「ピーマン調理するように」 政治、わかりやすく発信
学生メディア 世界を駆ける(1)
はじめまして。古井康介と申します。若者にわかりやすく政治を伝えたい。そんな思いでメディアと教育の2事業を行っている学生のチームPOTETO(ぽてと)を運営しています。政治は栄養価は高いけど、ちょっと食べるには苦い、嫌われ者のピーマンのようなものです。ピーマン嫌いの人においしくピーマンを食べてもらうように、政治嫌いの人に興味を持って政治を理解してもらうにはどうしたらいいんだろう。そんなことを考えて活動しています。
と、言ったところで「お前誰やねん?」という声が聞こえてきますね。そこで、この連載、まず第1回は「POTETOとは」「古井康介とは」について簡単にまとめさせていただきます。「興味ないわ!」という方は是非、第2回からご覧ください。
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僕らが運営しているチーム、POTETOとは「政治をわかりやすく伝える学生のチーム」です。主な活動は2つ。1つ目は情報摂取のメインステージである「メディア」に関する事業。2つ目は半ば強制的に何かを教わる場である「教育」に関する事業です。
メディアの方では、TwitterやYoutubeを中心にわかりやすく、ユーモラスに政治に関するコンテンツを発信しています。大好きなマクドナルドのポテトにちなんで、3つのサイズのコンテンツを発信していることが特徴です。
Sサイズのコンテンツでは、その日のホットなニュースをどこよりも分かりやすく、身近な言葉でスライドにまとめて発信しています。「新聞は読まなきゃいけないと思っている、でもなかなか読むのは億劫だ」そんな僕のような学生の皆さん向けにTwitterで毎朝発信しているスライドは、1日20,000人の方が見てくれています。いつもありがとうございます。
Mサイズのコンテンツでは、1週間のニュースまとめ記事を発信しています。スライドと140字程度の文章でまとめた記事は、例えば就活の面接対策用のコンテンツとして就活生向けメディアにも転載させていただいています。
Lサイズのコンテンツでは、その時々の大きなトピックを動画や記事にまとめて発信しています。トランプ米大統領のロシアとの関係疑惑を海外テレビドラマ風にまとめた小説。はたまたTPP(環太平洋経済連携協定)について解説したアニメーション動画(https://www.youtube.com/watch?v=z76dwMu1_Qk)などです。この辺りは毎日、模索の繰り返しです。
出前授業も
教育では、「生の政治」を扱うことにこだわった出前授業を実施しています。主権者教育の必要性が説かれる中で、その授業形態は架空の候補者や社会問題をテーマにした模擬投票が主流になってきました。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか。実際に世の中で何が起きているのか、何が問題となっているのか、その背景は何なのか、そんなことを知らないまま、そして知る方法を知らされないまま社会に放り出されても、「主権者」として主体的な判断をすることは難しいと思っています。
POTETOは、メディア事業部の「新聞のまとめ」を授業の題材とすることで、いま世の中でなにが起きているのか、大人たちは何を考え、何でもめているのかを学ぶことのできる授業を作成しています。また、オリジナルのゲームやTwitterを用いることで、生徒が主体的に授業に参加できるよう工夫しています。
今夏、述べ1000名以上の高校生に対して、難民や都議会選の授業を届けてきました。
そんなメディアや教育の事業の共通点は「ピーマン嫌いにおいしくピーマンを食べてもらうように、政治嫌いにも興味をもって政治を理解してもらいたい」と考えていることです。世の中の政治を扱ったメディアは、新聞から大きなWebメディアまで、政治の難しい話を、難しい言葉のまま、長すぎる文章で書き連ねているものばかりです。また、18歳選挙権を皮切りに広がった主権者教育(政治や選挙の出前授業)も、選挙管理委員会のオジサンが冗長なご講演をするものばかり。いかにピーマンの栄養素が高いからといって、ピーマンの価値の高さばかり語っていても誰も食べやしません。いかに自分たちがピーマンをおいしいと思うからといって、調理もせずに出したものを食べる気に何てなりません。
僕らは、ピーマンを細かく刻んでハンバーグに入れ見えなくしてしまうことや、砂糖を混ぜてジュースにすることで形を変え、別の要素を混ぜ込むことなどをします。オトナにしかわからないピーマンの美味しさを押し付けず、ちゃんと調理方法を考えることを、大切にしています。
もちろん、右から左まですべての事象を並べて扱うことで、中立の立場を貫くことも意識しています(と、こんな注意書きをいちいち書かなくてもいい世の中になってほしいですね)。
政治のおかげで進学
そんなPOTETOでリーダーをさせてもらっています、富山生まれの慶応義塾大学4年生です。両親は自営業を営んでいたため、不安定な家計の中で育ててもらいました。
特に、リーマン・ショックのあとは家にお金がない、塾や部活など周りのみんなが当たり前のようにやっていることが当たり前にできない......。そんな状況に悩むこともありました。仕送り無しでの上京中、住んでいた寮がつぶれる時には引っ越しの初期費用が用意できず「ホームレス」になったことも。
さてさて、しかしそんな僕が、それでも第一志望の慶応大学に進学でき、今卒業を目前に控えていられるのは、やっぱり奨学金や就学援助といった政治の助けがあったからだと、割とガチで思っています。何やらグローバル化や情報化で、いつ困りごとのさなかに放り込まれるかわからない現代です。政治や社会が嫌いだからって、人任せにしておくと、いつか自分にとって困った状態になったときに、どうしようもなくなるかもしれません。2人の弟が、お金を理由に大学進学をあきらめるマインドになっているのを見た瞬間、僕はとても大きなショックを受けました。傍から見ているとそうでもないことって、当事者からすると「のっぴきならない」ものだと思います。
そんな経験があったからこそ、ウザイと思われようが、僕はピーマン嫌いにもなんとかピーマンを食べてほしい。そう思って、今日も調理法を考えながらパソコンに向き合っています。
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慶応義塾大学経済学部4年。POTETO代表。大学では社会政策を専攻。若者と政治を繋げるNPO法人の現場統括として年間50コマ10000人に主権者教育の出前授業を開発/実施。また、ライターとしてYahoo!ニュースなど各種メディアで発信。富山から東京へ、東京からNY・パリへ、祭囃子に誘われてどこにでも足を運びます。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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