和するか』『全国のコーヒーショップの販売量はいくらか』など、専門知識は必要ないものです」

 「見ているのは、その人の思考プロセスとコミュニケーション能力です。大局的に見ることができているか、ポイントを押さえているか。たとえば、自動車の例だと、交通量や平日・休日それぞれの駐車場の稼働率といったポイントから、自分なりの考えを導き出すことができるか。もう1つ重要なのは、人の話を聞いているかどうかです。答えが正しくても、ディスカッションできない人はダメです」

 ――インターンシップは実施していますか。選考には、どうつながっていますか。

 「コンサルタントは3日、実際にアプリを作ってもらうエンジニアは5日の日程で行います。コンサルタントは顧客の所に常駐しており、そこで行うのは難しいので、別にプログラムを用意しています。コンサルタントの仕事とは何か、どんな課題に向き合っているのか、その解決のためのプロセスなどを学んでもらいます」

 「入社するのはインターンに参加していない学生のほうが多いですね。ただし、参加者には選考の案内をしています」

働き方改革、社員の意識をどう変えるか

 ――「働き方改革」に積極的です。コンサルタントは激務というイメージですが、なぜ変わったのですか。

 「まず、業務が多岐にわたってきて、多様性のある人材を採用しないと、よい成果が出せなくなってきました。アクセンチュアならではの新しい価値や解決策を提供できるようにしなければなりません。スピードや量の面で他社と競争しようとすると、厳しい戦いになってしまいます」

 「量よりも質や価値を重視するよう変えるには、社員が机にかじりついているのではなく、外で勉強したり、知らない人と会ったりしたほうがいい。専門性を生かして大学で講師をしたり、実家の商売を手伝ったりしている人もいます。『兼業』も認めています。もちろん、家族と過ごす時間も大事にしてほしいです。そこで生産性の向上や働き方改革に取り組むようになったのです」

 ――具体的にどのような対策を取ったのですか。

 「全世界で働く従業員約38万人の知見と事例が集積されたデータベースを作り、社員が自由にアクセスできるツールを整備しました。18時以降の会議も原則禁止し、正社員でも週に20時間以上、週3日勤務も可能、という『短日短時間勤務制度』システムを導入しました。育児や介護、ボランティア活動への参加であればこの制度を申請できます」

 ――これから入社する人はともかく、「ハードワーク」で育ってきた社員は大丈夫ですか。

 「いまだに苦労しています。会社から、ただ『早く帰れ』『働き方を変えろ』といっても変わりません。業務を効率化するツールを提供したり、各部署で成功した事例を社員の見られる共有サイトや社内の壁にはって紹介したり、1、2年かけてやってきました。結果的に1人当たりの売上高が増えて、正のサイクルに変わってくると、何もやってない上司やチームは『まだ何もしてないの』とみられて、肩身が狭くなります。2年目にして、ようやくそういう傾向になってきたなと思います」

 ――「成長期にはもっと働きたい」という若い層もいるのでは?

 「そこは永遠の課題です。現在のマネジャーたちはハードワークで育ってきていますしね。しかし、本当に長い時間働いたから成長したのでしょうか? 『違うよね、様々な経験を積んだからだろう』と。では今、どこで経験を積むのがふさわしいのか、ということです」

 「これだけ情報にあふれ、変化が激しいと、異なる人たちの意見を取り入れないと新しいものは生み出せません。そういう時代ですから、会社で目の前の仕事に没頭することも時には必要ですが、それ以上に幅を広げて多様な経験をしてほしいのです。そのほうが将来の自分の成長にも、さらにはチームの成長にもつながる。そう考えています」
(松本千恵)[日経電子版2017年7月19日付]

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