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車進化の陰で…整備士不足深刻
専門学校、学生集めに知恵

車進化の陰で…整備士不足深刻 専門学校、学生集めに知恵

 自動車の整備士不足が深刻になっている。日本自動車整備振興会連合会によると、整備士の数は2016年に33万4655人と5年で約1万人減少。専門学校の整備学科への志願者数も年間約8000人とこの10年で4割近く減少している。電動化や運転支援など自動車の仕組みも進化しており、優秀な人材の確保は急務だ。専門学校は、販売店やメーカーと連携し学生集めに奔走している。

夏休み返上でEVレース出場の準備を進めるトヨタ東京自動車大学校の学生(東京・八王子)

 夏休みを迎えた静かな校舎内にキーンという甲高い音が響く。トヨタ東京自動車大学校(東京・八王子)のスマートモビリティ科は、9月開催のレース「全日本学生フォーミュラ」の電気自動車(EV)コースに同校として初めて参加する予定。学生が夏休み返上で車両製作に取り組んでいた。松浪良樹校長は「車の保有台数はまだ増え続けるし、先進技術の搭載が始まるにつれ整備士の役割は大きくなる」と指摘する。

 トヨタ自動車系というブランド力をもってしても、同校の受験者数は05年度の1076人から16年度は403人まで減少した。大学進学率の上昇に加えて、若者の「車離れ」が背景にあると松浪校長は分析。「まず知ってもらうこと、車に親しんでもらうことが重要」と話す。地域の販売店と協力して高校生向けの説明会などに取り組み始めたほか、ディーラー店に高校生を招き、整備士の仕事への理解を深めてもらう説明会も開催している。

 今年からは、子どもを招いたミニ四駆レースのイベント、女子卒業生を呼びスイーツを食べながらのキャリア相談会などを催し、情報発信に力を入れる。

 日本自動車大学校(千葉県成田市)が7月23日に開いたオープンキャンパスには、ランボルギーニやポルシェのスポーツカーが並んだ。テストコースでの試乗もあり、高校生が目を輝かせる。

 同校の入学者は約300人と、この10年で年間約100人減少した。国内で有数の専門学校でも、整備士離れとは無関係でいられない。花島哲也広報企画部長は「まず車を好きになってもらう仕掛けが必要」と話す。

 金の卵を大切に育てる仕組みも重要だ。本格的な整備に携わるため必要な2級自動車整備士の資格は、専門学校を卒業するか、3級を取得後3年の実務経験が求められる。この数年、人手不足から販売店が高校を卒業したての人材をリクルートする傾向が増えているが、就職してすぐに本格的な整備に携われるわけではないので、結局は職場に定着しないケースも出ているという。

 日本自動車大学校では整備学校への入学から販売店への就職をスムーズにするために、奨学金を就職先の企業が負担する制度を始める。就職後、返済額を特別手当として企業が負担。最高で280万円まで企業が返済する。自動車整備のロータス(東京・港)を中心に100社が参加する見込みだ

 自動車の保有台数はまだ増えており、販売店からは、アフターサービスを担う整備士が不足しているとの声があがっている。不足数が大きくなれば、次第に車検や修理の時間がかかるようになり、最終的には車のアフターサービス網自体を維持できなくなる危険性もある。

 18年には18歳人口が減少期に入るとされる。人口減と大学進学率の上昇が同時進行する中で、未来のエンジニアをどのように確保し、育成するか。専門学校の努力に加えて、自動車業界全体が知恵を絞る時期にきている。
(江口良輔)[日経電子版2017年8月15日付]

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