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お悩み解決!就活探偵団2018日本のシューカツここが変
外国人留学生vs企業

authored by 就活探偵団'18
お悩み解決!就活探偵団2018 日本のシューカツここが変 外国人留学生vs企業

 経済のグローバル化が加速する中、日本で学ぶ外国人留学生に企業はきちんと門戸を開いているのか。経済産業省などの調査によると、外国人留学生の7割が日本での就職を希望しながら、実際に就職できるのは3割にとどまるという。今回は外国人留学生に集まってもらい、日本企業の人事担当者を質問攻めにしてもらった。

なぜ新卒一括採用なの

イラスト=篠原真紀

 趙賢昶さん(韓国) 「日本企業はなぜ新卒学生を一括採用するのでしょうか。多くの企業が『外国人を採用して多様性を高める』と表明していながら、留学生に対しても日本人と同じように、リクナビやマイナビといった就活サイト経由でエントリーを求めます。採用方法が型にはまっていることに矛盾を感じます」

 大手メーカー人事のAさん 「日本では古くから、各企業が、入社後に社員を育てる伝統があります。だから入社時の資格や語学力以上に、一緒に働きたい人かどうかを重要視するのです。いわゆるポテンシャル採用です。入社後に伸びそうな人材の奪い合いですので、ルールを決めなければ、採用活動がどんどん早まるなど歯止めがきかなくなってしまいますからね」

 広告大手のBさん「そうなんです。だから新卒で何百人も確保しなければならないので仕方ないんですよ。とにかく量をさばかなくてはいけません。多様性を求めるといいながら、採用方法が画一的な場合が多いです。ただ企業によっては、留学生向けに別の採用方法を設けていることもある。留学生の皆さんは、それを見極めてほしいですね」

日本の就活は画一的と感じる一方、韓国に比べると公平だとの声も=中国の王さん(左)と韓国の趙さん

 趙さん 「ある化粧品会社では、1次面接のあとに『別枠で話をしませんか』とリクルーターから話がありました。あらかじめ『ツバをつける』ようなことが本当にあるのだと驚きました。就活にも本音と建前があるんですか」

 保険大手のDさん 「経団連に加盟する企業は、面接解禁日が決まっています。就活が学業の妨げにならないようにするためです。しかし一括採用という日本の伝統的な雇用の仕組みの中で、新卒学生を一気に採用しなければならない。表向きは決まりを守っていると言っていても、実際は早くから学生を囲い込む企業があるのが現状です」

 旅行代理店のCさん 「学生の大半は就活時期になって初めて、自分がどういう仕事に興味があるかを考えます。決まった採用時期があることで、学生にとっては将来を考えるきっかけにもなっているでしょう」

 王歓さん(中国) 「確かに私は就活を通じて自分の幼少期から現在までを振り返りました。意味のある機会だったと思います」

日本人と同じウェブテストはきつい

エントリーシートなど日本独特の就活システムは、欧米からの留学生には奇異に見える(左から、米国のジョーダンさん、ロシアのアンナさん、イタリアのエドリスさん)

 カラチコバ・アンナさん(ロシア) 「ロシアでは日本のように時期に決まりはなく、大学卒業後、好きなタイミングで企業に応募します。日本と同じで、大学での専攻と就職する業種は結びついてはいません」

 趙さん 「韓国の就活は厳しいです。学歴が重要なため大学受験から競争が始まり、学歴で就職先の序列が決まっている面もあります。私が日本の大学に来たのは日本のほうが就職しやすいからです。日本の就活はウェブテストや面接対策など、準備次第である程度勝負できるのでフェアだと感じています」

 王さん 「確かにそうですが、なぜウェブテストは留学生も日本人と同じ問題なのでしょうか。短時間で多くの問題を解くのは難しいです。せっかくエントリーシートが通っても、テストで落ちて面接を受けられないのは悔しいです。そもそもなぜウェブテストをやっているのですか」

 保険Dさん 「当社には約2万人の学生がエントリーするため、ウェブテストである程度絞り込まなくてはならないのです。業務では日本語能力も必要ですし、エントリーシートだけでは実力が測れないのです。そのための試験なんですよ」

 旅行代理店Cさん 「うちでもペーパーテストを実施していますが、予備選抜が目的ではありません。エントリーシートと合わせて総合的に書類選考の材料にしています。科目には英語もあり、留学生の中には飛び抜けて点数が高い人もいます。幅広い分野をテストしているので、有利や不利があまりないと思っていますよ」

 アンナさん 「私は母国で大学を卒業して、今は東京にある日本語学校に通っています。ズバリ日本での就職は可能なのでしょうか」

日本で働きたいという意欲に日本企業は応えられているだろうか

 保険Dさん 「もちろんできます。ほとんどの会社は問題ないでしょう」

 ライーミ・エドリスさん(イタリア) 「私は39歳で若くないですが、就職できるのでしょうか」

 メーカーAさん 「一般論ですが、新卒採用としては問題になるでしょう。なぜなら日本の会社は若い人を雇って育成することを前提としているから。ただしスキルがあれば年齢は関係ありません。イタリア語も立派なスキルで、探している企業は必ずあるでしょう。新卒採用か、中途採用かで、その後のチャンスに変わりはないと思いますよ」

長髪・タトゥーでも大丈夫?

 グレイナー・ジョーダンさん(米国) 「米国では、リクルートスーツを着て就活することはほとんどありません。なぜ、みんなスーツを着るのでしょうか」

 旅行代理店Cさん 「当社は、クールビズ、ビジネスカジュアルでいいと言っています。女性ならノースリーブなど、極端にくだけていなければいいです」

 メーカーAさん 「受ける会社の顧客が『社員はビジネススーツを着るべきだ』と考えている業種もあるからでしょう。また面接にふさわしい私服を選ぶのが面倒だと考える学生もいるようです。当社では、服装に関して何も言っていないですが、自然とみな真っ黒になりますね(笑)」

 趙さん 「日本には、目立たないことをよしとする文化があると感じています。日本の就活生がスーツを着るのはまさにそれなのでしょう。就活ではやはり目立たないほうが好印象なのでしょうか」

 旅行代理店Cさん 「目立つかどうかよりも、ビジネスにふさわしいかどうかの観点です。顧客に不快な思いをさせてはならないのです。リクルートスーツ着用の指定はありませんが、服装も評価対象の一つになりえます」

 ジョーダンさん 「僕は長髪でタトゥーも入れていますが、このまま面接に入っても大丈夫なのでしょうか」

人事担当者は外国人留学生の鋭い質問に戸惑いながらも、率直に語ってくれた

 人事一同 「うーん...(沈黙)」

 メーカーAさん 「正直、客商売の業種だと、『ごめんなさい』と落とされる確率が高いです。ですが、社内で仕事をすることが多いようなクリエーティブな職種なら問題ないのかも」

 広告大手Bさん 「何かしらで目立たないと受からないと思います。ただしそれが服装なのか、勉強してきたことなのか、自分の性格なのかは別です。トータルでの自己プロデュースが大事でしょう。黒いスーツを着ないと就活の土俵に上がれないなら、着ておけばいいのではと思います。勝負の本質ではないですから」

落ちた理由を教えてほしい

 アンナさん 「外国人が面接を受けた場合、人事の方は、何か特別な質問をしますか」

 メーカーAさん 「ウチは優秀な人材を探しているので、国籍は関係ないですよ。ただし入社後は、日本人とまったく同じようにキャリアを歩んでもらうことを確認しています。年功序列や終身雇用の考え方も含めて納得できるかを聞きます」

 エドリスさん 「面接で受かるには、『日本人っぽい外国人』であるほうがいいのでしょうか」

 メーカーAさん 「誰かに迎合することはなく、『ありのまま』でいいです。むしろ外国人留学生の皆さんには、入社後も日本人とは違う価値観を持ち続けてほしいと考えています。当社では国内外で、外国人の採用に力を入れてきました。驚いたのは、彼らが入社後にだんだんと日本人に合わせるようになってくることです。いわゆる日本的な外国人になるのでなく、もともと持ち合わせている価値観を忘れないでほしいです」

 王さん 「面接では自分が落ちた理由が分からないことがあります。なぜフィードバックしてくれないのですか」

外国人の採用を強化したい人事担当者たちは素朴な疑問にも丁寧に答えた(座談会の様子)

 メーカーAさん 「それはですね......国民性によるところが大きいかもしれませんね。あるお店に行って店員の対応が悪かった場合、その場でフィードバックするのでなく、もうその店に行かなくなる。これが日本人の典型でしょう。外資系企業のように『このポジションが空いていて、このレベルの仕事をできますか』という採用なら、不合格の場合、スキルが足りないからと理由を説明できる。ところが、日本の新卒採用は『一緒に働きたいか』を重視する傾向があるので、感覚的で言語化が難しい。まあ、学生からしたら、腑(ふ)に落ちないでしょうね」

 趙さん 「日本の労働人口の減少や、2020年の東京五輪の開催は、外国人にとって就職のチャンスとなるのでしょうか」

 旅行代理店Cさん 「日本が観光立国としてどう伸びていくか、どんなビジネスができるかを考えています。その中で、採用計画は検討中ですが、毎年新卒で外国人を採用していますし、引き続き積極的に行いたいとも思っています」

 メーカーAさん 「日本の働き手は確実に足りなくなるので、外国人の採用は自然に伸びていくのではないでしょうか。当社では、国内営業で成功している外国人がたくさんいます。国内外で活躍のチャンスはますます広がっていくでしょう」

 広告大手Bさん 「今回の座談会で議論になった多様性をどう受け入れていくか。『受け入れる』というと受け身ですが、組織が積極的に多様性を持ってビジネスに転換できるかが問われています。『働き手が少ないので、外国人に入ってもらわなくてはいけない』というネガティブな考え方なら必要ないと思っています」

■探偵団から 日本学生支援機構(JASSO)によると、2016年に日本国内の大学や日本語学校などで学ぶ留学生は約24万人と、5年前の約1.5倍に達した。海外企業が競うように外国人採用を強化している中、新卒一括採用が主流の日本企業は彼らをきちんと取り込めているだろうか。座談会では外国人留学生のホンネの不満が浮き彫りになった。いつまでも過去の採用手法を踏襲していると、世界の潮流に取り残されないだろうか。

(夏目祐介、鈴木洋介、松本千恵、桜井豪)[日経電子版2017年8月17日付]

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