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チェック!今週の日経(25)キヤノンが国内に新工場
「生産回帰」で日本のものづくりが復権?

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック!今週の日経(25) キヤノンが国内に新工場 「生産回帰」で日本のものづくりが復権?

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は製造業をめぐるニュースを取り上げてみましょう。自動車、電機、精密機器......日本の製造業はここ30年ほど海外生産を広げ、グローバル市場で戦ってきました。今回取り上げるのは、その反対の動きです。

キヤノンが国内で工場新設

記事
8月31日朝刊

 8月31日の朝刊1面に次のようなニュースが掲載されました。

キヤノン、国内にデジカメ新工場 生産回帰進める(8月31日)

 キヤノンが宮崎県に新たに土地を取得してデジタルカメラの生産工場を新設する動きを報じたニュースです。キーワードは、見出しにもある通り「生産回帰」。ものづくり大国ともいわれた日本は中国や東南アジアの新興国の台頭で、すっかりその地位を明け渡し、日本企業自体も海外生産を進めることで海外でのコスト競争力を高めてグローバル市場で生き残るというのが近年の構図でした。ですから、みなさんがメーカーと思って就職を考えても、その企業に国内の工場はないというケースも多くなっていると思います。その現象は「産業空洞化」というキーワードでも語られ、日本が得意としていたものづくりの伝統が次第に顧みられなくなり、技術の継承や発展ができなくなってしまうという悲観的な見方もされるようになっていました。

 しかし、このところキヤノンのように日本で生産を拡充する動きが目に付くようになっています。記事によれば、キヤノンが「生産回帰」を鮮明にし始めたのは3年前。アジアでの人件費の上昇が大きな背景です。これに加えて自動化ラインの導入で人手のかからない生産技術の革新が進み、生産拠点の立地を決める条件として、人件費を考慮する度合いが低くなっているのです。当初予定しているのは宮崎県の別の工場で生産している一眼レフカメラの移管ですが、今後は海外で生産している一部コンパクトカメラの生産移管も検討しているとこの記事は伝えています。

逆輸入品は13%も減少

記事2
8月24日朝刊

 生産回帰の動きはキヤノンに限ったことではありません。マクロデータからこの傾向を読み解いた記事も紹介しておきましょう。8月24日付1面トップの記事です。

家電や日用品、国内生産回帰じわり 逆輸入、1年半で13%減 アジアで人件費増(8月24日)

 こちらの記事では、日本企業が海外の現地法人から輸入する製品の金額に注目、1年半前に比べて13%も減っていることを明らかにしています。要因はやはり中国、アジアでの人件費の上昇との分析で、中国の主要都市の一般工の月給が5年で2~3割上がったという状況が紹介されています。関連記事の「きょうのことば 中国の人件費上昇 人材確保へ最低賃金上げ」では、月給をドル換算した絶対額は日本が2000ドル超なのに対し、中国で一番高い北京でも600ドル超と大きな開きがありますが、生産性も加味した単位労働コストでは、中国の方が日本より3割高いという試算もあると指摘しています。アジアの中でコスト的に最適な工場立地を比較検討した結果、日本で生産した方が有利というのが生産回帰現象の背景となっているわけです。

 逆輸入の増加額の6割を占めるのが電機製品。この記事では、JVCケンウッドがほぼ全量海外生産だったカーナビの生産の一部を、長野県に移した動きが紹介されています。ほかにも、キヤノンの記事では、同じくカーナビの生産の一部をタイから青森県内の製造拠点へ移管したパイオニアのケースや山形に新工場を建設中のカシオ計算機のケースも取り上げています。電機製品以外に安価な日用品でも、100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業が「雑貨はほどんどが海外品だったが、国内品を増やしていく」という方針を示すなど、国内生産に目が向き始めているようです。

 生産が戻ってくるということは、それに伴う投資も国内で行われることになり、日本経済全体への波及効果はより大きくなっていきます。空洞化論議のときは新たな投資が国内で進まずに設備の老朽化が進み、生産効率の点でも海外に遅れを取るという問題点も指摘されていましたが、生産回帰が進めば、若々しい設備で効率の良い生産体制が国内に生まれ、それがさらなる競争力を生むという好循環が期待できます。すべてのモノがインターネットにつながるIoT時代の入り口で生産回帰が進む現状は、次の時代につながる製造業の復権への序章となりそうです。

(企画委員 水柿武志)

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