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career-働き方

地方で働く女性の活躍
自治体、大手企業の力を活用
管理職にスキル、交流会で人脈

地方で働く女性の活躍 自治体、大手企業の力を活用 管理職にスキル、交流会で人脈

 地域で働く女性のキャリアアップを支えるため、大手企業と地方自治体が相次ぎ連携している。大企業のノウハウを活用し、ロールモデルが少ない地方で女性が仕事をしやすい環境づくりに一役買っている。

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神戸市と連携 P&G

 「職員の多様性を受け入れ生かすには、無意識の偏見に気をつけること。組織のマネジメントが良くなります」。プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)は本社を置く神戸市と「人材育成事業等の連携に関する協定」を結んだ。講師役の社員の話に市の女性管理職らは耳を傾け、議論を交わす。

 同社は2016年3月に「ダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」を始めた。培ってきた知見を基に「研修プログラム」を開発。全国約200事業者の約1800人に無償提供してきた。「家事や育児と仕事を両立する女性、外国人、高齢者など人材が多様になっても組織として機能させるには、管理職にスキルが不可欠。その技術を身に付ける訓練が必要」という。

各地で異業種交流会を企画 損害保険ジャパン日本興亜

損害保険ジャパン日本興亜が女性社員向けに実施した、異業種交流会を円滑に進めるための研修会(東京都千代田区)

 男性に比べて機会を見付けにくいとの声があがる女性の人脈づくりを、地域でけん引する企業もある。損害保険ジャパン日本興亜は全国の支店などで働く女性社員が中心となり、各地で「異業種交流会」を企画、運営する。10年春に長崎市で初めて開いて以降、25都道府県で開いている。

 7月7日、東京都内のオフィスビルの1室。損保ジャパン日本興亜の各事業拠点から20人の女性社員が集まった。各地で開く異業種交流会で参加者の発言を促し、話を整理するスキルを磨く研修会だ。

 「いかに地域に協力者を得るかが大切。人と人を結びつける面白さを知ると、輪は自然に広がっていきます」。群馬県で異業種ブランチ企業女性ネットワーク「チーム花まゆ」の活動に携わる高崎支社の山出あゆみさん(38)は参加する女性社員に語りかけた。

 チーム花まゆは15年9月に群馬県内に営業拠点を置く清水建設、日本通運、みずほ銀行、みずほ証券、明治安田生命保険などの30~40歳代の女性社員と協力して発足した。12日に前橋市で草津温泉の老舗旅館の若女将を講師に招いて開いた異業種交流会には、約50人が参加した。それまでも群馬県立女子大の学生との交流や群馬県庁の担当者と意見交換に取り組んだ。

 山出さんは勤務地域が限られる職場で働いていても、同じ地元の他社の女性社員との交流機会は意外と少ないという。「県庁や市役所の職員は地元企業の状況は知っていても、全国展開する企業との関係はそれほど深くないのが実情。協力できることはまだまだある」と指摘する。

 損保ジャパン日本興亜の女性社員らが各地で開く異業種交流会の参加者は、どんな目的を持っているのか。岐阜市で異業種交流会に参加した十六銀行の太田早帆子さん(30)は「金融機関、メーカー、役所といった業種の違い、管理職から現場を走り回る人まであらゆる立場で働く女性の考えや悩みを聞けたのは貴重。行内でもコミュニケーションを大切にするよう努めたい」と語る。

自治体と組んで地域おこし ANA総合研究所

 ビジネスとして自治体と組んで女性の活躍を促し、地域おこしに取り組む企業もある。ANAホールディングス傘下のシンクタンク、ANA総合研究所(東京・港)は客室乗務員経験者らが自治体に地域活性化の施策を提供する。24自治体と契約し、12人の女性社員が現地で活動する。

 「男性のスーツのピンホールに真珠のアクセサリーを付けて」。愛媛県宇和島市名産の真珠をビジネスシーンで身に付けようと呼びかける運動「パールビズ」を盛り上げたのは地元女性のまちづくり団体メンバーや市役所職員らだ。従来は男性主導だった地域経済活性化策に、「こんなアクセサリーならマナーを崩さない」「真珠が地元を説明する話題のアイテムになる」と女性のアイデアを実現させるべく、陰から支えたのがANA総合研究所の社員だった。

 大都市に比べて経済規模が小さい地方では、女性が働きやすい職場環境づくりや社会の理解を深める活動を進めようとしても、前例や中心となる人材が限られる。女性の力をもっと引き出すため、女性人材の厚い大手企業の力を活用することで課題解決に役立てる動きは広がりそうだ。

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育成へ慣習打ち破れ ~取材を終えて~

 大都市であろうが地方であろうが、女性が働きやすい環境を整える重要性に変わりはない。人口減少が進む地方でこそ、むしろ切迫した課題ともいえる。ただ地域社会や地元企業が自らその認識を深め、対策を進める動きは、手探りだ。

 例えば官庁や企業で女性活躍を促す取り組みの検討会議などに女性のメンバーがどれくらい入っているだろうか。現場レベルではかなりいたとしても、幹部は男性ばかりというのが実情だ。

 私はつい最近まで地方支局に勤めていた。地方では、共働き世帯の比率は高くても、いざ本格的な女性活躍の人材を育てようとすると土地柄や慣習が壁になる例は目立つ。そうした状況を打ち破るためにも、外部のアイデアを採り入れたり、同じ地域で働く女性同士が連携したりする活動は大切だ。
(田中浩司)[日本経済新聞朝刊2017年7月31日付、日経電子版から転載]

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