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[ career-働き方 ]

ホンネの就活ツッコミ論(28)教育学部の就活
~真面目さと「浮気性」は得か損か

石渡嶺司 authored by 石渡嶺司大学ジャーナリスト
ホンネの就活ツッコミ論(28) 教育学部の就活~真面目さと「浮気性」は得か損か

 今回のテーマは、「教育学部の就活」です。20回目で文学部就活24回で理学部就活25回で工学部就活27回目で社会学部をご紹介しました。今回はこの学部シリーズ5回目ということで教育学部についてです。

 教育学部や教職課程の学生は、採用担当者からすれば学校教員に就職するもの、と見られます。実際、教育学部は8割近くが教員として就職する国立大学もあります。逆に言えば、教員就職が中心の大学・学部でも2割は民間企業に方向転換をします。こうした民間企業志望の教育学部、それから教職課程を履修した学生は就活をどう進めればいいでしょうか。教育学部・教職課程の学生の特徴は、真面目さ、浮気性(との誤解)、学科の説明の3点です。

真面目さが取り柄も本人たちは気づかない

 教育学部や教職課程の学生の気質は真面目です。コツコツした作業などもいとわず、さらに広範な出題範囲を誇る教員採用試験にも対応しようと勉強する姿勢を持っています。このあたり、実は民間企業の採用担当者からの評価は高いものがあります。

 問題はこの真面目さを当の学生が「当たり前」「アピールするほどではない」と思い込んでいる点です。それどころか、教員志望から民間企業志望に切り替えた学生からは、就活前、こうした話が出てきます。

 「教育学部なのに、なんで民間なの、どうせ教員志望でしょって聞かれそうなところが怖い」

 「先輩の学生は、『うち(民間企業)は本命ではないはず。教員採用試験に受かったら内定辞退をするのでは』と圧迫面接で落とされた」

 採用担当者によっては、教育学部・教職課程の学生をネガティブに見ていることは事実です。その逆に、ポジティブに見る採用担当者もいます。採用担当者によっては、教育学部の学生から教員採用試験の合格を理由とする内定辞退を受けた経験がある方もいます。それでも、なお、プラス評価をする採用担当者もいます。

「コツコツ勉強する真面目なタイプが多い」教育学部

 その理由は、真面目さ。「教育学部の学生は、入学時点で教員志望者が多いせいか、真面目。民間企業志望に変わっても、コツコツ勉強する真面目なタイプが多い。地味な仕事でも頑張ってくれそう」。「普通の学生、と主張する教育学部の学生は、よくよく観察してみると、他の文系学部生よりはるかに真面目。新聞を読む率も高いし、教育実習などで社会人と接しているせいか、物おじしないところもいい」。教職課程の学生も評価はやはり高いです。「教職課程だと、通常の勉強に加えてわざわざ教員免許取得のために勉強するわけで、その努力は買える」というわけです。

採用担当者が教育学部嫌いとなるのは「浮気性」

 では、採用担当者が教育学部・教職課程の学生をネガティブにとらえるのはどうしてでしょうか。それは、やはり、教員採用試験との兼ね合いです。浮気性、あるいは、優柔不断さと言ってもいいのですが、当の学生からすれば、民間企業志望か、教員志望か、悩みます。元は教員志望として大学に入学。ところが、学年が進むにつれ教員としての適性があるかどうか、考えてしまいます。

 ここで、早い時期に結論が出れば問題はありません。問題は教育実習・教員採用試験と民間企業就活の両立、受検でいうところの併願をしようとする学生です。企業からすれば、内定を出しても教員採用試験の合格を理由に内定辞退をされれば快くは思うわけがありません。

 それから、意外と見落とされがちですが、優柔不断さもマイナス評価となります。「元は教員志望だった学生が民間企業志望に切り替えるのは相当、勇気がいるでしょう。しかし、決断できないまま、併願というのは感心できません。実際の就活に入り、その後、はかり天秤にかける、というのは信義という点でもどうなんでしょうか?」。「重要な決断をできないまま、ずるずる時間だけすぎる、という学生だと、社会人になってからも、ビジネスのうえで必要な決断ができない、としか思えない」。

 民間企業志望か、教員志望か、併願を否定的に見るのは民間企業の採用担当者だけではありません。教員側も否定的です。まず、教育実習は教員免許取得のために必要です。が、受け入れる教員からすれば、教員になる、という前提での受け入れです。まして、教育実習やその前後は準備やレポート執筆など学生が想像する以上に時間がかかります。そこに無理に民間企業の就活をしようとしても、どこかで破たんします。

 過去にトラブルになった学校によっては、「併願」そのものを断ります。大学も、教育実習については「仮に民間企業志望だったとしても、そのことを絶対に話さないように」と口止めしています。

学生が言う「圧迫面接」は素朴な疑問が元

 逆に言えば、浮気性・優柔不断さがなければ、教育学部の学生は問題ありません。教育学部の学生がよく話す、圧迫面接(「教育学部なのになんで教員志望じゃないの?」など)についてはどうでしょうか。実はこれも問題ありません。採用担当者からすれば単なる素朴な疑問なのですから。

 「だって、教員養成系学部って、ほとんどが教員になるんでしょ? それなのに、うちのような民間企業を受けるなら、そこは素朴な疑問として聞くよ。それが圧迫面接?だったら何を聞け、と?」。「圧迫しているつもりはないんです。なぜ、方向転換をしたのか。教員に向いていないと思った、とか、民間企業を受けたいと思うきっかけがあった、とか、何でもいいのですが...」。

 総合職採用の場合、学部は教育学部だろうが文学部だろうが理工学部だろうが無関係です。企業にとって欲しい人材かどうか、それがすべて。教育学部で最初は教員志望だったとしても、「適性がないと感じたから民間企業志望に切り替えました」などと話せればそれで十分です。

教育実習・教員免許はどうする?

 民間企業志望に気持ちを切り替えたとしても問題になるのは教育実習・教員免許です。学部によっては教員免許の取得が卒業要件となっているところもあります。この場合は、「教員に就職する気はない。ただ、せっかく履修した以上、教員免許は取っておきたい」「卒業要件に教員免許取得が入っている。そのため、教育実習期間の間は就活ができない」などと、民間企業の採用担当者に説明・相談しましょう。

 企業によっては、教育実習の期間中に選考・内定者懇親会などが入っていても採用したいと思える学生であれば考慮します。まして、現在は学生有利の売り手市場。相談する価値はあると言えるでしょう。

ゼロ免課程の学生は学科説明を簡単に

 教育学部には、国立大学によって、教育学部ながら教員免許取得を義務付けない学科があります。これを免許がゼロ、ということでゼロ免課程と呼ばれます。ゼロ免課程は、環境、情報、文化などを冠する学科が多く、はた目には何を専攻する学科なのか、わかりません。それでも、その大学の地元にある企業であれば、学科の特性などを理解しています。

 しかし、地域外、それも、東京や大阪など都市部の企業からすれば、すべての大学・学科を把握しているわけでなく、ここでも素朴な疑問が発生します。「で、この学科は何を勉強するところなの?」。この素朴な疑問に対して、自滅する学生はほぼパターンが決まっています。つまり、大学の広報課職員もかくやの詳細な説明をしてしまいます。聞く側は冗長さにあくびがでてしまい、話が長い、と誤解されてしまいます。当然ながら選考は不通過。

 この点、うまい学生は、説明をざっくりとまとめます。たとえば、北海道教育大学教育学部国際地域学科の場合。「国内、海外の両方を広く学ぶ学科です。私は地域社会におけるコミュニティを研究していました」。国際地域学科の本来の概要と多少、違っても大筋で間違えていなければ問題ありません。そのうえで、学生個人が何を勉強していたか、わかりやすいものを出せば、質問に対する回答としては十分でしょう。素朴な疑問・質問に対しても軽く答える習慣をつけていけば、問題ありません。