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お悩み解決!就活探偵団2018「コスパ」のいいインターンを探せ

authored by 就活探偵団'18
お悩み解決!就活探偵団2018 「コスパ」のいいインターンを探せ

 学生が学業の一環として職業体験をするインターン。人手不足で、優秀な人材に唾をつけておきたい企業が様々なメニューを用意している。入社しないとわからない現場体験や海外での研修を提供する本格派から、メニューは軽くても採用につながる直結型まで様々。目が肥えてきた学生側も、その費用対効果(コストパフォーマンス=コスパ)を重視し、参加するインターンを厳しく選別し始めている。

コンビニオーナーを口説け

 「ローソンのインターンはかなりコスパがいいらしいですよ」。就活探偵団に所属する入社2年目の記者(25)が、学生からこんな情報を仕入れてきた。早速ローソンに特別に許可をもらい、学生たちに交じってワンデーインターン(1日完結のインターン)に参加してみた。

 8月中旬、東京都品川区の貸会議室を訪ねると、50人弱の学生が8人ずつ6つのグループに分かれ、緊張した面持ちで座っていた。グループワークで体験するのは、加盟店へのコンサルティング業務。ミッションは「加盟店のオーナーの心を開いて情報を引き出し、店舗の現状を分析し、戦略を立案すること」だ。学生が「スーパーバイザー」になりきり、加盟店のオーナーに経営の改善提案をする。加盟店のオーナー役は人事担当者が演じる。対話の制限時間は5分。制限時間を過ぎたり、オーナーが心を閉ざしてしまったりしたらミッション失敗だ。

ローソンのインターンには大学3年生を中心に約50人が集まった

 「オーナーの趣味はゴルフだからゴルフの話題を持ちかけよう」。探偵が所属したグループでは、オーナーとの共通点をみつけ会話の糸口にする戦略をねったが、結果ゴルフの話や世間話に時間を割きすぎてしまい、肝心の売り上げ目標を聞けず時間切れになってしまった。オーナー役の人事担当からは「何をしに来たの」と怒られてしまう始末だ。

 2回目の交渉では、先ほどの反省からタイムキーパー役を選び厳密に時間を計った。なんとかオーナーの目標を聞き出し「合格」をもらえた。

 「積極的に話したほうがいい」など人事担当者が学生を1人ずつ呼んでアドバイスする。参加した中央大学商学部3年の女子学生は「後からアドバイスがもらえるインターンは、ワンデーでも中身が濃いと思う」と満足げだった。

 東京家政大学家政学部3年の女子学生は「ゼミやバイトで忙しいので1週間単位のプログラムは参加しづらい。短時間で多くの情報を得られるところがいい」という。会社説明会などの不要なものは削り、学生にニーズのあるプログラムを提供しているところが「コスパがいい」といわれる理由のようだ。

学生がスーパーバイザーにふんし、コミュニケーション力を駆使して加盟店オーナー役(左から3番目)を説得する

 ローソン人事本部の多胡敦史マネジャーは「忙しい学生向けに、1日に全ての要素を詰め込み、興味を持ってもらいたい」と狙いを話す。ナビサイトを通じて「自分の強み・弱み」「参加理由」を書いて応募するが、内容についての選考はなく、空きがあれば誰でも参加できる。夏から冬にかけて「1600人に参加してもらうのが目標」(同社)で、東京、大阪、福岡、札幌、仙台の5カ所で合計30回程度開催する計画だ。インターンの成績優秀者は次のインターンに進むこともできる。

海外渡航費や給与も支給

 海外渡航費と給与がもらえ、食事も付き、さらには英語も身に付く――。「一石二鳥」どころか「一石四鳥」ともいえるのが、オンライン英会話サービス、レアジョブのインターンだ。

 同社はフィリピンの現地人がネットを通じて日本人向けに英会話のレッスンをするサービスを提供する。インターンではフィリピンの現地法人で、フィリピン人の英語講師のマネジメントなどを任される。

 千葉商科大学商経学部4年の今村健太さん(23)は今年3月までのおよそ10カ月間、大学を休学して参加した。語学留学すれば年間数百万円はかかるが、「もらったお給料で生活費も遊ぶお金も賄えた」と笑顔で語る。

レアジョブのインターンに参加した今村さん(左から2番目)は仕事終了後、フィリピンの現地スタッフと食事に行くなどして楽しんだ

 今村さんが金銭的に受けた恩恵の内訳を見てみよう。まず、日本とフィリピンの往復航空運賃(格安航空会社利用)が約10万円分。支払われた給与は月3万~4万円なので10カ月で約40万円ほどになる。これだけではない。現地滞在中は現地正社員と同じ社員寮に無料で入居できるほか、勤務日はオフィスにある食堂で昼食も出してもらえる。

 もちろん得られたのは金銭的なメリットだけではない。今村さんは全員現地人の10人ほどのグループに放り込まれた。当然、講師や同僚は日本語を話せない。英語は思うように通じないし、日本人だという理由で心を開いてもらえず、初めのうちは孤独感にさいなまれたという。

 フィリピンのもう一つの公用語であるタガログ語で話しかけるなどして、少しずつ信頼を獲得していった。「外国人と働くことの大変さとコツを学べました」。TOEICのスコアは帰国後、出国前より200点ほど上がり、900点台になったという。

 同社のインターンも現在募集中だ。同社の採用ウェブサイトで応募受け付け。東京本社で人事担当者と面接するほか、フィリピン現地法人の幹部ともネット上で面接する。2016年3月に募集を始めてから88人が応募。実際に現地に派遣されたのは6人という。

一度に4社の人事と出会える

 畿央大学健康科学部4年の松尾彩花さん(22)は昨年12月、森永製菓や伊藤忠食品、阪急オアシス、寺岡精工(東京・大田)の計4社の人事担当者と一度に会えるインターンに参加した。

 一見、関係のなさそうな4社だが、それぞれメーカーや卸、小売業、そしてレジなど流通システムを手がけるメーカーと、いずれも「食品」を流通させる上で欠かせない企業だ。インターンでは学生が各社の人事担当者にインタビューし、そこで聞き取った内容を大きな模造紙に書き込んでいく。すると食品業界の相関図ができあがり、食品業界全体の理解を深められるというわけだ。

 「食品が消費者に届くまでにたくさんの業種が関わっていることを知った」。松尾さんは食品メーカー志望だったが、卸や小売店の仕事の内容ややりがいなど、生の声を聞くことができたことで、受けるつもりがなかった業種を受けるきっかけになった。主催した就活支援のマキシマイズ(東京・世田谷)の三浦力社長は「学生は業界の知識が不足している。面接で業界を理解していることを伝えられるので、選考に有利になる」と訴える。

 メルセデス・ベンツ日本は、経団連に加盟する企業の中では珍しく、「内定直結型インターン」を実施している。同社に採用されるためにはインターンへの参加が必須ということだ。

 今年は8月21日から、18年4月入社の学生向けに実施した。200人が書類選考にエントリーして、50人が通過。グループディスカッションなどを経て、18人の学生がインターンを受けている。

メルセデス・ベンツ日本の人事部でインターンに参加する男子学生(手前)

 特徴的なのは、面接をしないこと。人事部の島田千恵子氏は「決まり切った質疑応答よりも、職場に入ったときの協調性や各自の考え方、仕事に適した特性などを判断しやすいため」と話す。

 社員や職場の雰囲気をすべて開示し、入社後のミスマッチを防ぐ狙いもある。昨年インターンに参加した学生は「残業が少ないと説明を受けていたが、本当に定時に仕事を終わらせる先輩たちを間近に見られた」と好評だったという。そのかいあってか、「ここ10年は3年離職率が0%」(同社)。

 インターンを経て10人ほどが内定を獲得する見通しだ。

 経団連はこれまでインターンの期間を5日間以上とする日数規定を設けていたが、一転して「ワンデー」を認める方針を示した。これを受け「リクナビ」に登録された19年卒業予定の学生が参加できるインターンの応募可能企業数は6月1日時点で約8400社と昨年の同時期に比べて約1.5倍に達した。

 「取り繕って突破できることもある面接と違い、学生の素の部分が見える」(IT大手)とインターンの利点を語る企業も多い。リクルートキャリア(東京・千代田)がまとめた「就職白書2017」によると、17年卒の自社の内定者の中に自社のインターン参加者が「いた」と回答した企業の割合は72%と2年前に比べて26ポイント上昇した。

 就活においてインターンの重要性は年々増しているが、乱立するインターンから自分に合ったものを選ぶのが難しい時代になったともいえる。そんな中でコスパという指標を基に選別するのは、賢い消費者ならぬ、賢い就活生にとっては当然なのだろう。
(鈴木洋介、千住貞保、桜井豪、夏目祐介)[日経電子版2017年8月24日付]

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