日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

大学1年から選考、入社猶予も
ユニリーバの新卒採用

大学1年から選考、入社猶予もユニリーバの新卒採用

 日用品大手のユニリーバ・ジャパン(東京・目黒)は2017年6月、大学1年から卒業後3年までの人を対象に、通年で採用を始めると発表した。人工知能(AI)を使うオンラインでの面接に加え、2年間の入社猶予や高校生へのインターンシップなど革新的な取り組みが目立つ。その狙いはどこにあるのか。人事総務本部長の島田由香氏に聞いた。

「入社猶予」期間、最長で4年も

 ――新しい採用制度はどんな枠組みですか。

ユニリーバ・ジャパンの島田由香人事総務本部長

 「6月に『UFLP365(ユニリーバ・フューチャー・リーダーズ・プログラム365)』という新しいプロセスを導入しました。選考の対象は大学1年生から4年生と卒業後3年間までの既卒者です。8月に行う1カ月間のインターンシップに参加する人は、その前に面接を受けてもらいますが、そうでない人はいつでも応募でき、選考にも進めます」

 「今回のプログラムでは、入社を決めるまでに最長で4年間の猶予があります。1回目は、最終面接の直前まで通過したときです。その後の2年間、いつ最終面接を受けてもいいことにしました。すぐに受けてもいいし、2年間勉強し直してもいいし、ボランティア活動などをしてもいいということです。2回目の猶予は、最終面接を経て内定してから入社までで、これも2年間です」

 ――なぜ2年間の猶予を考えたのですか。

 「2年間というのは、まとまって何かに取り組むことができる時間でしょう。大切なキャリアを急いで決めてほしくないんです。今のスケジュールだと、大学生が就職活動期のたった数カ月間にいくつものオファーを受け、決めるのに期限を切られ、焦ってしまいます。その結果『来てもらいたい!』と強くアピールした会社に流れている気がします。それも悪くはないんですが、本当はこの機会に自分のキャリア形成とじっくり向き合ってほしいのです。自分と会社の価値観があっているか、入社したらどんな働き方になるのか、自分の仕事は社会にどんな貢献をしているのか......。焦って決めたら、失敗した結婚みたいな状況になりかねない(笑)。今回、一度選考から外れても、1年たったらまた挑戦できる仕組みも導入しました。人は、必ず成長するからです」

 ――実際の選考はどんな流れですか。

 「リクナビやマイナビなどの大手就活ナビサイトは使っていないので、当社の採用サイトに登録するのが最初のステップです。エントリーシートは今年から廃止し、代わりに『ゲーム選考』を始めました。ゲーム選考では12の質問に答えてもらいます。たとえば『3万円持っているとして、相手とどう分けますか』『風船を膨らませるとき、どこまで膨らませますか』といった質問があります」

目黒にあるユニリーバ・ジャパンの本社

 「ここでは、その人の性格や能力の傾向を見ています。風船が割れるまで膨らませる人は、リスクをいとわない人だな、とかね。事前にユニリーバでこれまで活躍した人たちの情報を集めておいて、候補者の結果と照らし合わせ、どんな可能性があるのかを見ます」

 「ゲーム選考を通過したら、『デジタル面接』に進んでもらいます。こちらの質問に対する答えを録画した動画を送ってもらいます。スマートフォン(スマホ)でもパソコンでもできるので、ここまでの選考は、すべてオンラインです。インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも選考に進めます」

動画で面接、「AI判定」も

 ――動画をどのように判断するのですか。

 「世界では、人工知能(AI)の技術を使って、声の様子や態度、言葉のくせなどを分析します。これで入社して活躍できるタイプかどうかなど、様々なデータが分かります。それを参考にしながら、最終的には人事担当者が判断しています。日本では、今年はAIが間に合わなかったので、人事などの担当者が動画を見ました。エントリーシートよりずっと、その人の個性が分かります」

 ――ユニリーバは学生に非常に人気があります。採用数と応募数はどのくらいですか。

 「採用サイトへの登録者は数万人単位ですが、16年にエントリーシートを送ってくれたのは2500人ほどでした。採用数は年によって幅がありますが、多くて20人ですね」

 ――人工知能(AI)を使ったり、大学1年生から内定を出したり、かなり大胆な採用方法です。導入の背景は。

 「UFLPは、16年秋から世界のユニリーバで始めた新卒採用のプロセスです。ただ、『365』は日本だけ付けています。これには二つの意味があります。一つは時期を限らず、365日いつでも採用しているというアピールです。もう一つは、若い世代の人にいつでもキャリア形成や生き方を考えてほしいというメッセージです。就職活動の時期がきたから、急に考えるというのではなくてね。こちらの方が一番に訴えたかったことです」

 「私は08年にユニリーバに入りました。その頃から、ユニリーバの採用は人を採るためだけではなく、うちの会社に触れた学生が、何か気づきを得られる機会にしたいと思っていました。その過程で、互いに『この人と働きたい』という気持ちになればいいなと思います」

中学生にも「一緒に働きたい」と伝えたい

 ――中・高校生向けのプログラムもあって、特に優秀な学生には選考プロセスを一部免除する仕組みをつくったそうですね。

高校生向けに実施したインターンシップの様子(7月21日、ユニリーバ・ジャパン本社)

 「14年に『ユニリーバ・フューチャー・リーダーズ・スクール』というプログラムを始めました。高校生向けの一日インターンシップと、『リプトンサステナビリティ大使』という世界の食糧問題に関するアクションプランを考えてもらう中高生向けの4カ月のプログラムがあります」

 「ここで出会った優秀な高校生には、採用の選考プロセスを一部、免除する『U-PASS』を出しています。実は去年、中学生に『U-PASS』を出してしまいました。あまりに素晴らしい人だったので、『大学生になったら、ユニリーバも考えてね』って(笑)」

 「このシステムを『囲い込みだ』『大学に入ってすぐ、就活のプレッシャーを与えるのか』という人たちが何割かいて、驚きました。私たちは、よく頑張ったと伝えたいだけなんです。『あなたは素晴らしい。私たちと一緒に働く候補になってほしい』というメッセージは、彼らの宝物になっています。子どもたちの成功体験になるんです。学校や家庭でも『キャリア教育』の機会があると思いますが、企業としてできることもあると思ったんです」
(松本千恵)[NIKKEI STYLE 2017年8月30日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>