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[ career-働き方 ]

就職の機会、人生一度じゃない 
ヤフーの若手採用

就職の機会、人生一度じゃない ヤフーの若手採用

 新卒一括採用を改め、2016年10月から「ポテンシャル採用」を導入したヤフー。応募時に30歳以下なら、大学の新卒・既卒を問わず、本人のキャリアよりもポテンシャル(潜在的な能力)で評価し、採用を決める。応募者の過去の経験をじっくり聞き、「ヤフーで幸せになれる」人材を探しているという。ポテンシャル採用の現状をクリエイター人財戦略室戦略部の金谷俊樹部長に聞いた。

応募、自分の都合のいい時期でいい

ヤフーのクリエイター人財戦略室戦略部の金谷俊樹部長

 ――ポテンシャル採用の効果は出ていますか。

 「うまくいっている点、いっていない点、両方あります。よかったのは、応募者の幅が広がったことです。ポテンシャル採用では新規学卒者の入社時期を4月、10月と明記しています。日本とは卒業時期が異なる海外の大学に留学している学生から関心を持ってもらえました。応募時に30歳以下なら転職でも本人の過去の職務経験を問わない『ポテンシャル』を見て選考するので、第二新卒や既卒の応募もあります。高校生の応募もありました」

 「就職の機会は人生1回きりでいいのか、という問題意識をずっと持っていました。新卒の就活で一度挑戦して失敗したらもうチャンスがないのはおかしいと思い、この状況を是正したかったのです。ポテンシャル採用は、その解決にうまく結びついていると実感しており、この点は狙いどおりです」

 「一方、うまくいっていないと感じるのは、思った以上に型にはまった考えの人が多かったところです。ポテンシャル採用では応募時期を特に決めていません。ですが、3月の説明会開始、6月の選考解禁というルールを意識する人が多く、『いつ応募すればいいですか』という問い合わせが多いです」

 「そういう人には、いつでもいいと根気強く説明しています。例えば、夏は学会シーズンで忙しいのなら、終わった後や忙しくなる前など、都合がいい時期に応募してくれればいいのです。応募者の気持ちも分かります。私たちもパーティーで服装自由と言われれば、どんな格好をするか悩みますよね。それと同じで、好きなときに応募というのは、人を悩ませてしまうんだなと感じています」

 「『いつ応募するのが得ですか』と聞かれることもあります。月ごとにこれくらい応募があるだろうという予想に基づいて採用しているので、早ければ通過しやすいとか、遅いと枠が狭まるというようなことはありません」

アーティストは必要ない

 ――どんな人材を採用したいですか。

 「一言で言うなら、ヤフーで幸せになれる人です。(1)自らを律し、自立しており、『圧倒的当事者意識』や『やりぬく』といったヤフーバリューを体現できる人(2)本人のやりたいことなどを含めてヤフーと重なる部分が大きい人――が2つの柱です。『こういうことをして評価されたい』という本人の考えが、ヤフーでの評価と一致していないと幸せになるのは難しいと思います」

ヤフー本社が入居する東京・紀尾井町のビル

 「例えばデザイナー職であれば、ヤフーではアーティスティックなものは求めていません。アートは共感できる人の心には深く刺さりますが、ヤフーでは万人受けするものが必要です。ユーザーに正しく、わかりやすい情報を伝える方が重要だからです。エンジニアの場合、1人で黙々とプログラミングしていたいというのでは、大きな仕事はできません。ヤフーにはエンジニアとデザイナー合わせて2500人おり、力を合わせて大きな仕事をすることが求められます」

「みんなの課題」解決した学生を採用

 ――求める人材をどうやって見極めるのですか。

 「その人の過去の経験を徹底して聞きます。ポテンシャルを評価するというのは、過去の経験と行動から予見できる、入社後の活躍を見ることです。この経験というのは、ヤフーでの仕事と重なっている必要はありません。その人が何をモチベーションとして行動してきたか、何をどのようにやり遂げたかなどが大事です」

 ――面接した学生で印象に残っている人はいますか。

 「小学生のころからプログラミングに興味を持っているという学生がいました。その学生の大学では駅からスクールバスが出ており、他の学生たちは皆、スマートフォン(スマホ)で時刻表の写真を撮って確認していたそうです。その学生は、それを見てみんな困っているんだなと思い、次のバスが出発するまでの時間をカウントダウン方式で表示するアプリを開発したそうです。アプリはあっという間に学内で広まり、学生の8割が利用していると言っていました」

 「この学生は、自分で課題を見つけ、自分の力を使って解決した実績がありました。彼の興味は課題解決にあり、利用者数が増えることをモチベーションとしているのが分かりました。彼ならヤフーでもっと大きな仕事をしてくれるだろうと考え、採用しました」

グーグルより優秀な人材は

 ――大手企業の選考が一服した6月以降も優秀な学生は集まっていますか。

 「研究が忙しく、6月までに就活ができなかった学生や海外留学で国内にいなかった学生などが応募してくれています。もちろん、経団連企業の採用活動が解禁される前の早い時期にも、強い入社の意志を持つ学生が多く応募してくれました」

 ――グーグルよりよい人材を採用できていますか。

 「我々の評価基準に照らせば『YES』です。彼らも、彼らの基準でYESと答えるでしょう。基準が変われば評価は変わるので、どのIT(情報技術)企業に聞いても『一番優秀な学生を採用できた』というのではないでしょうか」
(桜井豪)[日経電子版2017年7月26日付]

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