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career-働き方

曽和利光の就活相談室就職留年するより、
受かった会社でまず1年を

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 就職留年するより、受かった会社でまず1年を

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。内定を持っているけれど1社に決められない、もしくは内定をまだ一つも取れていないという人が結構います。そういう人は何か一つのことにとらわれすぎていたり、踏み越えられない壁があったりします。相談室に集まってくれた就活生と一緒に解決する方法を考えていきましょう。

前回に引き続いての参加者
▽川上陽人さん(専修大学商学部4年)
▽高野陽斗さん(青山学院大学国際政治経済学部4年)
※希望する方の氏名を仮名にしてあります。

ほかの業種にも目を向けよう

この時期は自分の就活を振り返り分析することが大事だ(模擬面接の様子)

 高野さんはスポーツや高齢者向けの番組を作るテレビ制作会社の内定を取っていますが、制作会社以外は受けていないのですか。

高野さん あまり受けていません。消費者向けウェブサービスを受けていた時期もありました。でも受けるのをやめました。営業をやりたくないので。ウェブサービスの会社の採用は総合職が多いです。テレビ制作会社なら初めから番組企画とかディレクターをやれると思って。

 なるほど。業界の伸びを考えたときウェブサービスのほうがテレビより伸びているし、10~20年の単位でも需要は高まるでしょう。ものづくりでもあり、テレビだってインターネットテレビも始まっていて、テレビとウェブの融合などいろいろあります。ウェブでもテレビ制作に似た仕事ができる会社もあると思いますが、そのものズバリ番組企画をやりたいのですか。

高野さん 自分が考えたものを形にしたいという思いがあって、それがやりやすいのがテレビ番組だと思っています。収益を得るためのビジネスを考えるというより、お笑いなどエンターテインメントのコンテンツそのものを作りたいんです。なので、希望するコンテンツを作れるテレビ制作会社の内定が取れるまで就活を続けるか、就職浪人して来年もう一度チャレンジするか考えています。

 もともとこの業界自体はものすごい人気で、来年も変わらず厳しいと思います。企業側としては、去年受けて落ちた人に対して魅力を感じるかと言ったら、そうではありません。去年受けた人は受けられない、もしくは自動的に落とすくらいの会社もあるので、就職留年はあまりオススメしませんね。

 テレビ制作会社は大々的に新卒募集をしていないところもあります。片っ端から電話をバンバンかけて、面接をやってもらうようお願いしてみてはどうでしょうか。それでもダメだったら、今内定を持っている会社に入ってしまうのも手ですよ。扱う内容が希望通りではないということですが、番組を作るという本質はそんなに変わりませんから、一日でも早くスキルを蓄えて、機が熟したら他の制作会社に転職したり、制作に職種を絞って、エンターテインメント要素のあるコンテンツを手がけるウェブ制作会社にチャレンジしたりすることもできるでしょう。

高野さん 確かにそうですね。考えてみます。

エピソード選択は慎重に

エピソード選びを誤ると面接官にマイナスの印象を与えることがあるので注意しよう

 川上さん、学生時代に最もがんばったことは何ですか。

川上さん アパレルのダブルスクールです。縫うことも型紙を作ることも全くの未経験で始めました。アパレルの歴史やマーケティングの本を読んだり、四六時中、なんでも洋服に生かせないか考えていて、デザイナーに話を聞きにいったり、表参道でアンケートを100人くらいにとって参考にしたりしました。

 かなりがんばったのですね。結局、ご自身のブランドは世に出回ったのでしょうか。

川上さん いえ。デザインの仕事をしている人の話や姿勢を見て、自分はプロとしてたどり着けるのか不安になり、アパレルの道に進むのは諦めました。

 なるほど。そもそも論で言うと、この話を「最もがんばったこと」といえるのでしょうか。採用面接での失敗話で有効なのは「最後まで食らいついたが失敗した」のようなもの。これならがんばったことになりますね。でも川上さんの話はちょっと違う気がします。失敗話というよりは途中でやめちゃった、という話。あんまりいい話ではありません。確かに派手なエピソードなのですが、面接官には「根性のなさ」「習熟しなさ」いった印象を与えてしまいます。他にがんばったことはないですか。

川上さん んー、思いつきません。大学時代にがんばったことや挫折感があるエピソードがないなと感じていたので大学院に進んで、とりあえずなんでもいいから2年間頑張って、就職する前にもっと自分の能力というか、「勉強してきました」とはっきり自信を持って話せるエピソードを作ろうとしています。

 いやいや、話せるエピソードをわざわざ作るために大学院に行く必要はありませんよ。人生楽しめばいいだけであって、そんな動機で大学院に2年費やすのはもったいないです。だったら、社会人として1年でも早く仕事をしたほうが絶対プラスになると思います。面接官は何か大それたことを聞きたいわけではありません。なんでもいいですから、長くやっていることは何かありませんか。

川上さん ピザレストランの厨房でアルバイトを2年間しました。でも、わかりやすい成果はなくて......。

 やってきた行動があれば成果はいりません。そもそもアルバイトで成果なんて出しようがないじゃないですか。2年間しっかりやったこと自体が成果です。企業側からすると「この学生は継続性があるな」という評価になります。バイトではどんな風に働いていたのですか。

川上さん 気をつけているのは自分が後輩という立場において、仕事を頼まれやすいよう先輩との関係性を作っていることです。あとは、作業が滞らないように、常に次のことを予測しながら今の作業をするよう心がけています。

 そういうの、いいですよ。刺さる会社は必ずあります。地道に努力していることをいいと思う会社は多いです。エピソード選択を含めて、じっくり考え直してみてください。

「評価されることへの恐怖」乗り越えろ

年末まで採用活動を続ける企業が大半。臆せずどんどん受けてみよう

 川上さんはあまり積極的に就活をしてないようですね。

川上さん そうですね。80社みましたが、実際に受けたのは7社です。慎重になりすぎたのかもしれません。エントリーシートをうまく書けなかったというのもあります。働きたくないということもあるんですけど。

 高野さんみたいに「僕は絶対にテレビ業界に行くぞ」というような軸がある人はいいのですが、川上さんのようにそれがない人は、とにかくいっぱい受けることで、徐々に軸が出来上がってくるものです。

川上さん 受けることに対する恐怖の感覚がありました。なので、1次面接が通って2次面接の案内をいただいたこともありましたが、不安で仕方なくて選考を辞退したこともあります。

 人に自分が評価されることに対しての恐怖があるのです。きっと落ちたら挫折感もあるだろうし、そこで当落が決められてしまうのが心理的につらいなあと思いまして......。

 だとしたらその壁をいま越えましょう。受けなかったら、受からないし、落ちないけど受からない。何にも起きませんよ。仮に受けて落ちたとしても、人生においてマイナスにはなりません。受ければ受かる可能性が生まれます。軸がないなら、面接官に自分をさらして見てもらえばいい話ですよ。

 多くの会社がまだ採用活動を続けていますから、いくらでも受けられますよ。臆せずどんどん受けましょう。

曽和利光(そわ・としみつ)
 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

[日経電子版2017年9月13日付]

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