日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

サッポロビール
終業~始業に11時間の休息

サッポロビール 終業~始業に11時間の休息

 深夜まで続いた接待の翌朝、疲れを残したまま業務に入る――。サッポロビールは長時間労働に陥りがちな営業担当の労働環境改善に向け、終業から始業までに一定の休息時間を義務付ける「インターバル制度」を導入した。社内で制度化することで取引先の理解も促す。休息時間は国内では8時間程度が多いとされるが、11時間とした。

サッポロビールは営業現場の効率向上を目指す(小売店で営業活動をする同社社員)

 6月から試験運用している。対象は飲食店向けなどの業務用営業を担当する東京中央支社、東京東支社の2カ所。両支店とも10人程度の営業担当から成る。

 午後11時まで仕事をした場合、翌朝の始業時刻は午前10時だ。「それ以前の出勤は上司の許可制としているが、よほどの事情がない限り認めないようにした」(同社人事部の宮崎仁雄労政グループリーダー)

 業務用営業にとっての取引先は、飲食店に酒類を販売する酒販店や卸売店。そうした得意先と関係を深めるための懇親会は、お酒も入って夜遅くなりがちだ。翌朝の取引先の朝礼出席や作業に影響が出る場合もある。

 宮崎氏は「単純な労働時間削減が目的ではない」と述べる。試験運用に際しては、人事や経営戦略などの役員が各支社を回って趣旨を説明。ムダな業務の洗い出しを呼びかけた。人員増など効率化のために必要なコストもかける方針で臨んでいるという。

 また、制度については「取引先の理解を得ることを徹底した」(宮崎氏)。各営業担当者が自ら取引先を回り、書面や口頭でインターバル制度の意義を説明した。働き方改革の意識が広がっていることもあり、取引先にもおおむね理解してもらえたという。

 成果は上がっている。これまでは懇親会の際、1次会の後に2次会を催すことが多かったが、そうした動きが減った。

 両支社の営業担当からは、「翌朝の業務がはかどるようになった」(東京中央支社の30代男性社員)、「プライベートの時間を確保できるようになり、スケジュールが立てやすくなった」(東京東支社の30代男性社員)といった声が出た。

 また、「時間に対する意識が高くなり、時間内の業務完了を目指すようになった」(東京東支社の40代男性社員)とも。

 宮崎氏は「生み出した時間を新たな成果につなげてもらいたい」と制度の効能に期待する。

 運用面でも工夫を凝らす。翌日の出社時間を無料対話アプリのLINEを使って共有するようにした。また、メインとサブの担当を定めるチーム制の導入も導入した。どうしても会合が深夜に長引いたり、翌朝の業務が外せなかったりする場合は、サブの担当が対応できるようにしたのだ。

 これらの取り組みにより「今のところ11時間の休息は守られている」(宮崎氏)。

 インターバル制度は、国内ではKDDIやユニ・チャームなどが導入した前例がある。国内の導入企業は8時間以上が多いとされる。欧州連合(EU)では加盟国に11時間の確保を義務付けており、サッポロビールも欧州の水準に踏み込んだ。

 懇親会など取引先との付き合いは、どこまでの範囲が適正か、線引きが難しい面もある。ただ、長時間に及ぶ場合は、業界や営業担当のイメージ悪化や、癒着の温床にもなりかねなかった。

 同業他社ではキリンホールディングスも2018年から国内の事業会社で、11時間のインターバル制度導入を計画している。同社で人事を担当する三好敏也取締役は「働き方を変えるには、ルール上の制限を設ける方法も必要だ」と語る。

 製薬業界では自主規制によって医薬情報担当者(MR)の接待を原則として廃止にした。今回のインターバル制度が飲料業界にとっても、業界を挙げた構造改革第一歩となるかもしれない。
(企業報道部 朝田賢治)[日経産業新聞2017年7月4日付、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>