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アメリカ南部奮闘記(3)想定外続きのカメルーン研修
中高で学んだ計画力で乗り切る

香山葉子 authored by 香山葉子米ワシントンアンドリー大学
アメリカ南部奮闘記(3) 想定外続きのカメルーン研修中高で学んだ計画力で乗り切る

 こんにちは。私が通うワシントンアンドリー大学の所在地、バージニア州レキシントンではすでに秋の訪れが感じられます。落ち葉の上を歩きながら、「この夏の経験は本当に世界をよりよく知る素晴らしい機会だったなあ」としみじみカメルーンで開発プロジェクトに参加し日々を思い返しております。

 この「カメルーンチャンス」は2017年の2月に訪れました。夏のインターンシップ・プロジェクトで研究の機会を模索していた矢先、知人がフェイスブックで「カメルーンに行きたいひと」を募集していたのがきっかけでした。第2次世界大戦前にフランス支配下にあった国々に今も名残として残っているフランス由来の「フランコフォン文化」に興味を持ち、大学1年生からフランス語を履修しはじめた私にとって、旧フランス領へ渡り、その文化に直接触れることができるこのチャンスは千載一遇の好機でした。小学6年生の頃から持っていた国際協力の道に進むという夢が遂に実現される、ととてもわくわくしました。

カメルーン出身のアミーラ㊥、プロジェクトパートナーのマレン㊨と

キッズキャンプやミニスーパー開設

 ですが、プロジェクトにともに参加するパートナーであるマレンと舞い上がっていた矢先、カメルーンへのチケットが確実なものではないことがわかりました。学校の担当者が、このプロジェクトは綿密な計画と堅実なレジュメを提出した上でのコンペティションであると、提案書提出の締め切り直前に告げたのです。私とマレンは試験直前であるにも関わらず、多くの時間を提案書に割くこととなりました。選考の結果、私たちの提案書が認められたうえ、外部のAndrew Mellon 基金から資金援助をしてもらうことも決まりました。

 カメルーン出身の友人、アミーラの助けもあり、カメルーン・フォンバン市でプロジェクトを実行することになりました。プロジェクトの主な内容は、デザインの工程を体験してもらうエンジニアリングキャンプ(5日間)、キッズキャンプ(4日間)、ミニスーパーの開設(4週間)、そしてカメルーン文化の理解です。ミニスーパーはフォンバン市はずれのマンデッケン村にオープンし、利益は村の子どもたちの教育費へと割り当てる計画でした。

毎日停電、水道は週3回

 海外プロジェクトは「想定外の連続でした。停電は毎日、水は水道から週に平均3回(1回1~5時間ほど持続)流れてくるという、日本やアメリカで暮らし慣れた自分にはとても厳しい環境で4週間過ごしました。3日にいっぺんミネラルウォーターを買いだめすること、水が水道から来たらボトルに入れて溜めておくこと、トイレは1日に3回しか流さないこと、野菜は塩素水で消毒することがいつの間にか私とマレンの「常識」になっていました。また、カメルーンの人々の時間に対する概念が私たちとあまりにも違うため、タスクが終了するのは予定より1週間以上遅れることが普通でした。

カメルーンのプロジェクトは地域住民の協力を得て進めた

 また、私達の到着予定日に合わせて完成するはずだったミニスーパー用の一戸建ての店舗も、泥で作られたレンガが雨季の湿気にやられたせいで、結局、私達が到着したあとも完成できませんでした。現地の業者は予定を変更してセメント製のレンガを使い、1ヶ月遅れで建設をはじめました。問屋との取引交渉も予定より遅れ、フォンバン市での最終滞在日にようやくミニスーパーをオープンさせることができました。予定では1週間ほどお店の営業を手伝ったり、新人研修を行なったりするはずでしたが、あいにくそれは実現されませんでした。しかし私たちは想定しうる問題を網羅したマニュアルを作成し、お店のスタッフと運営陣に渡すことができました。月例報告書をメールで送っていただく約束も取り付けました。

 その後、フォンバン市での4週間近くに渡る自分たちのハードワークを労うため、私たちはクリビという西アフリカで有名なビーチリゾートへ、カメルーン文化を体験する目的で向かいました。そして、クリビではなんと首都ヤウンデでお世話になった日本大使館の役員の方と、同じホテルに泊まっていたため、偶然にも4週間ぶりに再会しました。こうした「想定外」の連続を経験し、私たちの旅は幕を閉じました。

綿密な計画が効果発揮

椅子づくりキャンプの様子

 これらの「想定外」が起こり続ける中、計画の重要性を認識することができました。7月はじめ、椅子づくりのためのキャンプは、私の食あたりのせいで一週間延期となりましたが、デザイン工程のシミュレーションから実際の工作、作品のプレゼンまでは予定した5日間で終えることができました。「これも良い学習経験だった」と、今振り返ってみて、そう思います。「想定外」が多発する場所であるからこそ綿密な計画が役に立ったのだと思います。遅れをとりながらもなんとかキャンプが無事に運んだことをとても幸いなことだと思っています。

 日本での中学・高校時代には試験2週間前に「学習計画表」を書かなければなりませんでした。計画を立てるメリットをこれほど実感したのはカメルーンでの滞在が初めてでした。椅子づくりキャンプも、地元での新規事業立ち上げも、大学の先生たちの助けがあって完成された計画が絶大な効果を発揮したと思います。

地域住民との信頼大切

 最後に、今回の旅で私が最も重要だと思ったのは、「テクノロジーが地域発展の純粋なソリューションでない」ということです。住民たちを取り巻く日常生活の問題は簡単そうにみえて、実は複雑です。例えば、清潔な生活用水の確保のための水道工事は、先進国では当たり前ですが、途上国では資金不足や政治の腐敗のせいで基礎インフラの建設がなかなか思うようにいきません。また、井戸をほっても浄水器を作ってもそれを維持することが難しかったり、それらを運転する人手や管理人がおらず、結局ほったらかしになったりすることが多いのです。そもそも井戸を掘ることができない場所であったり、河川などが近くにあり井戸を掘る必要がない地域だって存在します。清潔な水が売られていても、住民はそのお金を支払えない場合が多く、水の問題は発展途上諸国で依然大きな課題となっています。水問題を解決するためにはまずその地域の現状を理解し、そこにあう処方を打たなければならないのです。私たちが携わったミニスーパーの立ち上げを例に挙げると、キャンプを通して地元の子供、親御さんたちと信頼を築くことで、地元の方々の協力がスムーズに得られたのだと思います。

 私たちは21世紀の幸福な国々に生まれ、物質的豊かさを持て余していたことを痛感したカメルーンでの滞在でした。物質的豊かさだけでなく教育の機会にも恵まれた私たちには、そうでない人々が存在することを少なくとも念頭に置くべきではないのでしょうか。今回の旅は「発展途上国でテクノロジーを通じて価値を創造したい」という私の将来の進路への決心をより一層固めてくれました。

プロジェクトの全貌はブログ(英文)にてご覧いただけます。

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