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教科書は街おこし(9)多摩大「SNS論」(上)
~インスタグラムで多摩を世界の中心に

久米信行 authored by 久米信行久米繊維工業会長
教科書は街おこし(9) 多摩大「SNS論」(上)~インスタグラムで多摩を世界の中心に

 東京・多摩地区で一番おいしいパンは? ケーキは? ラーメンは?
多摩地区で一番見て欲しい絶景は? 動物は? 看板は?

 多摩大学の学生が、毎週「多摩のイチ押し」をSNSで探し出してSNSで発信する。受講生みんなが「勝手に観光協会」になって、誰もが多摩に来たくなる「地域の魅力」を集めてネットに蓄積する。

 その成果を、講義ブログやFacebookページに公開するだけでなく、多摩を拠点にする金融機関、多摩信用金庫のセミナー会場や公報誌で発表する。

 そんな日本初の「SNS論」を、9月から多摩大学経営情報学部で始めます。

https://next.tama.ac.jp/up/faces/up/km/Kms00802A.jsp」

 多摩大学では、webサイトを通じて、誰でも講義概要=シラバスを見ることができます。そこに明記した「SNS論」のサブタイトルは「多摩地域の魅力を発信しながら『自分らしさ』を表現するスマホ実践活用術」です。

 この講義に教科書はありません。受講生が、いつも使っているスマホと、写真ベースの簡単SNS「インスタグラム」を活用します。教室では必要最低限のSNSのルールや作法だけは伝えますが、あとは各自が街なかでスマホを活用して発信しながら学びます。

 主役は講師の私ではなく、情報発信に挑戦する多摩大生たちです。毎週、次回の講義までに、学生たちは「イチ押しのスイーツ」といった課題を写真つきの記事にして、各自のインスタグラムで発信します。講義では、お互いのインスタ記事を見比べて、ベストの記事を選ぶことで、仲間の事例からノウハウや表現技法を学んでいくのです。もちろん、私も学生に負けじとインスタグラムで発信、課題にプレイヤーの1人として挑戦いたします。

半年間で「わたしの多摩ベスト10」「多摩大生が創る勝手に観光マップ」が完成

 多摩大「SNS論」は、私が半生をかけて挑戦してきたことの集大成です。この20年間、私はインターネットを企業経営に活かすノウハウの講演で全国行脚をして参りました。訪れる先々で出会った絶景やおいしい食べ物などを、個人的な趣味としてネットで発信を続けていました。すると、いつしか観光におけるネット活用でも知られるようになりました。

 その結果、今では地元墨田区の観光協会理事をはじめとして、全国の観光地域づくりを応援する仕事をしています。もし、多摩大生で観光や地域づくりに関わる仕事を目指している人がいれば、SNS論を通じてスキルを磨き、自分自身をブランディングできるでしょう。きっと希望の就職をして、面白い仕事を勝ち得ることもできるはずです。

 私のささやかな情報発信でも、スマホひとつで地域の効果的なPRができることがわかっています。ましてや、受講生全員で切磋琢磨しながら、地域の魅力を探し出して情報発信を続けたら、どれだけ大きなインパクトがあるか、今から楽しみでなりません。

 半年間のSNS論で、多摩大生たちが取材する毎週のテーマ=課題は、以下の通りです。

・多摩のおいしいパン屋さん
・多摩のおいしいスイーツ屋さん
・多摩のおいしいラーメン屋さん
・多摩のおいしいカレー屋さん
・多摩の面白いor美しい看板
・多摩の面白いor美しい風景
・多摩のおすすめ美術館・博物館
・多摩のおすすめスポット
・多摩動物園のおすすめ動物
・私のこだわりテーマ

私の発信事例

 多摩大生は、それぞれのテーマについて、インターネットで検索したり、観光協会や図書館で資料を集めたりして、自分のイチ押しを探します。実際に街歩きをしながら、現地でとっておきの写真を撮影します。その写真に、観光ポスターのように魅力的なキャッチコピーと宣伝文を考えて、インスタグラムの記事として発信するのです。

 もちろん、お店などで取材する場合は「多摩大学の講義で、私のイチ押しを選ぶのですが、ネットでご紹介してもよろしいですか?」と先方の許可をいただきます。そして、ネット掲載した暁には、お店の方にお礼のメールやメッセージを差し上げます。SNSで取材する時のルールやコミュニケーションスキルも一緒に学ぶのです。

 記事を発信する時には、検索して見つけてもらうように最適なハッシュタグをつける勉強もします。例えば、自分が多摩でいちばん美味しいパン屋さんのメロンパンの記事を書くのであれば「#東京 #多摩 #パン #ベーカリー #メロンパン」とつけるわけです。また、この講義の受講生の発信を見つけやすくするため「#多摩大SNS」とつけてもらいます。

 インスタグラムでは、チェックイン機能を使って、その記事に関連した場所も記事に登録することができます。それにより、魅力的な写真とコピーを見た人は、そのお店や観光スポットに、スマホ片手に簡単にたどりつくことができるわけです。

 この講義を通じて、受講生が半年間、真面目に発信をすれば、年明けには「わたしの多摩ベスト10」が完成します。各自が年賀状やお年賀メールで紹介することもできますし、就活の時に履歴書に添付すれば、ネット活用リテラシーと社会人基礎力をアピールすることもできるでしょう。

 何より私が楽しみにしているのは、毎週の講義で、高い評価を得たベストスポットや記事をもとに、「多摩大生が選ぶ観光ガイドマップ」を創ることです。講義ブログの他に、受講生による「勝手に観光ブログ」も立ち上げようと考えています。

 次回はなぜ、多摩大学で「SNS論」という授業を持つことになったのかをご紹介します。

多摩大学の教育の全体像