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[ career-働き方 ]

お悩み解決!就活探偵団2018「やっぱり外資」 
日本企業をあきらめる学生たち

authored by 就活探偵団'18
お悩み解決!就活探偵団2018 「やっぱり外資」 日本企業をあきらめる学生たち

 「グローバルに活躍したい」「自分の実力を磨きたい」――。コンサルティング会社や投資銀行などの外資系企業は、キャリア意識の高い学生たちに依然として人気が高い。こうした学生は、日本企業も欲しがるグローバル人材の卵だが、なぜ外資系に流れてしまうのか。

外資系就労者は100人に1人

イラスト=篠原真紀

 一口に「外資系」といっても種類はさまざま。海外企業が日本につくった子会社や日本企業との合弁会社、また買収された日本企業もそう呼ばれることがある。総務省が発表した「外資系企業動向調査」によると、外資系企業で働く社員は62.4万人。自営業を除く日本の就業者は約5848万人(総務省調べ)だから、100人に1人という少数派だといえる。

 外資系企業への就活情報サイトを運営する「ワンキャリア」(東京・渋谷)の推計によると、外資系企業が採用する人数は、毎年最大でも5000人。「新卒の募集人員も当然、就労人口に比例する」(同社の北野唯我執行役員)。民間企業就職希望者数、42.3万人(リクルートワークス研究所)からみるとかなり狭き門だ。

 その中でも人気なのが、「外銀」や「外コン」と呼ばれるコンサルティング会社や投資銀行などだ。ワンキャリアが今年5月に2019年度に卒業する東大・京大生450人を対象に実施した人気企業ランキングを見てみよう。

東大生、京大生が就職したい企業ランキング(ワンキャリア調べ)

 マッキンゼー・アンド・カンパニーや、ボストンコンサルティンググループ、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど、コンサルティング会社や投資銀行が上位を占めている。上位10社に日本企業は2社しかない。

 「就活は2年生の3月から始めました」。都内の国立大4年の女子学生、Aさんは2月に大手外資系投資銀行に内定をもらい、来年春から入社する。経団連加盟企業が定めている2018年卒の採用活動解禁日は今年3月1日。Aさんは2年前からスタートしていたことになる。

 慶応大4年女子のBさんは3年生の夏に米国留学から帰国。英語を生かし翌年春までに外資系投資銀行2社から内定をもらい、最初にインターンに参加した会社に決めた。就活情報の取得ルートも違う。「リクナビやマイナビなどの大手就活サイトだと外資系の採用情報は分からない。専門の情報サイトを使っていた」という。

「実力主義」と「スピード」

 ワンキャリアの北野氏は、外資系企業をめざす学生の動機を2つに類別している。一つは「実力主義」だ。「実力次第では、20代でもパートナー(役員)になって数千万の年収を得ることも不可能じゃない」(北野氏)。そこまでのスピード出世でなくとも30代前半で1500万円の年収は十分に見込めるという。

 米国留学を経て今年、都内の国立大大学院を卒業する男子学生、Cさんは、大手シンクタンクと外資系コンサルの両方から内定をもらい、悩んだ末、後者を選んだ。大手シンクタンクもエリート集団で知られるが、先輩からの話を聞くうちに考えが変わった。

「実力主義」と「スピード」。学生が外資系をめざす動機は2つある、と北野氏

 「自分より働いていないのに入社が早い、というだけで年収が高い人がいるのは我慢できないと思った」。働かないのに給与をもらう社員がいれば、自分のモチベーションが下がる。実績を出せなければ最悪解雇されるリスクは日本企業よりも高いが、「納得できるかどうか」を選んだ。

 公平性や透明性に敏感なのは、外資を選ぶ人々の特徴かもしれない。日本の大手金融会社を辞めて外資系コンサルに移った30代の男性、Dさんも「日系企業にいたときは、仕事中に何をしているかわからない『フリーライダー』がいた。今の会社でそれはない」と断言する。ただし、他人に厳しい分、自分にもシビアで「一定期間に到達するように定められたグレードにいけなければ、他の会社を選ぶことになる」と話す。

 もう一つの動機は「スピード」。なるべく早く、自分の能力を発揮できる環境に身を置きたい――こうした意識は、結婚や出産でキャリアが分断されやすい女性に強い。慶応大4年のBさんは「出産するかどうかわからないけれど、休んだあとに復帰してもすぐに必要とされるプロフェッショナルなスキルを若いうちに身につけたい」と話す。

 配属や研修、総合職採用などの日本企業の慣習も、彼らにとってはスピード感を損なう弊害に映る。「この部署で働き続けられるか、自分の都合だけで決められない」(Bさん)ことが納得できない。「まず現場の営業から」「半年間はまず工場研修」といった「研修期間」が長くなると、「早く自分の専門スキルを身につけたい」という思いがかなえられず、早々に離職につながってしまう。外資系の場合、入社する配属先どころか、そこで一緒に働く同僚も入社前から分かっているケースが多い。

英語も、使うチャンスがなければ

 こうした価値観に「まだ実際に入社して働いてもいないのに」と眉をひそめる人事担当者もいるだろう。ただ、彼、彼女らが外資系を選ぶのは、そのブランド力にひかれてだけではない。日本企業の実際の採用現場で経験した幻滅・失望が影を落としている。

 慶応大4年の女子学生、Eさんは、国内の大手インフラ会社のほか、外資系コンサルなど4社の就活を進めていた。「最初は日本企業もいいと思っていた」が、面接や説明会を通して外資系に行くことに決めた。

新卒で「外資系企業」を選んだ女子大生たち

 「日本企業は、女性がバリバリ働くことをよしとしない空気がみなぎっていた。採用担当者や社員以上に、同じ就活生の男子学生にそういう人が多くて、すごく嫌だった」。会社そのものには、興味はあっても、将来一緒に働くであろう仲間に失望を感じた。彼らを引き込む雰囲気がその会社にあったのかもしれない。

 早稲田大学キャリアセンター長の佐々木ひとみ氏は、「外資系志望の学生たちは、海外生活を経験している人が多く、日本企業の製品の良さや知名度をよくわかっている。しかし、いざ就活になると価値観の違いに直面する」と指摘する。ワンキャリアの北野氏のところには、こうした悩みが多く寄せられる。「総合職で受けているのに、気を使ってなのか女性だからと(転勤のない)地域限定職も紹介されるようなケースを、今年もちらほら聞いた」という。

 外資系企業で力を発揮する英語力も、日本企業で宝の持ち腐れになるケースが多い。海外の大学院を卒業後、新卒で大手教育関連企業に入社した30代の男性Fさんは、「英語力が強みになると、人事にも口説かれて英語の商品を国内向けに販売する部署に配属された。しかし、実態は海外とのやりとりもなく、グローバルな環境ではなかった」という。彼はその後、ふたたび海外に向かった。

 入社試験で「外資系は競争が激しいが、うちなら海外で活躍できる」と人事担当者に口説かれても、「数年間は国内で修業してから」と順番待ちにあったり、翻訳の仕事をただ押しつけられたり、といったケースは後を絶たない。

埋まらないニーズの格差

 グローバルな人材を採用したいという日本企業の思いは年々強くなっている。大阪大、国際教養大(秋田市)、早稲田大などは東京で7月17日、大阪で同18日、留学帰国生を対象にした合同会社説明会を開催した。就活で競合しやすい大学同士が手を組んで、企業の求人ニーズに応えた形だ。

 参加企業は、グーグルやボストンコンサルティンググループなどの外資に加え、新日鉄住金や全日本空輸など、国内の大手人気企業が顔をそろえた。参加した学生は、東京・大阪あわせて300人あまり。「参加学生の数こそ少ないが、会いたい学生に会えた、と企業側の満足度は高かった」(早稲田大学の佐々木氏)という。企業が求めるグローバル人材と、外資をねらう就活生の像はぴたりと重なるのだ。

 だが、この限られた学生たちが日本企業を「ファーストキャリア」として選ばない現実がある。「働き方改革」で、企業は長時間労働の改善や、育児環境の整備を進めるが、外資系に流れる学生たちが取材で口々に求めたものはそれとは違った。プロになるための成長環境と、実力さえあれば評価される透明性の高い昇進・昇格制度だ。双方のニーズの格差はなかなか埋まらない。
(松本千恵、夏目祐介)[日経電子版2017年8月3日付]

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