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人事部長のひとりごと(20)内定式をどう迎えるか 
決断した自分を信じよう

authored by 日経カレッジカフェ×人事部長
人事部長のひとりごと(20) 内定式をどう迎えるか 決断した自分を信じよう

 こんにちは、高知大学特任教授の中澤二朗です。10月1日は多くの企業で採用内定式が行われます。引き続き就活を続けている人にとっては、それどころではありませんが、内定をもらった人も、それなりにこの日にどうのぞめばいいのか、気になっているように思います。そこで、今回は、長年にわたり企業人事にたずさわってきた経験をふまえ、2つほど、気に留めておいてほしいことを書いてみたいと思います。

 一つは"決断"についてです。

 決断とは、数ある選択肢の中から、何かを「選ぶ」と同時に、他の選択肢を「断ずる」という、二つを同時に行う判断のことです。しかも、それは、「他者との誓い」であると同時に、「自分との誓い」をすることでもあります。

決断した自分を信じよう

 だから、迷います。断じた他の選択肢に未練が残ります。しかし未練が残るから決められなかったというのでは、決断の本来の意味からすると、決断したとはいえません。「後悔することがあるかもしれないけれども、今そう決めた自分を信じてやれるだけやってみよう」という覚悟ができなければ、本来の決断とはほど遠いと言わざるをえません。

 決断しながら容易にそれを変更し、他者との約束をたがえる人は信頼されません。優柔不断のレッテルを貼られて相手にされなくなります。ましてや、それが、就職という、人生の一大事であれば尚更のこと。覚悟のあとのブレは、ゆめゆめ起こさない我慢と努力が必要です。少なくとも数年の間は......。

 もう一つは、内定式が済んだあとの「目的」についてです。

 学校に入ることが目的だった人は、入ってから途方にくれます。それと同じように、内定を取ることが目的だった人は、内定式の後に何を目的にして過ごせばいいのか戸惑います。それは、あたかも、音声案内を終了したカーナビのようです。さて、これから何を目指せばよいのか。そのために何をすればいいのか。カーナビ依存症の人には、そこからきつい日々が始まってしまいます。

「信頼される自分」をつくるには

 では、そうならないためには、どうすればいいか。大人でも、その答えを持ちあわせている人はそういませんが、ここでは2冊ほど、その助けになりそうな本を紹介します。

 1冊は、『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著、岩波文庫)という本です。長年にわたって読みつがれてきた名著です。主人公は中学生のコペル君。おじさんとの対話を通して、世の中の仕組みや、それと自分はどうかかわっていけばいいのかについてのヒントを授けてくれます。

 なお、今年に入って、その漫画版がでました(『漫画 君たちはどう生きるか』羽賀翔一画。マガジンハウス)。なかなかな出来栄えです。こちらから入る手もあるかもしれません。

 もう1冊は、私自身の著書で恐縮ですが、『働く。なぜ?』(講談社現代新書)という本です。仕事とは何か。働くとはどういうことか。なぜ、かくも、私たちは働くことについて思い悩むのか等、皆さんの疑問に応えてくれるヒントがいくつかあるのではないかと思っています。

 人間は、他の動物と何が違うのか。人間は、決断一つで、昨日と今日をまったく違った世界に染め上げることができます。が、他の動物には、それができません。人は、読書を通して、生きるヒントを得ることができます。が、他の動物は、悲しくも、そうした能力を持ちあわせていません。

 内定式を生かすも殺すもあなた次第。未練も後悔ものみこんだ"大いなる決断"を期待しています。その自分との誓いが"ぶれないあなた"、"信頼されるあなた"を作るであろうことを私は信じています。
(「ジローさんの迫熱教室」主宰、高知大学特任教授 中澤二朗)

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