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[ career-働き方 ]

サステナブルな会社選び(7)CSR効果でファン作り
リコージャパン流で社内に浸透

authored by 「オルタナ」編集部
サステナブルな会社選び(7) CSR効果でファン作り リコージャパン流で社内に浸透

 この連載では、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」編集部の記者が企業の規模や知名度を問わず、CSR(企業の社会的責任)で先進的な役割を果たし、社会的課題にも積極的に取り組む企業を紹介しています。企業のCSRやサステナビリティ担当部署で働く若手社会人や社会起業家へインタビューし、「社会的課題を解決する働き方」を様々な角度からお伝えします。

 CSR部員が抱える悩みの一つに「社内浸透」があります。経営陣や社員へCSRに取り組むことの意義が伝わらないと、活動に広がりが生まれません。リコーの国内販売会社、リコージャパンのCSR推進部で働く太田康子さんは全国の支社を渡り歩き、「CSR活動を知り、伝えることがリコーのファン作りにつながる」と伝えています。一方で、企業の女性CSR担当者の集まりである「CSR48」というグループの「総監督」という顔も持ちます。約2万人が働く社内にCSRをどのようにして浸透させているのか、太田さんに話を聞きました。

本業を通じて社会的課題を解決するストーリー

――リコージャパンは環境や生物多様性の保全活動に力を入れてきましたが、社員にはその活動が十分に伝わっていなかったそうですね。社内でCSRを広めていくためにどのようにしていますか。

リコージャパンのCSR推進部で働く太田康子さん

 法令遵守や行動規範を守れているか、社員自身でセルフチェックする取り組みを2003年から続けています。部下がチェックを完了しないと上司もそれを完了できない仕組みにしたことにより、約2万人の社員の9割以上が取り組んでくれています。

 ただ、このセルフチェックだけではCSR活動の詳細な内容やなぜ取り組んでいるかを伝えることができないので、去年の7月からCSR報告書をもとにした勉強会を全国の支社で実施しています。支社は48カ所ありますが、1年間で40以上を訪問し、勉強会への参加者は延べ3000人を超えました。勉強会では取り扱っている製品が解決しようとしている社会的課題についても説明しています。

――勉強会で社員に伝えるために工夫したことはありますか。――

 弊社は全社員の4分の1が営業職で、売上目標の達成に意識が集中している傾向があります。「CSR活動を知ることでどのような結果につながるのか」という質問を現場からはいただいていました。そこで、「CSR活動を理解し、本業を通して社会的課題を解決しているというストーリーをお客様に伝えることで、リコーファンが増える」と説明しています。

 この勉強会を企画したきっかけでもあるのですが、以前、ある食品会社の社員向けセミナーでCSR活動を紹介しました。そこでは、ある学校の食育授業で、教室と遠方のキノコ生産者とをテレビ会議でつないで直接話す体験を子どもたちにしてもらっていることを話しました。

 その食品会社は自分たちらしい社会貢献活動を模索していたため、この事例を高く評価して、テレビ会議システムを活用した食育授業を行いたいと言っていただきました。

 食品会社とは普段の業務ではまったく関わりがなかったのですが、CSRを通して接点ができたことで、「業種が違っても役に立つ」ということが分かりました。社会貢献活動では、リコージャパンとの取引の有無に関わらず、企業と協働することもあり、ほかの部署ではありえない取り組みもできます。営業にとっては、お客様先でCSRを伝えられるようになれば、普段の担当の方だけではなく、経営陣が同席することすらあるといいます。

世界から評価され「存在価値に気付けた」

――CSR活動を伝えたことで、社員にどのような変化がありましたか。

 営業は売上目標の達成に意識が集中してしまい、自分たちの会社が社会でどう役に立って、評価されているのかを立ち止まって考える機会がこれまではなかなかありませんでした。

 自社で使う電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指すイニシアチブ「RE100」に、リコーが日本企業として初めて加盟したり、パリ協定を採択した国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、リコーグループがオフィシャル・パートナーとして指名され、再生複合機やプリンターなどを提供したりしたことは、現場の営業まで伝わってはいませんでした。

 世界からの評価を伝えると、会社に誇りを感じて、「改めて社会のなかでの存在価値に気付けた」という感想をもらっています。仕事と家庭の両立に悩み、会社を辞めようと考えていた社員からは、「この会社に残ろうと思った」といううれしい声をもらいました。

――CSR推進部として、今後の展望をどう考えていますか。

 今は社内に向けてCSR推進部から情報を発信することが多いのですが、今後は社員とのディスカッションを重ねることによって、CSR活動のレベルが上がっていくようにしたいと思っています。

CSRを柔らかく、楽しく伝える「CSR48」の活動

――太田さんは企業の女性CSR担当者の集まりである「CSR48」の総監督でもあります。CSR48とはどのような活動をしているのですか。

2012年に立ち上げた「CSR48」、メンバーは全員、企業のCSR担当者

 CSRというと堅いイメージを抱かれがちなので、その内容を柔らかく、楽しく伝えていくようにしています。現在、参加メンバーは70人ほどで、所属企業の業種も多彩です。

 毎年、チャリティーカレンダーを発行し、2017年版はSDGs(持続可能な開発目標)をコンセプトにして作りました。インプットの場として定期的な勉強会を開き、学んだことを記事にして発信しています。

 正しいことを正しいと発信するだけではなく、「オッ」と思わせるインパクトが大事だと思っているので、まずは興味を持ってもらえるようにビジュアルにもこだわったメンバーの紹介写真をつくっています。

SDGsをテーマに作成した今年のチャリティーカレンダー

――将来、CSR/CSV部署で働きたいと思っている学生へアドバイスをもらえますか。

RICOH THETAで撮影した写真 リンク先では写真を動かすことも https://theta360.com/s/gIniuuRiq8XnceopG282nHwu4

 CSRの関係部署で働きたいと考えている学生は増えていると思いますが、ほかの部署にいてもCSRに関わることはできます。

 世界で起きている様々な課題と自社の事業がどのようにつながっているのか、常に「社会」を意識して働くことが大事です。常にその意識を持ち続ければ、振り返ったときに良かったと思えるときが必ず来ます。
(聞き手は「オルタナS」編集長・池田 真隆)


◆360度カメラでSDGsを啓発
リコージャパンでは360度を撮影できるコンパクトカメラ「RICOH THETA(リコーシータ)」を使って、SDGs(持続可能な開発目標)の啓発を行っています。SDGsは2015年9月に国連が定めた行動計画。貧困や気候変動など2030年までに解決すべきグローバルイシューを17の目標と169のターゲットに区分けしました。
このSDGsのコンセプトは、「誰一人取り残さない」。この言葉通り、リコーシータを使えば輪になって全員を写すことができます。例えばSDGsの目標ごとに作成されたピクトグラムを手にして、円になって集合写真を撮れば、まさに「誰一人撮り残さない」写真ができます。

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