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発信! 理系女子(19)薬学部だけど薬剤師じゃない!?
化学系薬学部生の就活

authored by 東北大学サイエンス・エンジェル
発信! 理系女子(19) 薬学部だけど薬剤師じゃない!? 化学系薬学部生の就活

就活中の息抜き(1)東京の友人と新宿御苑へ(筆者は左)

 こんにちは。東北大学サイエンス・エンジェル(SA)の大澤沙優里です。私は現在修士2年目で、6月に2018年卒の就職活動を終えました。2019年卒の後輩たちからもインターンという単語がちらほら聞こえてきます。今回は、「薬学部? じゃあ薬剤師になるんだね!」という、薬学部生なら誰もが一度は言われたことのある言葉の実際を紹介していきたいと思います。

薬剤師免許を取らない学科も

 まず前提としておきたいのが、そもそも国立薬学部は「薬剤師の養成」を一番の目的としていないということです。東北大学の場合は学部3年の後期に学科選択があり、60人が4年制の創薬科学科、20人が6年制の薬学科へと進学します。薬剤師免許の受験資格が得られるのは薬学科のみです。残りの60人(と薬局や病院への就職を希望しない6年制)は普通の理系学部同様の就職活動に挑むことになります。例年、修士学生の約8~9割が就職活動を行い、残りは博士課程へと進みます。

 さて、3月から本格的に始まった就職活動。職種を選ぶ上で、SAの活動経験が効いていたことは確かでした。院生になるまでは、毎日研究室にこもって実験。たまの社会との関わりは学会ぐらいで、そこでは同じように化学を専攻している人との会話があるのみでした。

研究室のデスク。留学生と過ごした日々ももれなく面接に使われました

 一方SAの活動では、小学生から高校生、時には保護者の方に対して科学を伝えなくてはなりません。その時、一般社会と私達の研究生活に大きな隔たりがあることに気づきました。伝えることの難しさ、そして伝わった時の嬉しさ。企業に行ったとしてもこんな風に、社会と研究をつなぐような仕事ができないだろうかと考えました。

 そして私は、ほとんど研究職にしぼって就職活動をすることにしました。もちろん、研究職でない理系職(生産技術、技術営業、設計・開発etc)はたくさんあります。ですが「研究と社会の中間地点」のような仕事に憧れているからこそ、間に立つためにまずはどちらか一方を知ろうと考え、「企業での研究職」を志しました。

製薬だけではない、薬学部生の進路選択

就活中の息抜き(2)サイエンスバーにて。アルバイトの方も化学系だったので会話が弾みました

 有機化学は、前回も紹介したように、「もっとも身近なサイエンス」とも称されるほど、生活において欠かせない学問です。医薬品や農薬はもちろんのこと、プラスチックやインク、香料、繊維等様々な分野にこの知識が欠かせません。このため、学んだことが生かせる業種は製薬や化学メーカーはもちろん、日用品、化粧品、精密機器や医療機器メーカーまでにもわたりました。

 私自身は薬学部ということもあってか、「生体と関わりのある物質をつくること」にフォーカスしているとなお惹かれました。そこで、医薬品に留まらず、化粧品やメディカル材料を作っているメーカー、ヘルスケア部門に注力している化学メーカーを中心に受けることにしました。薬学部というと製薬メーカーだけかと思われがちですが、「薬の学問」ではなく「生体と化学物質の関わり」ととらえると一気に視野が広がります。

 これから世の中がどう変わっていくのかは誰にも予想ができません。だからこそ、後悔のないよう、また働く上で楽しく努力ができるよう、自分の好きな分野を仕事にしようと私は考えました。最終的には、やりたいことの他にお給料や勤務地、働いている人の雰囲気等々を考慮し、現在の専攻を活かせるような、とあるメーカーに落ち着きました。研究を経て、将来は研究成果を世に出すためのお仕事をできたらいいなと思っています。

女子高生とのトークイベント。学生生活や研究についてのフリートークを行っています

 今回私は、たまたま大学で専攻している学問を(ほぼ)活かせる会社とご縁がありましたが、薬学部の同級生たちは自分の専攻にあまりこだわらずに就職活動をしていました(生物系の研究職は狭き門であることも関係していると思いますが)。専攻の知識がわりとそのまま活きるというのは有機系のメリットかもしれません。「プロ入りしていきなり活躍できる可能性があるのは野球選手と有機化学者だけ」なんて言葉を昔先輩に言われたこともあります。

 専攻を企業で活かせるか否か、理系の方には結構気になるところだと思います。たとえ専攻と関係のない職種であったとしても、大学院で得たものが無駄になるわけではありません。それは知識や技術だけでなく、もっと広い意味での物事の考え方や、最先端の研究に自分の手で触れること、そこで自分の能力ととことん向き合う経験だったのかな、と私は思います。みなさんが自分なりに納得できる職業に出会えることを祈っています。

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