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野生動物の命、カメラで守れ
キヤノンが保護活動

野生動物の命、カメラで守れ キヤノンが保護活動

 キヤノンがカメラの技術を活用し、生物多様性や環境保全の取り組みを加速している。ネットワークカメラや超高感度カメラを自然生物の保護や森林保全、災害監視などに積極利用。強みとする映像認識や解析技術を生かし、国内外で導入が広がる。グループの事業所内でも導入を進めており、企業の社会的責任(CSR)活動としても自社の製品や技術を生かしている。

南アフリカではサイの密猟を監視

下丸子の本社オフィスに複数台のネットワークカメラを設置し、野鳥やカルガモの観察などに使用している

 東京都大田区にあるキヤノンの下丸子本社。敷地のうち、約3割を緑地帯が占め「下丸子の森」と呼ばれる。敷地内の池には春から夏にかけ野生のカルガモが飛来。子ガモを引き連れ泳ぐ姿は、働く社員の心を癒やしている。そんなカモの成長を見守るのは、池の隣に設置されたネットワークカメラだ。

 カモの観察や生態のチェックに活用。映像はファシリティ管理部門が管理しており、何か異常があった際に、原因究明のためにも役立てているという。同社の事業所にはカルガモのほか、ハヤブサ、ムクドリなど様々な野鳥が飛来する。複数台のネットワークカメラを使い、これらの野鳥を観察する体制を整えている。

 キヤノンでは以前から、生物多様性の保全に向けた取り組みに力を入れてきた。今年からは生物多様性を評価する独自の指標作りを始めた。自社とグループ会社の拠点に飛来する鳥類を観測しデータ化、3年以内に指標を本格運用する考えだ。

 キヤノンの本業はもちろんカメラだ。しかし、消費者向け市場はここ数年、スマートフォン(スマホ)の普及で縮小傾向にある。そんな環境下で、ネットワークカメラは成長事業の一つ。2015年には監視カメラ世界大手、スウェーデンのアクシス・コミュニケーションズを買収。現在、キヤノンとアクシスのダブルブランドで世界展開している。

春から夏にかけ、下丸子の本社オフィスに野生のカルガモが飛来する

 世界中で発生するテロへの対策や、マーケティング用途として注目が集まるネットワークカメラ。しかし、キヤノンでは生態系の調査やモニタリングなど、生物多様性や環境保全への取り組みとしても活用できると考える。米国バージニア州にある野生動物のリハビリテーション病院では、負傷した野鳥の観察や診断にアクシスのネットワークカメラを利用。ハゲワシやクマなどを観察した映像を放送する独自のチャンネルも開設し、映像を一般に公開している。

 南アフリカではサイの密猟を防ぐために、ネットワークカメラを利用。画像認識技術で不審者を認識、スピーカーで警告を発するなど、最新の技術を駆使してサイを守っている。

災害調査や救助にも 日本ではドローンと組み合わせ

 気候変動による自然災害の発生が世界的に深刻になるなか、災害監視や救助としても有効だ。毎年台風や豪雨による洪水の被害によって農作物の被害が発生する台湾では、アクシスのネットワークカメラが活躍している。南西海岸線エリアを中心に150カ所にカメラを設置。水位の変化を360度、24時間監視し、洪水警戒レベルを観測すると自動で緊急アラームを発信する。

 海外だけではない。国内ではキヤノンマーケティングジャパン(MJ)が中心となり、高感度カメラとドローン(小型無人機)を組み合わせた製品を販売する。夜間でも被写体を認識できる感度の高さが強みで、夜間に洪水や津波が発生した際でも、空から被災状況の確認や捜索活動ができる。

 人工知能(AI)を使った画像認識や、セキュアな環境下でのネットワーク接続、半導体の性能向上など、様々な技術の発展によって、カメラの利用用途は「撮る」だけではなくなっている。消費者向け市場が落ち込む一方で、ネットワークカメラの利用用途は拡大している。新たな用途として「環境保全」や「自然災害対策」での活用も広げていきたい考えだ。
(企業報道部 斉藤美保)[日経電子版2017年7月25日付]

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