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[ liberal arts-大学生の常識 ]

「手皿」はダメ 
恥をかかない和食のマナー

「手皿」はダメ 恥をかかない和食のマナー

 仕事先や上司・同僚との会食は、円滑な人間関係をつくる上で大きな効果を発揮する。ただ、飲食を伴う場だけに、作法が気になって「苦手」と感じるビジネスパーソンも少なくない。会食の場で、ビジネスチャンスを逃さないためにも、必要な基本マナーを身につけたい。

 「会食は、共に食事をすることで、お互いに心を開いて話すことができる場。作法に過度に気を取られていると、せっかくの場が生かされない」。こう話すのは日本料理店「恵比寿くろいわ」(東京・渋谷)の店主黒岩宏達さんだ。会食の席として利用されることも多いが「会話が成り立たず、苦手意識を持つ人は少なくない」と実感する。

箸の正しい持ち方を身につけることが会席の基本マナー

 会食の中で若い世代を中心にハードルが高いと思われているのが和食だ。同店では客の要望に応えてマナーを学ぶ席を設けることもある。黒岩さんは「互いに相手のことを楽しませようと思いやり、その場を最高の空間にしようとする気持ちが大事」と強調する。そのために最低限必要な知識がマナーという。「マナーは振る舞いとして理にかなっており、意味がある。そこを理解していれば和食がもっと楽しめるようになる」(黒岩さん)という。

 では、和食の基本マナーとはどのようなものか。ビジネスマナー講座を主催するヒロコマナーグループ(東京・港)が8月上旬に都内で開いた会席料理の講座に参加した。

 講座は、座敷に上がるところから始まる。マナー講師の吉村まどかさんが「ふすまは立ったまま開け閉めしないで」と注意を促す。座敷に素足のまま上がるのは禁物。吉村さんは「夏場でサンダル履きなどの場合は、靴下やフットカバーを持参すると良い」とアドバイス。手元のアクセサリーなども控えめにする。器を傷つけないためだ。

 卓に付いたら、卓上には何も置かないのが原則。スマートフォンなど手元に置きたいものは、見えないところに置こう。会食では、会話を楽しむことが目的だからだ。

 食事が始まれば、箸と椀(わん)を同時に持ち上げることは避ける。箸先が相手に向くことを避けるための作法だ。箸置きがない場合は、敷盆のふちにかけるとよい。

 料理は、皿の上で箸を使って一口大にしてから口に運ぶ。食べ物を口に運ぶときに手を添えるしぐさ「手皿」は、一見上品にも見えるがマナー違反。器を持ち上げるか懐紙を使えばよく、そうした作法を怠っていることにつながる。吉村さんは「懐紙は、物を包んだりメモの代わりにもなったりするので、持っていると便利」と薦める。

 食べるペースにも気を配る。箸をつける、椀のふたを取るといったタイミングは主賓に合わせると良い。

 焼き物は左から右へ食べる。焼き魚の場合、肉厚の頭側は左側にあり、食べやすくなる。お造りは、盛りを崩さないように、上から順に食べると、きれいに食べられる。わさびをしょうゆに溶かすのは避けたい。風味を楽しむために添えてあるものだからだ。吉村さんは「マナーには、食材、物を大事にする気持ちがこもっている」と話す。

 講座に参加した30代女性は「会食の場では、自分のマナーを見られていると感じる。会食はビジネスには欠かせないので、学ぶ機会ができて良かった」と満足そうだった。

 主催したヒロコマナーグループ代表の西出ひろ子さんは「食事はコミュニケーションの場。マナーは相手に対する思いやりを形で表すものなので、柔軟に周りに合わせて変化させることも求められる」という。マナー違反と分かっていても、目上の人に振る舞いを合わせなければならない場面もあれば、場の雰囲気によってくだけた対応を求められることもある。ただ、「基本を知らないと臨機応変に対応することもできない」だけに、基本マナーの重要さを強調する。

 食材に季節を感じ、器の模様ひとつにも、もてなしの心を読み取る和食。マナーを身に付け、楽しむ心を持てば、会食の強い味方になりそうだ。
(ライター 李 香)[日本経済新聞夕刊2017年8月28日付、NIKKEI STYLEから転載]

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