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[ career-働き方 ]

曽和利光の就活相談室出遅れ組も安心を きちんと振り返ろう

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 出遅れ組も安心を きちんと振り返ろう

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。内定率が9割近くに達しているという調査結果が発表されましたが、まだ内定を持っていても就活を続けている人も多くいます。そんな中、面接を受けにきた就活生に企業が聞きたいことは「なぜ、まだ就活を続けているのか」です。どう切り返せばいいのか、相談室に集まってくれた就活生の皆さんと一緒に考えましょう。

今回の参加者
▽川上陽人さん(専修大学商学部4年)
▽高野陽斗さん(青山学院大学国際政治経済学部4年)
※希望する方の氏名は仮名にしています。

理由がないならないでいい

 近年は売り手市場と呼ばれ、企業にとっては「採用難の時代」といわれています。私の感覚では、半分以上の企業が年末まで採用活動をするでしょう。だから、お二人もまだ大丈夫です。安心してください。ただ、面接解禁から2カ月以上たって、就活を終えた人がいるなか、まだ続けるのには何かわけがあるはず――。こう人事が考えるのも、また当然です。

──では、川上さんから聞きましょう。今までどんな就活をしてきましたか。面接のつもりで答えてみてください。

人事は学生の発言に一貫性がないと、納得してくれない(模擬面接の様子)

川上さん 在学中に服飾の専門学校にも通いました。いわゆるダブルスクールです。その後、建設資材を扱う商社の営業のインターンに参加しました。それから営業をメインに面接を受けています。でもアパレルの道に進むか、大学院に進学しようか、迷っています。

──なぜアパレルをやりたいと思ったのですか。

川上さん 高校時代はサッカーに夢中でした。大学に入学した後、のほほんと何もしないで過ごしていたとき、後輩が大学に通いながらファッションブランドを立ち上げたと聞いて刺激を受け、自分もやってみようと思ったのがきっかけです。自分に価値を付けて成長したいと単純に思って。

──「単純」ってそこを説明しないと。もしかして理由を説明しないために「単純」と付け加えたのではないですか。そこを言葉にしなければいけません。

川上さん サッカーの次に全力で取り組むのものが見当たらなかったので、なにか猛烈に挑戦してみたいという気持ちがあって......。

 なるほど。アパレルでなくてはいけない理由を言おうとしているのでしょうが、「全力で取り組めるものを探していたら、たまたまアパレルがあったのでやってみた」といったところでしょうか。アパレルじゃなければダメな理由はないのに、いろいろ言おうとするから「単純に」という言葉になってしまったわけですね。理由にならない理由を話すと、論理的な思考能力やコミュニケーション能力がない、とマイナスの印象にとらえられかねません。

 理由がないなら「ない」でいいのです。それで面接官もすっきりします。サッカーとアパレルがつながらないのは当たり前です。「なんでもいいからやってみたいと思ったとき、たまたまアパレルがあったので」という感じで話せば、面接官も「なるほどね」で終わります。変に自分を良く見せようと思う必要はありません。最初の質問に戻ります。なぜ、いまも就活を続けているのですか。

考えていることは整理してから言おう

川上さん たくさんの企業を厳しい目で見すぎてしまったと思います。青い鳥を探していたというか、企業にはプラスの面もマイナスの面もあるとわかっていますが、マイナス面が見えた段階で選考を辞退してしまったこともありました。

──それはもったいないですね。いったい何を恐れているのですか。

何を言っているかわからなくならないよう、言いたいことを紙に書いて整理しよう

川上さん ブラック職場、特に、残業の多さに敏感になっているのかもしれません。あとは成長できる環境で働きたいと思うし、社風がいい、個性を重視するとか、のんびりと、ライフワークバランスもとれればいいなとか......。

 なるほど。結局、川上さんは成長することを重視しているのか、ライフワークバランスを求めているのか、よくわかりませんね。でも無理はありません。人間に一貫性なんてありませんから。特に、日本人は欧米人に比べてアイデンティティーが薄いといわれています。場所によって自分を変えたりしますよね。柔軟性や協調性があるというのは、本来はプラスに評価されるはずです。

 とはいえ、面接官は矛盾した情報が耳に入ってくると、一貫性がなくて気持ち悪くなる「認知的不協和」の状態に陥ります。関係性がないのは当然なのに、さも関係性があるように装うと矛盾が生じてしまいます。

 どうやって、矛盾を回避すればいいのか。考えていることを全部言わないのが一つの方法です。あったこと、考えたことを全部言ってしまうと、相手はわけがわからなくなってしまいます。取捨選択をすればいいのです。もちろん、嘘はいけませんが、全部言う必要はありません。自分が話した言葉を紙に書いたことはありますか。

川上さん あまりないです。

 ぜひ、書いてみてください。人間は、矛盾したことも考えてしまいます。このままだと面接官は我が社に合っている、合っていないと判断する前に、コミュニケーション能力がないと思ってしまいます。川上さんのように、自分の中で起こる様々なことを素直に受け止めて、悩んでしまう人は、いま非常に多いのです。ある種の典型的なパターンと言えます。頭の中がグチャグチャな状態なので、書き出して整理する作業が必要です。

憧れ系は棚卸しを

──では、高野さんはどうでしょうか。

企業の大半は年末まで採用活動を続ける。あきらめずにがんばろう

高野さん ものづくりというか、動画を作ることが好きなので、大学では部活の新入生歓迎の動画やSNS(交流サイト)に載っているような料理の動画などを作ったことがきっかけで、テレビ業界を中心に面接を受けました。でも全部落ちてしまったので、テレビや広告の制作会社も受けて、なんとかテレビ制作会社1社から内定をもらいました。

──でも、まだ就活を続けていますね。なぜですか。

高野さん 内定をもらった会社は、自分のやりたい番組を作っていないんです。スポーツドキュメンタリーとか、健康など高齢者向けの情報番組とかを作っていますが、僕はお笑いやドラマをやりたいので、その会社は少し違うかなと思っています。もう少し就活を続けるか、就職浪人して来年もう一度テレビ業界を受けるか迷っています。

 はい、ありがとうございました。高野さんの場合、面接官に与える印象が3つあります。1つは「そこまで決まっているなら、それを貫けばいい」ということです。やりたい軸がきちんと定まっているので、ある意味ぶれがなく、一貫性があるといえるでしょう。

 2つ目は「本当にそう思っているのか」です。そんなに一生をかける勢いでやろうとしているなら、裏打ちする何かがあるはずだ、と面接官は思います。それを証明させようと、証拠を求めるのです。高野さんの場合、テレビや動画ということなので、どこまで動画を好きか「本気度」を聞いてくるのです。

 つまり(1)好きになったきっかけ(2)その蘊蓄(うんちく)を語れるかどうか(3)どのくらい動画を作ったか――を問われるでしょう。たとえば(3)で「今まで3本くらい」と答えれば、面接官は「それって好きには入らない」「そんなに好きじゃないのに、うちの会社に入って耐えられるのかな」と思ってしまいます。

 テレビや映画、マンガなど「憧れ系」の仕事は、スポーツと同じように裾野が広く山が高い業界です。ある意味「好きさ度合いの競争」みたいな分野だと思います。改めて自分がどうなのか、どこをアピールできるか、整理してみるといいでしょう。

 もう一つは「こだわりが強すぎないか」ということ。なぜテレビや動画以外にも興味の幅が広げられなかったのか、と問われる可能性があります。

 お二人ともいかがでしたか。とにかく、面接官が納得できる理由がほしいところです。川上さんのように「あまりにも迷いすぎた」、高野さんのように「あまりにもこだわりすぎた」というのでは、マイナス評価になるのも否めません。

 しかし、面接官はその1点だけでジャッジするわけでもありません。自分がやってきた就活をきちんと総括し、振り返ることができて「今までこんな風にしていたけどダメだったからリスタートします」と話した方が、面接官は「この人は、しっかり自分のことをわかっている」と感じて、マイナス要素が減ると思います。

曽和利光(そわ・としみつ)
 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

[日経電子版2017年8月30日付]

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