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トビタった!私たち(1)イタリアでロボット研究(上)
国際学会での受賞がきっかけに

authored by トビタテ!留学JAPAN
トビタった!私たち(1) イタリアでロボット研究(上)国際学会での受賞がきっかけに

 はじめまして。文部科学省が主導する官民協働の海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」3期生として、イタリアに留学した重宗宏毅です。Scuola Superiore Sant'Annaという研究機関において、7カ月間活動を行いました。私が留学を志した経緯と、留学によって感じたことを共有させて頂きたいと思います。この記事を読むことで、少しでも留学・研究に興味を持つ方が増えると幸いです。

研究者を目指すきっかけ

 私が留学をしようと思ったのは、研究者を目指したことがきっかけでした。3年前に国際会議に参加した時の刺激的な体験とその国際会議に参加するための道のりが、研究者の道を志すきっかけとなり、留学へと繋がりました。

留学先の写真です。海洋移動ロボットの研究をしていることもあり、すぐ隣が海でした

 まず、せっかくの機会なので、簡単に私の研究について紹介させて頂きます。私は現在、早稲田大学総合機械工学専攻博士課程に所属しながら、ロボットの研究を行っています。具体的には、印刷法を用いたロボット作製法をテーマとして、この研究をペーパーメカトロニクスと呼んでいます。

 文章を印刷するように、ロボットを印刷するだけで作製できたら、もっと面白い世の中になるんじゃないだろうか、というのが最初の発想でした。学部4年生だった2013年に、当時の担当教員だった橋本周司先生と一緒に考え、研究を始めました。最初は自分で調整したインクを様々なシート状材料の上に筆で塗っては、何か反応が起こらないかを観察するという初歩的な実験を繰り返していました。

 こんな実験で、意味のある研究ができるのか、自分でも不安になる毎日を過ごしていました。数カ月経っても思うような結果は得られず、だんだん自分が卒業できるのかさえも不安になってきました。それでも、橋本先生は私の研究を否定することなく、見守り続けて下さいました。

 私は卒業研究を始めるときに一つ心に決めたことがありました。それは、自分の卒業研究をまとめた論文で、国際会議に参加するということです。研究をするからにはそれくらいインパクトのある研究をしたい、というモチベーションだけは常に忘れず研究と向き合っていました。

卒業研究の1つである、紙の自動立体構造形成の写真です。インクジェットプリンタで印刷した線に沿って紙が自動的に折れ曲がります

 結果的に卒業研究では、インクジェットプリンタによって印刷すると紙が自動的に折れ曲がるために必要な材料と機器を見つけ、さらにそれに電気を流して前進させることに成功しました。この結果を論文にまとめ、国際会議に提出しました。幸運なことに、3カ月後に採択の通知がメールで届いた時の喜びは今でも忘れられません。

 参加した国際学会はまさに異世界でした。そこかしこで飛び交う英語の議論、写真でしか見たことのない有名研究者、スケールの大きなシカゴの街並み、全てが刺激的でした。ありがたいことに、学会が主催する賞のファイナリストにも選んで頂き、授賞式に参加しました。

 学会全体で7つの賞があり、1つの賞に対して3~6人がファイナリストとして選ばれます。この学会では全1616件の投稿があり、ファイナリストに選ばれることは大変名誉なことです。授賞式の場で、そのファイナリストの中から1人が受賞者として選ばれます。私と同じ賞のファイナリストには、尊敬するWood先生(Harvard大学)の研究グループも選ばれていたので、そこが受賞するのだと思っていました。結果的に、winnerとして私達の論文のタイトルが読み上げられ、私達のグループが受賞者として選ばれました。受賞者として選ばれて壇上に上がってからのことは、現実離れしてあまり覚えていません。

受賞時の写真

トビタテに後押しされて

 研究者を目指し始めたことがきっかけとなり、留学についても考えるようになりました。博士課程進学について橋本先生に相談した時に、修士のうちにやったら良い2つのことをアドバイス頂きました。それは「自分の研究の幅を拡げる」ことと、「知らない土地で、そこでしかできないことをやってくる」ことでした。

 研究留学は、これらを同時に達成することのできる手段の1つだと思いました。ただ、留学先との待遇の折衝、滞在先のビザの取得、研究先で新しいことを学ぶリスクなど、挑戦することのデメリットが見え隠れして、初めの一歩が踏み出せませんでした。そこで最後の一押しをしてくれたのが、「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム(以下、トビタテ)」でした。

 1期生として留学した友人から、トビタテに応募する良さを教えてもらいました。充実した留学を達成するために支給される手厚い奨学金はもちろんのこと、理系・文系という分類に関係なく、多様な背景を持つ人達と将来について考えることができると言われました。これは、通らなくても挑戦しないともったいないと思い、留学と共に応募を決意しました。

 留学先は幅広く学べる研究室が良いと思い、基礎から応用、ソフトからハードまでを研究しているScuola Superiore Sant'Annaを選びました。所属する先生が日本を訪問しているときに直接留学したい旨を話し、後日正式に連絡をすることで留学が決定しました。トビタテの選考も、自分のあがり症を乗り切るために入念に準備をし、なんとか通過しました。

プロフィール
重宗宏毅(しげむね・ひろき) 1991年生まれ、私立開成高校卒、2016年早稲田大学・先進理工・応用物理(橋本周司研究室)修了、2016年より早稲田大学・創造理工・総合機械(菅野重樹研究室)に所属。日本学術振興会特別研究員。ペーパーメカトロニクスの研究において、ロボット分野最高峰の国際会議の1つ(IROS)ではダブル受賞、また、経済産業省Innovative Technologies 2015に選出された。